時計の企画・デザイン・製造・販売を手掛けるサン・フレイム。世に出る商品に社名は載らない黒子的存在だ。だからこそ高い品質を証明し続けることで業界随一の信頼を得てきた。メイドインジャパンにこだわるものづくり企業としての理念に迫る。(雑誌『経済界』2026年10月号より)
保野利臣 サン・フレイムのプロフィール
ほの としおみ
ワゴン販売から始まった軌跡黒子だからこそ品質で勝負
「ファッションウォッチ」の草分けとして知られるサン・フレイム。42年前の創業時は喫煙具の仕入れ・販売からスタートした。
「時計を扱うようになったきっかけは、新宿駅地下コンコースに出したワゴン販売です。4千円ほどの時計が飛ぶように売れ、それを見たヨドバシカメラの現会長が当社に声をかけてくれました。そこからアクセサリーショップや生活雑貨店など、時計の専門店に留まらないさまざまな売り場を開拓していきました」と保野社長は語る。
同社が成長する足がかりとなったのは、1991年に立ち上げた自社ブランド「J‒AXIS」だ。幅広いデザインと品揃えの主力ブランドとして、今も毎月のように新作を出し続けている。一方でアパレルブランドなどのOEM製品では、世に出る商品に同社の名前は出ない。それでも「時計を作るならサン・フレイムに」と選ばれてきたのは、黒子として高い品質を証明してきたからだ。
サービスセンターに寄せられた顧客の声に応え「ゆりかごから墓場まで」あらゆる世代の暮らしに寄り添った時計を作り続けてきたのも同社の特長だ。2004年にはウォルト・ディズニー・ジャパンより国内正規ライセンスを取得。以降もポケットモンスターやサンリオキャラクターなど、国民的な人気を誇るキャラクターとのコラボレーションを重ね、品質基準の厳しいライセンス事業でも実力を示している。
メイドインジャパン品質で東京工房が支える一貫体制
20年3月、コロナ禍の入口というタイミングで社長に就任した保野氏。街から人が消え、腕時計という商品の必要性そのものが揺らいだ時期だったが、助成金なども活用して社員を一人も欠かさず乗り越えた。支えとなったのは、15年に設立した東京の下町・元浅草の自社工房だ。
「40年近いアフターサービスで培った『直す技術』があったからこそ、国内での組立生産に踏み出せました。大手メーカーは『作る』から『直す』という流れですが、当社は逆に『直す手』があったから『作る手』が生まれたのです」
11人の熟練した職人が、最高の環境でメイドインジャパン品質の時計を作り出す、そんな工房に魅力を感じる海外ブランドがある。米国の某大手時計メーカーは、インドやタイの工場と比較した上でこの工房を選び、現在組み立て委託の話が進んでいる。
企画・生産から販売・アフターサービスまで手掛ける一貫体制は、中国の組立工場や部品調達の下請け工場にまで及び、品質と生産管理を徹底してコントロールする。40年かけて築いた海外とのパイプと、部品や素材の良し悪しを見抜く確かな目利き。時計の品質、生産管理の品質、素材の品質、そして人としての品質まですべてにこだわり抜いている。インドの大手企業からも、現地で課題だったメッキ劣化を試験で克服して生産管理を任されたという。
現在力を入れているのが、福井県鯖江市の蒔絵師・斎藤亜希氏と協業したシリーズ「蒔華」だ。文字盤に金粉を蒔いて絵を描く蒔絵の技法を用い、一枚一枚人の手が描くため同じものは二つとない。
「自分たちは部品を一から作り出す会社ではありません。だからこそ、日本各地に残る『作る手』とつながることができるのです」
社員の言葉で紡いだ理念 南アジアに新たな拠点も
同社を語る上で欠かせないのが「GOYOTASHI PRIDE~下町から世界中のあなたへ」という企業理念だ。トップダウンではなく、社員が部門を横断してワークショップを重ね、自分たちの言葉で紡ぎ出したものだという。普段顔を合わせない部署同士をあえて混ぜたチーム編成で「見えなかった人材が見えてきた」と保野社長は語る。
技術継承にも力を入れ、針付けのような技能を一人の名人に依存させず「あの人しかできない」を「うちでは誰でもできる」に変えていく。評価制度も刷新中で「適材適所」ではなく「適所を適材で」と属人化をなくし、誰もが挑戦できる組織を目指す。
「時計は10年、20年と付き合う商品だからこそ、短期の成果より長く続くものに価値を感じられる人材を求めています」
これまで中国に依存してきた生産体制も、南アジアでの新拠点設立でリスク分散を図る。
「ただ時計を作って納めるだけの関係ではなく、その先にある課題を一緒になって解決できるパートナーになりたい」
ハンディファンやステンレスボトルの販売といった新たな分野にチャレンジしながら、創業45周年を迎える29年までに高価格帯のフラッグシップモデルの発売を目指すという同社。世界中の中価格帯時計ブランドが苦戦する中、日本のモノづくりへの信頼を追い風に、長年黒子として磨いてきたその実力で世界への飛躍を目指している。
| 設立 | 1984年3月 |
|---|---|
| 資本金 | 1,000万円 |
| 売上高 | 18億1,900万円(2026年1月度) |
| 本社 | 東京都台東区 |
| 従業員数 | 正社員98人(2026年7月現在) |
| 事業内容 | 腕時計の企画・デザイン・製造・販売 https://sunflame.jp/ |