(雑誌『経済界』2026年6月号より)

トカマク型

核融合発電の方式の中で、もっとも研究が進んでいるのがトカマク型だ。

 核融合を起こすには燃料となる重水素と三重水素を1億℃以上という超高温の「プラズマ」状態にする必要がある。しかし1億℃の高熱を格納できる容器はこの世に存在しない。そこで考案されたのがトカマク型で、3つの特徴がある。

 まずはドーナツ型の真空容器。それを超電導コイルによって強力な磁場をかけ、プラズマを宙に浮かせた状態で閉じ込める。しかしそれだけではプラズマは外に逃げてしまうため、容器内に電流を流して磁場をねじり、安定性を高める必要がある。

 この方式が考えられたのは1950年代。ソ連(当時)のイーゴリ・タムとアンドレイ・サハロフらによって提唱された。

 その後しばらくはソ連はトカマク型研究の先頭を走り、68年には「T-3」という装置で高温プラズマの閉じ込めに成功する。これ以降、トカマク型は核融合の本命となり、世界各国で研究が進み、80年代から90年代にかけて、各国で大型実験装置の建設が相次いだ。日本でも量子科学技術研究開発機構(QST)がJT-60を建設し、5・2億℃を記録した。さらに今年3月にはJT-60の後継機JT-60SAが本格始動している。

 本特集の中で何度も出てくるITER(国際熱核融合実験炉)もトカマク型だ。これは 日本・EU・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極(34カ国)が協力して、世界最大のトカマクをフランスのサン・ポール・レ・デュランスに建設しようというものだ。しかし参加国が多いこともあって、意思統一に手間取り計画は遅れに遅れている。当初の計画は2020年には稼働を開始する予定が、現時点では36年にまで伸びている。

 ただし、ITERおよび各国のトカマク型の研究実績は着実に積み上がっており、そのデータ量は他方式の追随を許さない。「実用化に一番近いのはトカマク型」と言われるゆえんだ。

 ただし発電所として稼働するまでにはまだまだクリアしなければならない課題がある。

 最大の課題はどうやってプラズマを長時間安定維持するか。発電所として商用化するには、長時間の運転が不可欠だ。しかしこれまでの世界最長記録はまだ20分程度にすぎない。連続時間が短くてもすぐに再稼働できればいいが、その技術もまだ未確立だ。

 もう一つは、これは他の方式でも同じだが、ブランケットの開発だ。ブランケットは真空容器の内側を覆うもので、核融合で生じる中性子のエネルギーを熱として取り出す役割を果たす。その熱から蒸気を生みタービンを回し発電する。高温と中性子を浴び続ける中で、いかに耐久性を持たせるかが課題となっている。

 そして最後は消費電力量が極めて大きいことだ。トカマク型はねじれを生むために容器内に電流を流す必要がある。ここに電力が必要となる。投入エネルギーが大きいため、Q値を上げることが困難だ。

 それでも世界各国で研究が進むのは、それだけ大きな可能性を秘めているということなのだろう。またITERのデータを活用できるのは大きい。核融合の大本命だ。

京都フュージョニアリング
京都フュージョニアリングのトカマク型炉の模型