近年のメディア環境の変化も追い風になり、急成長を遂げるクリエーターズエージェントのフェローズは、子どもミュージカルや学生のための短編映画祭を主催し、未来のスターやクリエーターの発掘、育成に取り組む。それは、エンターテインメント産業および自社の持続的発展に向けたエコシステムとして機能している。聞き手=武井保之 Photo=逢坂 聡(雑誌『経済界』2026年8月号より)

野儀健太郎 フェローズのプロフィール

野儀健太郎・フェローズ
フェローズ社長 野儀健太郎
のぎ・けんたろう 1968年生まれ、東京都出身。明治大学を卒業後、リクルート入社。クリエーティブ系人材会社クリーク・アンド・リバーの創業期を経験後、2003年にフェローズを設立し、クリエーターのマネジメントサービスを手がける。日本全国17の直轄拠点を持ち、シンガポール、ハワイにも開設。海外拠点展開の強化と事業拡大を進める。

出演希望者が増え続ける 子どもミュージカル

── 2023年にスタートしたFELLOWS仲間・子どもミュージカルは、この3月に第4回の東京公演を大盛況のうちに終えました。プロジェクト始動の経緯を教えてください。

野儀 もともとのきっかけは、岡山で開催されていた子どもミュージカルを観に行ったことです。子どもたちがステージでキラキラ輝く姿がとても素敵でした。失われた30年と言われる長い経済低迷期のなか、日本の未来を考えたときに、子どもたちがこうした表現で輝ける場所がたくさんあったほうがいいと直感的に考えました。

 それから準備を進めて、4年前に第1回の東京公演を開催しました。今年は、第4回の東京のほか、沖縄で第2回を8月、熊本で第1回を10月に実施します。さらにその先は、福岡、金沢を検討中です。ゆくゆくはフェローズの全国17拠点での開催を目標に掲げています。

── 本格的なステージセットや衣装など商業公演のようなクオリティのステージで目を輝かせる子どもたちの姿が印象的でした。

野儀 歌やダンス、演技の先生から、衣装や舞台セット、照明などスタッフ全員がプロです。みなさん子どもミュージカルの意義を感じて、熱い思いを持って参加してくれています。表現教育を通して人間的成長を促すことを目的にしていますが、子どもたちを含めて公演に関わる全員が真剣に向き合って、あの熱量とクオリティが生まれているんです。

── クリエーターズエージェントである会社の看板を背負うに相応しい公演です。

野儀 映像や舞台制作のほか、幅広いジャンルのクリエーターのマネジメントをしている会社ですから、やはりクオリティは追求します。照明や音響の設備やマイクの数も一般的な商業公演と変わりません。ただ、追求すればするほど際限なく費用はかかります(笑)。バランスは考慮しなくてはいけませんが、あのステージに子どもたちを立たせることを喜んでくださる方がたくさんいます。回を重ねるごとに応募者数は増えており、第2回以降は定員を大きく超えているため、オーディションをしています。

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本業とのシナジーから マネジメント進出も視野

── 子どもミュージカル出演者から、未来のスターが生まれていきそうです。

野儀 実際にそういう子も出てきています。ほかのミュージカルにも出演したり、本格的に俳優の道を目指して活動を始めた子のほか、将来はミュージカルに関わる仕事に就きたいという子もいました。確実に子どもたちの未来につながっています。

── 本公演は未来の俳優の発掘と育成につながりますが、その先の芸能マネジメントを担う事業への進出はどう考えていますか。

野儀 その議論はあります。出演した子どもたちの保護者からも、その後の継続的な稽古や、その先のマネジメントへの要望が出ており、そこからスターが生まれれば、われわれのクリエーターのマネジメントサービスとのシナジーもあります。これまでに東京と沖縄で計5回の公演を行ってきて、スクールやマネジメント事業の必要性を実感しているところです。

 われわれは、子どもミュージカルに参加した子どもたちにとって安心できる存在であり続けなければならない。彼らが本格的に俳優を目指すときに、大手芸能事務所と連携して育成していくようなことは、近い将来に実現するかもしれません。

── 子どもミュージカルは、社会貢献活動の位置づけでありながら、未来への投資にもなりそうです。

野儀 どちらの要素もあります。ここから利益が出るわけではない。でも、5〜10年後に大きなシナジーが生まれると信じて頑張っています。沖縄は大手の流通グループが応援してくれていますが、全国各地に子どもミュージカルを拡大していく手応えを得ているところです。

── 全国展開はもともとの構想だったのですか。

野儀 イメージは最初からありました。子どもたちにとって、学校以外の居場所があることがとても大事です。子どもミュージカルはそういう場所になる文脈もあります。

 そこで仲間たちと一緒になって、一生懸命同じものを作ることから成長する。その社会的価値を理解してくださる企業は応援してくれる。全国展開の自信は今、確信に変わりつつあります。

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映画祭に小学生部門を新設 応募者の低年齢化が進む

── クリエーター育成では、学生のための短編映画祭(FFF-S:Fellows Film Festival for Students)も開催しています。

野儀 こちらは映像作品の制作機会の提供を目的に、10年ほど前にスタートしました。当初の参加者は大学生や専門学校生が中心だったのですが、回を追うごとに高校生や中学生が増えて低年齢化が進み、昨年から小学生部門を新設しています。過去に特別賞を受賞した小学生が現在は中学生になりましたが、地元の愛知で有名なクリエーターになっていて、いろいろな仕事をしているんです。若い才能に挑戦する機会を与えるのは素晴らしいことだと改めて実感しています。

 短編映画祭は、そこから成長していくクリエーターに、フェローズを早くから知ってもらうことになりますから、本業とのシナジーも高い。こちらも未来のクリエーターを発掘、育成する産業への貢献に加えて、われわれの事業への将来的な投資になっています。

── 昨今の若い世代は、SNSや動画サイトなどへの映像投稿や視聴が日常生活の一部になっていますが、近年のFFF-Sに見られる傾向や特徴はありますか。

野儀 やはり応募者の低年齢化が挙げられます。今は小学生でも学校でタブレット端末を使いますし、動画SNSは身近になっていますから、動画を観る、作る、発信することへの距離感が近くなっています。最近の若い世代は、何かを調べるときに、GoogleではなくYouTubeで検索する人が多い。文字ではなく、動画で観て学ぶ世代なんです。

 一方、FFF-S応募者は、若手映画作家応援プロジェクト・FFF-S BEYOND(最大300万円出資)の企画コンペティションへの参加資格が得られるのですが、これまでに4回実施してきて、応募企画数は増え続けています。映像制作に意欲的な若者はこれからもっともっと増えるのではないでしょうか。

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ハブ的な役割を担う 産業支える人材インフラ

── 子どもミュージカルやFFF-Sは、若い人材を取り込んで育成し、将来的に本業の利益に還元させながら、産業の未来の発展に貢献する機能を持つエコシステムになっています。エンターテインメント産業におけるフェローズの立ち位置はどう考えますか。

野儀 本業のクリエーターのマネジメントサービスでは、20〜70代までのクリエーターが活躍しています。人が最大のリソースになるエンターテインメントおよびクリエーティブ業界で、クリエーターと企業をつなぐ人材インフラとして産業を下支えしている自負があります。

 子どもや学生への投資は、産業の可能性への寄与でもあり、われわれは表には見えない血管になるかもしれません。同時に、クリエーターの流動性を高めるハブ的な役割を担っています。

── この先の新たな事業構想はありますか。

野儀 現在はミュージカルと短編映画で実施していますが、さまざまな映像からウェブ制作、グラフィック、ゲーム、アニメ、立体造形物まで幅広い多様なジャンルにおいて、小学生から応募できるクリエーターコンテストのような仕組みをつくっていきたいと考えています。

 小学生や中学生が、年に1回でも熱中して何かを作って応募する仕組みがあれば、彼らのイマジネーションがより広がるほか、周囲が早くに才能に気づいたりすることもあり、広義のものづくりにつながっていきます。そこから、われわれは未来のクリエーター人材と、広くかつ深く関わっていきます。

── スクールやマネジメントの話もありましたが、事業領域の拡大も考えているのですか。

野儀 今ないものを挙げるとすれば、ミュージカルや映像コンテスト受賞作の発表の場です。それを他に頼らないといけないので、将来的には自社でホールやスクリーンを持ち、文化発信基地にしていくことが構想としてあります。そういうアウトプットまで作れると、思い描く未来の完成形により近くなっていきます。