ペット共生型障害者グループホームを展開していたアニスピホールディングスは、2025年7月、tocotocoへ社名を変更し、山本裕貴氏が代表に就任した。「トコトコと、一歩ずつ。」を理念に、フランチャイズで質の高い福祉サービスを展開していくことに尽力していく。(雑誌『経済界』2026年5月号より)
山本裕貴 tocotocoのプロフィール
やまもと ひろき
社会課題への回答となるハウジングファースト
山本代表は前職でハウスクリーニングのフランチャイズオーナーから本部の責任者となり、その後、アニスピホールディングスに入社した。娘が障害児であったことが福祉の世界に入るきっかけとなった。
「私はフランチャイズの本部とオーナーのどちらの経験もあり、両者の立場が分かることが強みでした。障害のある子どもを持つ親の立場として、グループホームを増やしたいという切実な思いもありました」と山本代表は語る。
しかし昨年、アニスピホールディングスのトラブルが報道され、藤田英明代表が辞任。当時役員だった山本代表が後任を引き継いだ。ブランドイメージは下がり、マイナスからのスタートとなったが、全国の加盟店を行脚し、自らの思いを説明して歩いたという。
「私が加盟開発の営業で担当していたオーナーさんたちは『山本さんが社長になってくれて安心だ』と言ってくださり、多くの方がそのまま事業を継続してくださいました」
同社が社会課題への取り組みとして進めているのが「ハウジングファースト」だ。現在、日本の障害者人口は約1160万人。親が亡くなった障害者がどう生活していくのかも課題となっている。政府は「入院から地域へ、施設から地域へ」というスローガンのもと、病院のベッド数削減と地域移行を推進しているが、その受け皿となる障害者の住まいは圧倒的に不足している。そのため、まず安定した住まいを確保し、その上で必要な支援を行うという考え方がハウジングファーストの根幹だ。同社は2026年から30年までの5年間で、全国に5千棟、約2万5千人分の住まいを新たに創出することを目指している。
また山本代表は、単に数を増やすだけでなく、徹底した質の向上を追求し、安心感のある暮らし、自立への支援、重度障害・医療的ケアへの対応、QOL(生活の質)の向上、人生の目的や役割の創出、働く意欲の喚起、本人・家族の意思決定の尊重の7つの柱を掲げる。
「ただ預かっているだけという施設も多い中で、私たちは一人一人に合わせたオーダーメイドの支援を提供したいと考えています。前身のペット共生型のグループホームのコンセプトも継続していきます」
法令遵守を超えた第三者評価を導入
同社の強みは、グループホーム(入居)、デイサービス(通所)、就労支援(仕事)、訪問看護(医療連携)のすべてを網羅し、地域でドミナント展開できる点にある。これにより、スタッフ間の連携がスムーズになり、利用者は情報の断絶なく、一貫した手厚いサポートを受けることが可能になる。
さらに利用者選別をしないことも大きな特徴だ。
「重度だから受け入れが難しいと断られるケースでも、tocotocoは受け入れます。それができるのは、施設の質が高いからです」
一方、福祉事業が公費で成り立つ以上、法令遵守は徹底しなければならない。不正が起こらないよう、本部スーパーバイザーによる伴走支援を強化し、全事業所がガイドラインに沿った運営を行える体制も整えている。
さらに、法令遵守を超えたサービス向上のため、「福祉サービス第三者評価」の全加盟店受審という、業界でも稀有な方針を打ち出した。
「外部の専門機関による客観的な点検に取り組むことで、自分たちでは気付かない運営課題を把握できます。なによりも利用者さま、ご家族、そして行政からの信頼を確固たるものにしていかねばなりません」
質と信頼へのこだわりの背景には、自治体による福祉事業への総量規制もある。行政が『この地域は足りている』と判断すると、新規参入ができなくなり、今後、規制する自治体が増えることが予想されている。
「総量規制がかかるまでのスピード勝負であると同時に、規制後も質と信頼で選ばれる事業者になることが重要なのです」
スピード勝負のためには、同社のフランチャイズという形態が有利だ。
「直営だと人的にも資本的にも展開が遅くなります。徹底した研修とサポートがあれば、フランチャイズで高品質な施設をスピーディーに全国展開できます。福祉サービスに地域格差を作らせないためにもフランチャイズである必要があるのです」
ただし、加盟店選定には厳しい基準を設け、メリットもデメリットも正直に伝えている。「本部はどこまでやってくれるの?」といった他力本願なケースでは、出店を断ることもあるという。
今後は障害者福祉を超えて、医療分野への展開も視野に入れていく。人材採用にも力を入れているが、求めるのは「福祉の心」と「経営の目線」のバランスが取れた人材だ。
「昨年の報道後も『それでも理念に共感する』と入社してくれる人がいます。私は毎朝、全フロアを回って社員に声をかけるので『相談しやすい』と言われますが、社長の在り方についてはまだまだ模索中です」
障害があるという理由で選択肢を奪われることのない社会へ。誰もが「ここに居て大丈夫だ」と実感できる居場所がある社会へ。tocotocoは日本の福祉の未来をアップデートし続けていくことが期待されている。
| 資本金 | 1,000万円 |
|---|---|
| 本社 | 東京都千代田区 |
| 従業員数 | 65人 |
| 企業理念 | あなたと、あるくひと。 |
| 事業内容 | 福祉事業運営に伴う事業全般等 https://to-co-to-co.co.jp/ |