(雑誌『経済界』2026年6月号より)

ヘリカル型

核融合炉でプラズマを閉じ込める際、ドーナツ型の磁場をつくる。しかし、単純なドーナツ型の磁場では、内側と外側で磁力線の密度に差が出てしまい、プラズマが外側に逃げ出してしまう。いわば陸上トラックの内側と外側で距離の違いが出るように、そのままではバランスが崩れ安定した形でプラズマを閉じ込めることができない。これを防ぐには、磁力線をねじ曲げ、プラズマを内側から外側へ、そして外側から内側へと移動させる必要がある。

 トカマク型の場合は、プラズマに電流を流して磁場をねじる。それに対してヘリカル型は、「ヘリカル(らせん状)」にねじれたコイルを用いて、最初からねじれた磁場を発生させる方式だ。物理的な構造でねじれをつくるため、追加の装置や操作は不要で、理論的には無限に連続運転を続けることができる。前稿のインタビューにもあるように、すでに1時間の連続運転を達成している。

 トカマク型がソ連で生まれたのに対し、ヘリカル型は、1950年代に京都大学で生まれている。京大は70年代に「ヘリオトロン」計画を推進、さらには89年に岐阜県土岐市に核融合科学研究所(NIFS)が設立された。NIFSでは98年に世界最大級のヘリカル装置を稼働させ、ヘリカル型として世界で初めてプラズマ温度1億2千万℃を記録した。ヘリカル型の弱点はトカマク型に比べて温度を上げにくいところにあった。しかし実用化に十分な1億℃以上を達成したことは、技術的には大きな一歩となった。

 その影響もあり、ヘリカル型の研究・開発はドイツやアメリカでも行うようになり、急速に日本を追い上げてきている。日本だけで研究開発を行うより、ライバルがいることが刺激となり、実用化に向けてスピードが上がることは間違いない。

 しかし商用発電を実現するためには、乗り越えなければならない高い壁がある。

 ヘリカルコイルは「ねじれたドーナツ」を包み込むように設置されるため、形状が極めて複雑で、ミリ単位の誤差も許されない巨大な超伝導構造物をつくる必要がある。しかも超電導ケーブルにも柔軟性が求められる。ヘリカルフュージョンの場合はパートナー企業と手を結ぶことでそれらの課題に取り組んできており、まさに日本の底力が問われている。

 2つ目はトカマク型のところでも触れたがブランケットだ。ヘリカル型は構造が複雑なため、このブランケットを隙間なく配置し、メンテナンス性を確保することが工学的に非常に困難だと言われている。ヘリカルフュージョンでは複雑な構造でも密着する液体金属ブランケットの実用化を急いでいる。

 ヘリカル型は、日本が長年磨き上げてきた十八番とも言える技術。実績からいえばトカマク型が先行しているものの、24時間365日の安定稼働が求められる発電所としての適性は、現状ではヘリカル方式がリードしていると言えそうだ。

らせん状にコイルが取り囲むヘリカル型
らせん状にコイルが取り囲むヘリカル型