半導体関連商社として、東京エレクトロンなどとの取引を進めている内外テック。爆発的なAI需要に伴う半導体市場の活性化を好機と捉えて、商社としての営業機能に市場リサーチ機能を加えて体制を強化。さらに生き残りを懸け、ものづくりにも乗り出している。新時代の半導体関連商社へ転換するための戦略とは。Photo=横溝 敦(雑誌『経済界』2026年11月号より)
岩井田克郎 内外テックのプロフィール
いわいだ・かつろう 1958年東京都生まれ。大学卒業後の82年にSMC入社。2012年に内外テックに移籍。主に営業部門を歩み15年に専務取締役、17年から現職。趣味は軽登山とバイクツーリング。
半導体関連商社として営業と製造の2本柱で躍進
―― 半導体関連商社として長年事業を続ける中で、最も大切にしてきたことは何でしょうか。
岩井田 まず一番大きかったのは、半導体関連商社という立場でどう価値を出していくかということをずっと考え続けてきた点です。昔は、今みたいにインターネットが発達しているわけではありませんでしたから、半導体の情報が本当に不足していました。顧客からも「この海外製の部品と同じような国産品はないのか?」とよく問い合わせをいただきました。
だから徹底的に調べ上げて、資料を揃えて「こういうものがありますよ」「国産で同等以上の性能のものはこれです」と紹介することが、まさに半導体関連商社の真骨頂だったんです。実際、主要な顧客の東京エレクトロンからもそういう依頼をたくさんいただきましたし、われわれもそれに応えることで信頼を積み上げてきたわけです。
ところが、ここ10年、20年で状況がガラッと変わりました。ネット社会になって、顧客の方がむしろ情報を持っているケースが多い。中には「もう自分たちで調べて評価まで済ませました」という顧客もいます。そうなると、半導体関連商社の役割は、いやが応でも変化を求められるわけです。
このままでは商社機能だけでは生きていけないと直感しました。商社は情報を集めてつなぐ役割が中心ですが、それだけでは価値を認めてもらえない時代になってきたのです。
そこで、ものづくりをしないとダメだと考えました。商社としての営業力の前に、技術集団にならないと、これからは絶対に生き残れない。そう感じて、メーカーから優秀なエンジニアを招いて、ゼロから技術部門を立ち上げました。最初は本当に大変でした。何もないところから始めましたからね。でも今では23人の技術者がいて、温調機「クールゴン」のような製品も生まれました。まだまだ発展途上ですが、ものづくりの基盤は確実に築かれつつあると感じています。
営業にリサーチ力を加える M&Aありきではない戦略
―― 現在の事業体制は、どのように自社の経験や技術力を反映しているのでしょうか。
岩井田 当社の事業は大きく分けると「販売」と「製造」です。販売は商社機能、製造は受託製造機能ということになります。以前はこの2つが全く連動していなかったんです。販売は販売、製造は製造で、それぞれが一生懸命やっていたんですが、一気通貫の流れがありませんでした。
ものづくりは、本来は1つのサイクルで回るものなんです。営業が市場を見て、技術が試作・開発し、製造が量産し、保守がアフターフォローをする。その循環が会社の成長につながるわけです。でもわれわれはそのサイクルが止まっていたんです。
そこで私は「営業はマーケットリサーチをするべきだ(攻めの営業)」と考えました。ご用聞き営業(守りの営業)ももちろん大事なのですが、それだけでは大きな成長は生まれません。お客さまが何に困っているのかを探り、課題や問題を把握する。それが営業の本質だと思っています。
営業が把握した課題や問題点を技術部門に渡し、試作設計をする。図面を起こし、何度もフィードバックを重ねる。精密加工が必要ならそこにつなぐ。そして受託製造部門が量産する。最後は保守サービス部門がアフターフォローする。このサイクルがぐるぐる回ることで、会社は成長していくと考えています。今はこのサイクルが2〜3回転し始めていて、成果も出てきています。あとはボリュームをどれだけ積み上げられるか。それが今後の成長の鍵だと思っています。
―― サプライチェーンとバリューチェーンの最適化について、どのような判断基準を重視していますか。
岩井田 サプライチェーンは本当に細かいところまで見ないとダメなんです。当社は仕入れ先が1500社ありますから、物流の無駄が出やすい。
例えば、広島の顧客向けの商材が、一度宮城の物流センターに入って、そこから広島に送られる。これはCO2削減が叫ばれる時代にあってはならないことです。だから今はできる限り、直送化を進めています。
バリューチェーンについては、各セクションが本当に利益を生んでいるかを厳密に見ています。人員配置が適正か、製造の工数が適正か、物流の動きが効率的か。これを一つ一つ検証していかないと、利益は積み上がっていきません。
ただ、半導体産業には特有の難しさがあります。それが「コピー・エグザクトリー(変更管理)」です。部品の注意書きのシールも勝手に変えてはならないという厳しいルールです。これは品質維持のためなんですが、変更申請する場合には膨大な工程数がかかります。そこで当社は半導体関連商社でありながら、R&Dセンター、つまりは実験・検証施設を設けて、パーティクル評価などのエビデンスを出せるようにしました。顧客の装置メーカーにエビデンスをきちんと示せば納得していただける。そうすると、より良い商材に切り替えてもらえる可能性が出てくるわけです。
―― 7月の熊本地震の際、迅速に適時開示を行いました。今回の経験であらためて確認したことは。
岩井田 当社はBCP(事業継続計画)に関しては、日本でもトップクラスだと自負しています。2016年の熊本地震の際も、営業所、物流センター、子会社の工場が熊本にあるため、発災後に徹底してケアしました。毎日朝8時半から社内のBCPコアメンバーで情報共有をしましたし、長崎工場から熊本の拠点に水を運ぶなどして支援しました。
コロナの時はもっと大変でした。2年半、毎日情報共有しました。従業員が乗る移動用のバスの吊り革の消毒など本当に細部まで徹底しました。そこまでやらないと、従業員を守れないと強く感じました。
今回の地震でも、発災の10分後に総務部長と連絡を取り、災害対策本部をすぐに立ち上げて翌朝にはBCP体制を整えて、まず顧客に状況を開示しました。情報が不足していると顧客はとにかく心配しますので、こちらから先に情報を出すことが大事だと判断しました。
東京エレクトロン、ソニー、JASMなど、主要な顧客の被害状況も直ちに確認し「われわれに何でも言ってください。すぐ動きます」と伝えました。いざという時に内外テックがいると知ってもらうことが信頼につながると考えて行動しました。
―― OMTの完全子会社化を決断した背景を教えてください。
岩井田 OMTは宮城県に拠点を置き、半導体製造設備の保守・メンテナンスを専門にしている、技術力が非常に高い会社です。ただ、ロームのグループ会社のラピスセミコンダクタの関連会社だったという立場上、商圏が広がりにくいという課題がありました。
一方で、当社のフィールドソリューション(保守サービス部門)は非常に忙しくて、人手が足りない状況でした。そこで、これはお互いが直面する問題を解消できるのではないかと考えたんです。
―― M&A戦略について、どのような考え方を持っていますか。
岩井田 M&Aは手段であって目的ではない。会社の機能を回していく中で、ここが足りないという明確な理由があって初めてM&Aを検討していくものだと考えています。その一点では重要な会社成長の手法だと思っています。
OMTのケースは、まさにそれでした。フィールドソリューションの戦力不足という課題があり、OMTの技術力がそこにピタッとはまりました。
漠然と「M&Aをやろう」では、絶対にうまくいかなかったと思います。
ノーと言わない経営 アナログの価値も大切に
―― 事業を継続して営む上で変えてはならないものとは何でしょうか。
岩井田 当社は東京エレクトロン向けの売り上げが約7割、仕入れ先はSMCが中心で、およそ1500社の取引先があります。これだけ多くの企業と関わる中で、一番大事なのは信頼です。
私は「お客さまにノーと言ってはいけない」と常々言っています。ノーと言えるのは社長だけです。現場は絶対にノーと言ってはいけない。お客さまの満足度を高めることが、経営理念の一丁目一番地です。
商社でありながら、R&D、設計、製造、物流センター、品質保証まで備えている「トータルプランナー企業」として、お客さまの期待に応える。それが当社の使命だと思っています。
―― 半導体技術者の確保に向け、どのような魅力づくりを進めていますか。
岩井田 技術者を確保するには、まず「働きやすい環境」を作らないとダメです。日曜の夕方に「明日会社か……」と思われる会社ではダメだと思います。逆に日曜日夕方に早く会社に行きたいと思ってもらえるようにしないといけません。
前職時代に若手エンジニアが私にこう言いました。「自分の設計が数値通りに動く瞬間がうれしくて、土日も会社に行きたい」と。だから当社ではエンジニアが設計したものが、どう社会に貢献しているかを必ず現場に見に行かせます。自分の仕事がどう役に立っているかを実感することで、技術者は成長します。
そのための実験設備も拡充しています。技術者が創造性を発揮できる環境を整えることが、会社の成長につながると考えています。
―― 日本の半導体産業が再起を目指す中でどのような役割を果たしたいと考えていますか。
岩井田 私は日本の半導体産業が世界を席巻していた時代を知っています。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた時代です。でも今は世界トップ20にも入っていない。
北海道のラピダス、熊本のJASM(TSMC)など再起の動きはありますが、日本が本当に再起できるかどうかは、これからの取り組みにかかっています。当社はアナログからの脱却を掲げて、AIエージェントを中核とした「MIRAI 2030」と題した中期経営計画を進めています。AIロボットによる自動組み立て、VRによる教育など、フィジカルAIを駆使して変革を進めていきます。ただし、私が必ず思うのは「AIは魔法の杖ではない」ということです。お客さまとの信頼関係は心と心のつながり。アナログの価値は永遠に必要です。