大手ドラッグストアやディスカウントストア向けに、プロモーションやマーケティングを担う化粧品卸として存在感を高める東京エーワン。東京・池袋への本社移転を機に採用活動を本格化させるとともに、新規事業にも力を入れるなど多角化企業への道を歩み出している。(雑誌『経済界』2026年10月号より)
池野賢吾 東京エーワンのプロフィール
いけの けんご
本社移転で従業員1・5倍SE出身の社長が教育研修
「化粧品売り場の総合コンサルタント」として高い評価を得ている東京エーワンの強みは、店舗ごとにおける商品棚のチューニング力だ。若者、インバウンド、女性など客層の属性に合わせた商品を揃えるとともに売り上げデータを分析。仮説に沿ったマーケティングで単なる化粧品卸にとどまらない営業力を発揮し、数百店舗もの実績を支えている。
昨秋は創業地の埼玉県武蔵浦和から東京都豊島区池袋へ本社を移転。新規採用にも力を入れ、社員数は50人から70人超と約1年の間に1・5倍近くに増えた。元システムエンジニア(SE)の池野賢吾社長は移転効果を肌で感じている。
「採用はとても順調で、今まで採れなかった人材を確保できるようになりました。埼玉の頃は志望動機として『会社が通勤圏内だから』といった理由で選ばれていたことが多かったのですが、移転後の応募者はビジネスキャリアも豊富で育てがいがある人材ばかり。人を増やすことで現場に余裕を持たせ、商品基軸からコンサルティングに営業スタイルを改める必要があります。今までは現場が手一杯のため、コンサルティングまで手が回りませんでした。新入社員の営業担当には本格的な小売流通のコンサルティングスキルを身に付けてもらいます。またSEも新たに3人採用できました。これまでシステムに精通した人間は私だけだったので、これからはいろいろなことができるようになります」
基幹システムはERPに移行準備を進めており、年内には本格稼働させる計画だ。データ整理が進んだことで社内の無駄な作業も可視化・効率化されるようになった。
「社内にはアナログベースな作業がまだまだ多くあり、3人のSEがAIを活用するなど効率化に取り組んでいます。ビジネスモデル変革のためには情報システム部門が最適なAIを選び、それをアプリにして社内に普及させなければなりません。対話型AIの次のステージが求められており、AIを活用した営業戦略とともに具体的な方向性をしっかりと設計したロードマップを策定するつもりです」
教育熱心な池野社長は時間をかけて直接研修も行う。新卒の場合は「フレッシャーズキャンプ」と題して月1回の講習を9回開催。キャリア入社には別メニューを用意している。
「AI、システム、財務からマーケティング、コミュニケーション、メンタルトレーニングまで、全部含めて早い段階から私が直接教えています。成長意欲を重視して採用しているので幹部候補の人間は多く、幹部にはさらに外部講師を招いたり合宿を開いたり、社員教育にはかなりの時間と資金を投じています」
採用・教育とともにブランディングも強化。ホームページをリニューアルし、積極的な情報発信に力を注ぐ。さらに多角化戦略を進める上で、既存事業に加えて新規事業を担える人材も確保する考えだ。
「食品関連の新規事業にも着手しており、ECサイトでは冷凍焼きカレーやドーナツ、ピザなどの販売を始めています。業種は問わず、面白そうな事業であればM&Aも視野に入れています。われわれにとって新規事業は『経営者としての経験を積む機会』であり、新規事業を担える人材を育て、経営者目線を育む場所を提供したいと考えています。そのためにはブランディングも強化して、会社の方針や施策をもっと外部に発信していく必要があります」
成長意欲高い人材が急成長売上高100億円を目指す
採用・教育で池野社長を支えるのが管理本部ジェネラルマネージャーの佐藤哲士氏だ。採用拡大と同時に社内意識の変革にも取り組んでいる。
「これまで外部講師による研修は従業員全体に満遍なく行ってきましたが、それでは最大効果は得られないことが分かりました。意識改革はまずトップ層と若手層から着手すると、サンドイッチ効果で中間層にも徐々に浸透していきます」(佐藤氏)
キャリア採用には若手に限らず幅広い人材を求めている。
「キャリア教育にも力を入れているおかげで、『前職と研修制度がまるで違う』と喜ばれています。
40代であっても成長速度は著しく、組織上、新卒だけでポストは埋められないので、キャリア採用者にもどんどん役職に就いてもらいます。昨年5月入社の社員はもうベテランの8割程度の実力を発揮してくれています。当社は成長意欲さえあれば、さまざまなことにチャレンジできるのが魅力の一つです」(同)
現在は「第二創業期」と位置付け、2027年8月期目標の経営計画として「88作戦」を掲げる。KPIは売上高85億円、従業員80人をはじめ、新規事業10事業開始、海外代理店開設など。ハードルは高いが、池野社長は数年後には売上高100億円を見据えている。
「社内の意識改革は数年前から取り組んでおり、本社移転とともに着実に効果が出始めています。アクセルを踏み込む環境は整っているので、新規事業の経営者も育てながら1人1億円超の売上高をさらに伸張させることを目指します」(池野社長)
| 設立 | 1986年3月 |
|---|---|
| 資本金 | 1340万円 |
| 売上高 | 70億円 |
| 本社 | 東京都豊島区 |
| 従業員数 | 70人 |
| 事業内容 | 化粧品卸 https://www.tokyo-eiwan.co.jp/ |