電子カルテや医療事務、健診支援などのシステムを手掛けるエム・オー・エム・テクノロジー。その歴史は三菱商事を発祥とし、富士通のパートナー企業として半世紀に及ぶ。近年は精神科病院向け電子カルテのクラウド版を新たにリリース。DXを推進し、逼迫する医療現場を支える。(雑誌『経済界』2026年5月号より)

平山光彦 エム・オー・エム・テクノロジーのプロフィール

平山光彦 エム・オー・エム・テクノロジー
エム・オー・エム・テクノロジー社長 平山光彦
ひらやま みつひこ

電子カルテ、健診システム 精神科には「MOMACE」

エム・オー・エム・テクノロジーの前身は1964年に設立された三菱商事の情報システム子会社・三菱事務機械だ。三菱商事の子会社再編に伴い2001年に分離・独立し、システムベンダーのパートナー企業だった富士通の資本参加を得て現在の形に生まれ変わった。平山光彦社長は三菱事務機械時代から40年以上にわたり医療に携わってきた大ベテランだ。

「三菱と富士通は医療事務システムのパイオニア。九州を皮切りに70年代から当時はまだ珍しかった医療情報システムビジネスに参入し、当社は富士通の製品を多く取り扱ってきました。富士通はとりわけ大学病院において、長年にわたり確かな導入実績を築いています。多くの先生方が大学病院時代に富士通のシステムに慣れ親しんでいるため、地域の医療を担う病院へ赴任された際も、操作に迷うことなくスムーズに診療を開始できるという点で、高い評価と安心感をいただいています」

富士通の「HOPEシリーズ」は50年以上の歴史と実績があるロングセラーの医療情報システム。富士通の製品販売を担うだけでなく、エム・オー・エム・テクノロジーが自社開発した総合健診システムの「IMFINE」はHOPEシリーズと連携を強化しており、電子カルテ画面から健診結果を参照できるようにした。人手不足や経営逼迫で医療現場の崩壊が叫ばれるなか、こうしたシステム連携を通じた医療情報の共有化と効率化は欠かせなくなる。

「医療現場は医師、看護師、理学療法士、検査技師など国家資格の有資格者が揃ったプロ集団です。そうしたスペシャリストが持つそれぞれの患者情報をサマリーするのは大変な作業で、入院中の診断名や治療内容、経過などを簡潔にまとめた退院サマリーなどの作成は今後、AI化が期待されています。電子カルテも個人がスマートフォンから医療情報を共有できるパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)との連携が進んでいます。われわれも医療現場を間接的に支える企業としてシステムを進化させていかなければなりません」

08年には精神科病院向け電子カルテの「MOMACE(モムエース)」をオンプレミス版としてリリース。昨年はクラウド版の「MOMACEクラウド」もラインアップに加えた。精神科特有の煩雑な業務の効率化や院内従事者間の情報共有化によるチーム医療を支援。24時間365日受付可能なサポートセンターを常設しているため、情報担当部門のない病院でも安心して利用できる。一方で精神科病院は電子化が遅れており、電子カルテが未導入な病院も少なくない。その理由は一般病院とは異なる精神科病院ならではの事情がある。

「精神科病院におけるカルテの特徴は文章量の多さです。病気の原因や治療、入院期間は一般病院とは異なります。原因を探るには家族をはじめ、これまでの患者の人生の家庭環境や人間関係を子どもの頃から深くヒアリングすることもあるため、カルテには膨大な情報量を記入しなければなりません。カルテに目を通して経緯を把握するだけでも大変です。こうした作業を少しでも減らすため、精神科病院に特化したMOMACEを開発しました」

クラウド化進む医療情報システム

精神科病院は全国に約1100カ所あるとされ、MOMACEはこれまで30件超に導入。市場が小さいこともあって精神科病院向けの電子カルテを手掛けているベンダーは少なく、その中で富士通のパートナー企業である同社の信頼感は大きい。カルテの電子化とともにクラウド化が急務な理由はコスト削減や効率化だけでなく、セキュリティーの観点からも指摘されている。

「クラウドにすればコスト、保守、安全などの面でメリットを得られることは自明の理です。特にオンプレミス版のままではサイバー攻撃に対しては自前でセキュリティーを確保しなければならず、脆弱性の高さは否めません。クラウドにすれば、二重、三重のセキュリティーで、堅牢性も保証されているので、BCPの観点からも安心して利用できます。HOPEシリーズも近年、クラウド版がリリースされ順次切り替わっています。MOMACEの導入実績はまだ40件にも及びませんが近々100件の導入目標を掲げています」

医療現場と同じく慢性的な人手不足に悩まされているIT業界。平山氏も人材の獲得には力を入れており、通年で10人前後を採用。現在、従業員は約120人を数えるが、将来的には500人規模を目指す。

「DXの進展に伴い新規のご相談も急増しています。高まるニーズに万全の体制でお応えできるよう、リソースの拡充が急務となっています。理想としては年間20人程度の採用を行いたいと考えています。単に技術力があるだけでなく、クリエイターとしてユニークな発想ができる人材を求めています。今後、IT業界の業務の多くはAIがカバーしてくれるようになるかもしれません。そのときに必要なのは常識に捉われない発想です。医療情報システムは極めて公共性が高く、ひとたびシステム障害が起きれば地域の医療に影響を及ぼしかねません。責任は重大ですが、その一方で病院のシステムを支えることで、間接的に日本の医療を支えている実にやりがいのある仕事です。医療従事者の皆さんが喜ぶ声は患者の皆さんが喜ぶ声でもあり、当社の社員は社会貢献の志を持って日々の業務に励んでいます。こうした仕事に興味のある方は当社ホームページをご覧ください」

設立2001年3月
資本金5,000万円
売上高50億円
本社東京都千代田区
従業員数120人
事業内容医療関連情報システム構築
https://www.momt.co.jp/