大手ドラッグストアやディスカウントストア向けに、プロモーションやマーケティングを担う化粧品卸として存在感を高める東京エーワン。昨秋は創業の地である埼玉県の武蔵浦和から東京・池袋へ本社を移転。これを機に従業員を4割増やすなど業容拡大に向けてアクセルを踏み込む。(雑誌『経済界』2026年5月号より)

池野賢吾 東京エーワンのプロフィール

池野賢吾 東京エーワン
東京エーワン社長 池野賢吾
いけの けんご

化粧品売り場の総合コンサルタント

池野社長は創業者の父から社長を引き継いだ3代目だ。美容ディーラー向け化粧品卸から始まった同社を小売店向けにも拡大し、創業から40年で大きく成長を遂げた。大手化粧品メーカーが扱う高価格帯化粧品とは一線を画した、ディスカウントストアやドラッグストア向けに販売される中小・新興化粧品メーカーの低価格帯化粧品の市場は右肩上がりで成長を続けている。

「ディスカウントストアの売り場を見れば分かると思いますが、例えば当社近くの池袋駅前にある店舗は1階全部が化粧品売り場です。中国人訪日客の減少による影響もほとんど受けていません。大手家電量販店でも、家電購入時に得たポイントを利用してECサイトで化粧品を購入するケースが多く、取扱量が増えています」

最大の強みは店舗特性に合わせた商品のプロモーションやマーケティングだ。単なる「卸」にとどまらず、店舗特性に合わせた企画や市場調査、価格分析などの営業支援を幅広く手掛けており、「化粧品売り場の総合コンサルタント」の役割を担う。

「化粧品は店舗ごとに商品棚をチューニングしなければ売れません。シニアが多い店舗、若者が多い店舗、インバウンドが多い店舗など、エリアによって属性が異なります。当社の営業は店舗を観察し、従業員からヒアリングを行い、さらに売り上げデータを分析した上で仮説に沿ったマーケティングを展開しています。仮説が正しければ売上高が証明してくれます」

小売店のみならず、メーカーとも緊密に連携。商品の審査・選定だけでなく、企画段階から加わることもあり、大手ディスカウントストアのPB(プライベートブランド)販売にも深く関わる。PBであれば本来、卸は「中抜き」される立場。企画段階から入り込めるのはマーケティング力が高く評価されている証しだ。

「メーカー・卸・小売りが一体となって協業しているPBもあり、パッケージ案から意見を求められます。小売りも当社にマーケティングを任せた方が売れると分かっていますし、在庫を抱えたくない事情もあります。PBと既存商品が競合することもありますが、『本家』の方が信頼とブランドではやはり優位です。食品PBとは違い、化粧品PBは『安ければ売れる』というものではありません」

近年はSNSを介したデジタルマーケティングにも注力。さまざまな手法によって本格販売前のテスト販売で「バズらせた」こともあり、メーカーから新商品のプロモーションを一手に任されることもある。

「中小メーカーは広告費用もかけられません。発売と同時に商品棚に並べてもらえるよう、当社はいろいろな仕掛けをします。仮にテスト販売でランキング1位を取れば、そのシールを商品に貼ったり、ポップを立てたりします。大切なのはあまり大々的に広告しないこと。ネットユーザーは目が肥えているので、人気インフルエンサーに依頼した案件だからといって成功するわけではありません。専門のコンサルタントにもお願いして、『いつ、どのタイミングで、どんな商品が売れるのか』を常に分析しています。反対に当社が審査やテスト販売しても売れない商品もあり、そうしたときは分析データをメーカーにフィードバックします。化粧品はインパクトが重要で、『いかに手に取ってもらえるか』が勝負になります」

池袋駅東口の新オフィス「攻めの経営」に向け準備

昨秋には創業地の武蔵浦和を離れ、池袋に進出。ビルは池袋駅東口から徒歩3分で、オフィスはフリーアドレス制を採用。社員は移転前の50人から今春までに4割増の70人まで増やす計画を立てた。昨年は基幹システムをERPに改めるなど、「攻めの経営」に向けた準備を着実に進めている。

「都内への移転効果か、採用が好調でこの半年間で計画通り20人弱の仲間を新たに迎えることができました。このうち、3人は情報システム担当で既に当社の課題をいろいろ見つけて改善、提案をしてくれています。オフィスはフリーアドレスやミーティングコーナーを充実させ、社内コミュニケーションは確実に向上しています。池袋駅周辺にはドラッグストアやディスカウントストアも多く、大規模店の商品棚を見ることでビジネス感度も高まります」

大手ドラッグストアの統合も追い風で、東京エーワンにとってはビジネス拡大の大きなチャンスになる。家電量販店からの引き合いも増えており、国内の業容拡大とともに、次なる目標は海外展開だという。

「国内大手ディスカウントストアやドラッグストアも海外展開を進めている中、われわれも連携しなければいけません。化粧品は成分などの審査が厳しいので、現在は候補となる商品のエビデンスを整えることに注力しており、候補商品は昨年比で3倍に増やします。いずれはバンコクなどに現地採用の駐在員を置いて、日本のように店舗マーケティングにも取り組みたいですね。輸出だけでなく、日本で人気の韓国化粧品の輸入にも力を入れ、将来はメーカーの輸入代理店を担うことが目標です。70人の従業員で70億円の売上高ですから、『一人1億円』の規模をキープしつつ、事業を丸ごと任せられるような人材の育成を進めます」

今期の売上高は計画の70億円を上回る見通しだ。採用は今後も積極的に続けるという同社は、売上高85億円、100億円規模の成長フェーズを描いている。

設立1986年3月
資本金1,340万円
売上高65億円
本社東京都豊島区
従業員数70人
事業内容化粧品卸
https://www.tokyo-eiwan.co.jp/