今年2月のテレビ東京との資本業務提携が注目されたエンタメスタートアップ、Minto。プラットフォームインフラ構築から制作スタジオ機能、コンテンツプロモーションおよび流通、広告戦略までワンストップで手がける独自のポジションを確立し、急成長を遂げている。その成功の裏に迫る。聞き手=武井保之 Photo=逢坂 聡(雑誌『経済界』2026年9月号より)
水野和寛 Mintoのプロフィール
みずの・かづひろ 中央大学法学部卒業。有料会員100万人のデコメサイトや1千万ダウンロード超えのゲームアプリのプロデュース等、寺島情報企画でモバイルコンテンツ事業の立ち上げに従事し、執行役員に就任。2011年にキャラクターIPスタジオのクオンを創業。自社スタンプが世界60億ダウンロード。22年のクオンとwwwaapの経営統合によりMintoの代表取締役に就任する。
エンタメ企業に足りていない ピースを埋めることで伸びる
―― テレビ東京による5億円の出資は、テレビ局の知財ビジネスにおけるMintoの価値が認められた証しになります。創業からの事業展開を教えてください。
水野 キャラクターIPのスタジオだったクオンと、SNS広告や漫画でクリエーターと広告主をマッチングするプロデュースをしていたwwwaapの2社が経営統合して、2022年に設立したコンテンツプロデュースカンパニーがMintoです。それぞれが得意としていたB2BとB2Cの事業を補完しながら事業を拡大しています。
創業からの4年間は、クリエーターだけでなく、アニメ声優や漫画など知的財産を持つ企業や権利者のコンテンツをお預かりする広告事業を柱にして拡大を続けています。加えて、縦型ショートドラマやウェブトゥーンなど新しいメディアを活用して自社IPを生成する、スタジオとしてのコンテンツビジネスが近年は伸びています。そのほか、プラットフォーム開発も手がけており、吉本興業グループのFANY、NTTドコモ・スタジオ&ライブとともにショートドラマアプリ・FANY :Dを開発し、運営しています。昨年は大物タレントさんのオリジナルプラットフォーム開発も手がけましたが、IPホルダーさんと組んだエンタメ領域でのインフラ開発はこの1~2年で特に力を入れています。
エンターテインメント業界において、各企業が広告制作や開発分野で足りていないピースを埋めていくところが伸びており、自社IP開発は昨年から再度投資を増やしているところです。
―― 現在の主力事業はどうなりますか。
水野 大きく分けて、IPを含めた広告事業、スタジオ制作事業、IT開発事業の3分野があり、全体の年間売り上げ20億~30億円のうち、ほぼ3分の1ずつの構成になります。スタートアップとしては、これが主力という1つがあったほうがいいのかもしれませんが(笑)、この組み合わせとバランスがわれわれの特徴であり、それぞれが連携しながらうまく交ざり合っています。
アニメなど日本を代表する IPとの実績が続く背景
―― 東宝からも出資を受けているほか、ポケモンをはじめ大手企業やメジャーIPとの協業実績が多くあります。強力なネットワークを持つスタートアップですね。
水野 もともとスタジオ機能を持つことでオリジナルIPを作りながら、さまざまなクリエーターと仕事をしてきました。コンテンツプロデュースにおいて最も難しいのは、権利者やクリエーターとのネットワークと信頼関係の構築です。その部分で優位性があるかもしれません。われわれも自社IPを持ちますので、IP創出や収益化の難しさは痛いほど分かっています。加えて、ファンに届ける部分のこだわりなどコンテンツへの愛情があります。スタートアップは、時間軸的に結果を早く出すことが求められますが、そこへの独自のスタンスに理解と信頼を得ていることもポイントになると思います。
つまり、スタートアップでありながら、大手企業のコミュニケーションに合わせられるのが特徴です。新しいことに挑戦しながら、大手企業の理論を理解して対応することで、事業を広げています。
―― 厳しい競合に勝ち抜いて、大手から仕事を得ています。最大の強みは何ですか。
水野 他のスタートアップがまだやれていない領域に到達していることがあります。縦型ショートドラマでは、中国での動向をいち早くキャッチアップして提案することで、われわれ発で大手企業を巻き込んでいきました。
また、何かひとつに特化しているのではなく、新しいテクノロジーのアプリやコンテンツのジャンルにおいて、広告、制作、開発をワンストップでトータルに手がけることも組みやすいのではないでしょうか。
―― 海外にも3つの事業所(タイ、ベトナム、中国)を構えて、アジア地域のライセンス事業を手がけています。
水野 もともと自社IPのオリジナルキャラクターの拡大拠点として設けましたが、アニメなど日本IPのライセンス契約から、東南アジア市場を中心にデジタル流通のほか、EC運営やグッズ、ポップアップストア、イベント展開などを仕掛けています。これまでにタイでの『ちびまる子ちゃん』、フランスでの『進撃の巨人』などを手がけました。この分野では、他のスタートアップより進んでいると自負しています。
―― 海外拠点の拡大はどう考えていますか。
水野 われわれのIPは、韓国や台湾、香港など東アジアで人気があり、成長市場としては東南アジアを見ています。すでに進出しているタイ、ベトナムに加えてインドネシアにも興味を持っています。アジア拠点の拡大はすでに視野に入れており、その先にアメリカにも進出したい。タイミングを見ているところです。
テレビ局との業務提携から事業展開を次のステップへ
―― テレビ東京との資本業務提携の経緯を教えてください。
水野 テレビ局などの大きな資本を活用したマスメディア展開は、IP育成や事業拡大において大きな武器になりますが、スタートアップとしてはなかなか難しいと考えていました。そうしたなか、複数のテレビ局や大手エンタメ企業と業務提携についてお話しさせていただいていましたが、1年ほど前にテレビ東京が興味を持って声をかけてくれました。
―― 今回の提携によりMintoはどう変わっていきますか。
水野 テレビ東京はアニメIPをたくさん持っていますから、それらの海外展開を含めてプロデュースしていくことが大きな取り組みのひとつになります。もうひとつは、協業でオリジナルIPを作ったり、既存の自社IPのテレビ露出などのマスメディア展開によって、認知や人気が一気にブーストしていくことが期待されます。IPプロデュースにおいて提携の効果は大きいでしょう。
―― すでに動いている案件はありますか。
水野 進んでいるところでは、テレビ東京の乳幼児向け番組『シナぷしゅ』のキャラクターIPの東南アジア展開があります。まずベトナムで、すでに認知拡大している自社IPの手法を活用しながら、SNSを中心に進めています。ベトナムの子どもたちに刺さるキャラクターになりつつあります。
まだお話しできることが少ないのですが、来年くらいからどんどんプロジェクトが世に出てきます。
―― テレビ東京との提携は、Mintoの次のフェーズへのステップアップのような位置づけになるのでしょうか。
水野 スタートアップとしてさまざまな事業を手がけてきましたが、それはこれからも変わりません。そのなかで、テレビ東京としっかりと組むことには意義があります。従来のメディア展開はSNSが中心でしたが、マスメディアとの組み合わせによってコンテンツの押し出し方が変わります。それにより、われわれの事業全体に相乗効果が生まれるでしょう。まさに次のステップに進むポイントになります。
同時に、テレビ東京と業務提携したこと自体が、クリエーターやコンテンツホルダーからの信用につながっています。テレビ東京とわれわれが組む新事業に参画したいという話もいただいており、副次的な効果が大きいことを感じています。
時代に応じて手を取り合う 経営統合を進めるべき
―― これからのIPビジネスで着目しているポイントを教えてください。
水野 投資ではファンシーキャラクターに寄せています。SNSから生まれるコンテンツやキャラクターには、映像化だけでなく、グッズも含めた幅広い可能性があります。
―― エンターテインメント業界における自社の立ち位置をどう考えますか。
水野 もともとキャラクターIPを作るスタジオ機能と、それを広げる流通機能を両立させる思いが強くあります。そのなかで、デジタル領域の新しい取り組みをどこよりも早く始める。そういったポジションに自ずとなり、これからもそれを続けていきます。
―― 会社の理想の未来像を教えてください。
水野 日常的に使っていただいたり、見ていただいたりして、それが誰かの癒やしになったり、人生の何かのきっかけになったりするような、人々の生活を豊かにするコンテンツを作っていきたい思いがあります。コンテンツとしてはミニマムでいい。それが毎日のパートナーになって、世界中の人々の生活のなかで役に立つ存在になってほしいですね。
―― 水野さんの野望を教えてください。
水野 われわれは2社が統合しましたが、バンダイナムコやスクウェア・エニックスのように、大手企業ももっと統合して、時代に応じて手を取り合いながら新しいカルチャーをつくっていくべきと考えています。
これからもいろいろな会社とパートナーシップを結んだり、吸収したりしながら、事業を拡大していきたいです。