国際情勢が揺れ、デジタル・AI技術が産業構造を塗り替えつつある中、愛知県は経済労働ビジョンを始動した。技術力と人づくりを基盤に、世界から必要とされ続ける地域を目指す大村秀章・愛知県知事に、愛知の強みを次なる成長へつなぐ戦略と未来像を聞いた。(雑誌『経済界』2026年11月号より)

大村秀章 愛知県知事のプロフィール

大村秀章 愛知県知事
愛知県知事 大村秀章

 日本一のものづくり産業の集積地として、日本経済を牽引してきた愛知県。一方、国際経済秩序の不確実性や人口減少、デジタル・AI技術の進展など、産業を取り巻く環境は大きく変化している。県は2025年12月、「あいち経済労働ビジョン2026 −2030」を策定。「イノベーションと多様性を通じた変革の加速」を理念に、「目指すべき姿」の実現に向け、「イノベーションを源泉とした産業競争力の強化」「多様な人材の活躍と地域の産業を支える人材の育成」「地域経済の活力を生み出すグローバル交流の拡大」「あいちの未来を牽引する産業の進化と成長の加速」「中小・小規模企業の稼ぐ力の向上」の5つの政策を力強く進めていく。中東情勢の不安定化を踏まえた中小企業対策として信用保証料の補助や専門家派遣などで支援する。

 「変化に対応する布石を打ち、強靱でしなやかな産業経済をつくる。その基盤は技術力と人づくりです。『この技術や製品がなくなると世界が困る』と言われるものを、愛知から生み出し続けたい」

 中長期的な成長の鍵と見るのが、製造業とフィジカルAIの融合だ。

 「愛知の製造業の集積は世界一と言っていい。製造現場で使えるAIを愛知で開発・実装していきたい」

 その中核が、2024年10月に開業したSTATION Aiだ。スタートアップ約730社、パートナー企業約390社が集まり、資金調達額は1千億円を超える。会員スタートアップの約半数は東京勢だ。

 「愛知の製造業のほか、国内外の企業や大学、研究機関との接点を求める企業が集まり始めています」

 県は8カ国20機関との連携を広げ、海外企業や女性起業家の増加も目指す。豊田市貞宝地区では、人とAIが協働するトヨタ自動車の未来工場計画も進む。技術と頭脳を集める拠点と、AIを使い切る製造現場が同時に動き始めた。

 さらに、IGアリーナ開業やアジア・アジアパラ競技大会を、交流人口や観光、都市ブランドの向上につなげる。大会の県内経済波及効果は約1兆8千億円を見込む。

 「AIがさまざまなコンテンツを生み出す時代だからこそ、リアルな人間が競うスポーツの魅力と価値は高まるのではないでしょうか」

 製造業の厚みを世界との接点に、人、技術、資本、文化が行き交う地へ。愛知は次の成長局面にある。