わずか10年余りで傘下10社、車両約250台、売上約140億円へ。M&Aによって物流と食品の複合企業へと姿を変えた豪美ホールディングス。急成長の裏にある原豪志代表の経営哲学を追う。(雑誌『経済界』2026年11月号より)
原 豪志 豪美ホールディングスのプロフィール
はら・たけし
荷揚げから物流へ領域拡大異業種M&Aで食品分野へ
豪美ホールディングスは、運送、倉庫管理、揚重・荷揚げ、内装工事、水産物の加工・卸売、有機肥料製造などを手掛ける企業グループだ。傘下10社、車両約250台、売上高は約140億円。建設現場の搬入作業から出発し、10年余りで物流と食品を柱とする体制を築いた。
原豪志代表が2013年に設立した㈱豪美の原点は、建築現場での荷揚げと内装工事だった。創業当初から多くの若者が集まったが、力仕事が中心の荷揚げだけでは、社員の10年後、15年後や会社の継続性に限界がある。そう考えた原代表は、16年に運送業へ参入した。
荷揚げを担っていた社員に免許を取得させ、ドライバーへ育成。「5年でトラック100台」という目標を掲げ、1年前倒しの4年で達成した。成長を支えたのは、特定の荷物に絞らず、顧客から頼まれた仕事を積極的に引き受ける姿勢だった。当初は建築資材が中心だった輸送品目も、一般雑貨や食品、航空貨物などへ拡大。現在、建築資材の比率は約2割まで下がっている。
車両100台、社員130~140人規模に達した頃、原代表は次の成長を考え始めていた。会社をさらに大きくするためには、外部から経験豊富な管理人材を招く必要がある。だがそれは、叩き上げの社員の頭上に、外部人材を据えることを意味する。
「会社を縦に大きくするだけでは、今まで頑張ってきた社員にとって夢がありません。横に広げれば、社長や役員という役割をつくりながら、企業としても成長できると考えました」
そこで踏み切ったのがM&Aだ。22年に大阪の物流会社、23年6月には長野・富山を基盤とする物流会社をグループへ迎えた。さらに同年9月、水産加工・卸売・有機肥料製造などを手掛ける大宝食品グループを取得し、未経験の食品分野へ進出した。
原代表は、安定した企業経営には複数の事業の柱が必要だと考えている。そこで、人口が減っても需要そのものがなくなりにくい食品に目を向けた。周囲からの反対もあったが、決断の根拠となったのが「1%改善」だった。
「1%、2%の改善なら可能だと考えました。5億円の会社の1%は500万円ですが、55億円なら5500万円です」
専門知識がなくても、無駄を省き、効率化を図り、取引条件を見直すことで改善できる部分はある。実際に業績は改善し、食品・水産はグループを支える大きな事業へ成長した。26年には熊本のゲイコー水産も傘下に加え、食品分野をさらに拡大している。
一方、関連する事業をすべて自社で抱え込もうとはしない。食品輸送についても、専門性のある会社との連携を選択肢に置く。
「餅は餅屋です。僕らが中途半端に手を出すより、その業界に精通した会社と一緒にやった方がいいと思っています」
未経験の分野にも踏み込む一方、専門性を持つ企業の力を生かす。会社を横へ広げるM&Aは、事業領域を増やすだけでなく、それぞれの会社が培ってきた強みをグループに取り込む手段にもなっている。
各社を横に並べ経営者育成現場を知る人に指揮を託す
会社を横へ広げる一方で、課題になったのが、増えた企業をどう束ねるかだった。そこで原代表は24年、豪美ホールディングスを設立。各事業会社を横並びで置く体制へ改めた。現在は、経理などの管理機能を段階的にホールディングスへ集約しており、共通化するものと各社に任せるものを分けながら、グループ経営の仕組みを整えている最中だ。26年度には、新たに3人の社長が誕生する予定だ。
「今まで一緒に頑張ってきた仲間に、一度は社長をやらせたいんです。そのための整備の一つとして、ホールディングスをつくりました」
登用の対象は、創業会社の社員だけではない。M&Aによって加わった会社で長く現場を支えてきた生え抜き社員にも、経営や事業運営を担う機会を広げようとしている。各社が蓄積してきた人材や専門性を残し、その上に経営機能を加えていく考え方だ。
原代表の役割は、各社の人材が持つ知識を生かし、経営の舵を取ることだ。トラック運転の経験もなく、食品加工の専門知識を持つわけでもないからこそ、買収先では年長の社員や現場の専門家に話を聞くことから始める。
「私の口癖は『教えて』なんです。上から命令したりはしません。一度全部受け止めて、そこから、まず何ができるかを考えます」
今後は、地域の運送会社とのM&Aによる物流網の拡大を視野に入れており、長野では新たな倉庫を建設する。食品・水産では既存各社の基盤を生かしながら事業を広げる。原代表は飲食分野にも関心があり、未経験の事業をゼロから始める場合には、フランチャイズなど、既存のノウハウを利用することも選択肢の一つだ。
会社を増やすこと自体が目的ではない。その数だけ新たな役割をつくり、現場を知る人へ経営を任せる。創業者一人が会社を引っ張る段階から、複数の経営者がそれぞれの事業を率いる企業群へ。社員の成長が企業の成長へとつながる、独自のグループ経営だ。
会社概要
| 設立 | 2024年8月 |
|---|---|
| 資本金 | 1億7,300万円(グループ合計) |
| 売上高 | 約140億円(グループ全体) |
| 本社 | 愛知県春日井市 |
| 従業員数 | 423人(グループ全体) |
| 事業内容 | 運送、倉庫管理、揚重・荷揚げ、内装工事、水産物の加工・卸売、有機肥料製造 https://www.taketomi-hd.com/ |