高収益企業として知られるキーエンスでコンサルティングエンジニアとして活躍、2017年に経営コンサルタント会社を起業した田尻望代表。付加価値経営を武器に〝成果にコミットする〟経営コンサルタント会社として急成長している。(雑誌『経済界』2026年5月号より)

田尻 望 カクシンのプロフィール

田尻 望 カクシン
カクシン代表取締役 田尻 望
たじり のぞむ

価値構築経営の構造をもとにコンサルで躍進

企業経営において多くの社長を悩ませているのは売上増加、経費削減、人材育成だろう。ヒット商品があっても経営環境の変化や顧客ニーズにマッチしなくなれば販売は鈍化し、物価高で経費は増え続け、少子化に伴って必要な人材の採用、育成が難しくなる。自社で経営改革に挑むのがベストだが、過去の成功体験や長年しみついてきた営業手法や慣習にとらわれて解決策を見いだせないことが多い。そのような時には、客観的な視点から評価し問題解決の答えを導いてくれる外部の力を活用することも必要だ。

田尻望社長はキーエンスでコンサルティングエンジニアとして顧客企業の生産性を上げ収益を最大化させる業務システムの構築に携わってきた。その中で高収益企業には社員の思考と行動を導く独特の「儲かる構造」が業務に組み込まれていることを見いだし、その知見やノウハウをもとに価値構築経営の構造をベースとした経営コンサルティング会社のカクシンを2017年に設立。生産性を向上させる付加価値経営を実践することによって、短ければ2カ月で6千万円の利益改善や1年で10億円の売上増を達成するなど数多くの成果を上げてきた。

クライアントの社長に対して田尻社長は、最初に2つのことを伝えている。

「1つは人とは何か、世界とは何か、自分とは何かについて理解し追求し続けること。2つ目はお客さまのビジネスモデルの成功とは何かを追求し続けること。この2つを日頃から実践してほしいとお伝えします。人が何に対して喜んだり、悲しんだりするのか。これを探求し、人つまりはお客さまが本当に求めていることを想像し続けることが重要です。クライアントの顧客がBtoBの会社であれば、その取引先の目的は何か、ビジネスモデルは何かを徹底して考えることが〝付加価値経営〟を実践する第一歩となります」

付加価値経営で取引先から感謝をもらえる好循環を

クライアント先の会社が持っている商品やサービスが「どんな会社のどんな問題を解決して、どのような価値を世の中にもたらそうとしているのか」という会社のビジネスモデルを徹底的に探求していく。

「すると企業の価値を生み出す本質が見えてきます。そのビジネスを成功させたいが達成できてないという問題がある時、それがニーズになります。そこをさらに探求していくと『自分の会社が提供できる価値』が生まれてくるのです」

コンサルティングで重視しているのが付加価値経営だ。

「付加価値が高くなれば利益が増え、従業員の給料も上がる。そして取引先からは〝ありがとう〟と感謝されて働くモチベーションも高まります。この好循環をたくさん作って世界中の人々が〝ありがとう〟をもらいながら楽しく働き生きることができれば最高ですね」

同社の営業研修はeラーニングでありながらプロジェクト型で成果を上げるのが目標。3カ月から半年間の研修後に成果発表を行う。ある大手IT会社ではアポイントの数が大幅に増え、受注までの期間が短縮、単価も驚くほど上がったという。

「営業マンが付加価値を意識するようになって行動が変わりました。お客さまがなぜ自社の製品を買うのか、その構造を理解して動くようになったのです。例えば人が何かを買う場合、信頼できる相手であり、自分が欲しい条件をちゃんと満たすものという状態を作らなきゃいけない。そんな状態とは何か、それから逆算して営業するのが重要なのです」

例えばクライアント先がIT企業で、DXソリューションを中小企業に売りたいと思っている場合、最新IT機器などの単品を提案しても商談は成立しない。

「多くの中小企業はDX投資どころかその前段階で問題が山積みになっているものです。その現状をよく理解、予測して必要な価値提供をします。ここを改善すれば一人当たりの付加価値、生産性が上がってコストがこれだけ下がります、一緒にプランを立ててみませんかと。ここまでちゃんと予測して考えてくれる人はありがたくないですか。この予測というのも構造上できるのです」

将来はAIプラットフォーム×データベース企業へ

創業から9年目を迎え、業績は順調に伸びている。キーエンス出身のコンサルタントということがキャッチコピーになっているが、田尻社長には営業の経験がない。

「あるセミナーで〝キーエンスはなぜ売れ続けるのか〟という話をしたら大変好評だったので20年頃からキーエンス出身と言っています。ただ私の理論はキーエンスのエッセンスや心理学、人間行動学なども融合させた独自の複合理論です」

スタッフは業務委託も含め25人。面白いのはキーエンスの出身者が7人いて、それぞれの旧所属部署が営業、販売促進、商品企画、開発、人事など多岐に渡っていることだ。

「ここでもワンアンドオールが実現しています。平均年齢50歳を超える尊敬する先輩です」

主要顧客は現在、中堅企業が多いが今後、狙うのは大企業だ。「売上高1兆円を超える会社もあり、ほぼ継続して仕事を頂いています。ある大手機械メーカーは営業研修をやった結果、売上、利益に加えて株価も上がったと喜んでくれて他の部門からの研修依頼もありました」

将来の目標は売上高を3年後に100億円にすること。その先にIPOも視野に入れている。

「直近の売上高は10億円もないので今のビジネスを2段階くらいピボット(方向転換)しないといけません。コンサルタント事業を伸ばしながら将来は企業の経営基盤としての『AIプラットフォーム×データベース』の会社に進化させたいと思っています」

設立2017年4月6日
本社(大阪)大阪市北区、(東京)東京都港区
従業員数25人(業務委託含む)
事業内容価値構築経営の構造®をベースとした経営コンサルティング、人財育成の仕組み構築
https://kakushin.biz/