物流業界の人手不足は改善の兆しが見られず、物流企業や荷主企業では2030年度にトラックの輸送力が大きく不足する可能性がある「2030年問題」への懸念が高まっている。政府が在留資格の「特定技能制度」の対象に自動車運送業を追加、28年度までに最大2万4500人の受け入れを想定していることもあり、外国人ドライバーに期待を寄せる物流企業も増えている。文=『月刊ロジスティクス・ビジネス』編集長/藤原秀行(雑誌『経済界』2026年12月号より)

異業種9社が挑む「支線配送」の共同化

 「30年度に輸送能力の34・1%が不足する可能性がある」。政府の官民検討会が2023年8月に公表した、物流の持続可能性を確保するための施策を提言した最終とりまとめは、NIPPON EXPRESSホールディングス系のシンクタンク、NX総合研究所がトラックドライバー不足などの状況を考慮した試算を引用、警鐘を鳴らした。インパクトのある数字だっただけに、関係者の間で危機感が高まる大きな契機となった。

 実際、厚生労働省が公表した今年7月の有効求人倍率(季節調整値、パートを含む)は、トラックなどの「自動車運転従事者」が2・53倍で、全産業平均の1・18倍を上回っている。20年10月以降、6年近く2倍の水準が続き、1人の求職者を複数の事業者が争奪する構図に大きな変化はない。

 トラック運送の業界団体、全日本トラック協会が今年8月に発表した会員企業の景況感調査結果によれば、今年4~6月期のドライバーの雇用動向に関する意識は、「不足」と「やや不足」を合わせた回答の割合が70・3%に上り、前回から3・1ポイント上昇した。7~9月期の見通しは72・6%でさらに人手不足感が強まるとの見方が多い。

 窮状を踏まえ、荷主企業や物流企業の対応の主流となっているのが、異なる企業の商品や製品を1つのトラックに積み合わせたり、1つのトラックに往路と復路で異なる企業の商品や製品を積載したりする物流の共同化だ。

 伊藤園とネスレ日本は今年4月、静岡~千葉間で共同輸送を始めたと発表した。以前は両社がそれぞれ自社の製品を同一の倉庫へ運んでいたが、4月以降はトラックの荷台にネスレ日本のペットボトル入りコーヒーを積み込んだ後、上部の空いているスペースに伊藤園のお茶製品を載せ、積載率を高めて千葉県内の倉庫に輸送している。両社は利用するトラックの台数削減や輸送時の温室効果ガス排出抑制につながると意義を強調している。

 アパレル大手のアンドエスティHD、バロックジャパン、TSIホールディングス、ユナイテッドアローズの4社は23年10月に「アパレル物流研究会」を立ち上げ、衣料品の物流共同化を推進している。中国から調達した商品をいったん山口県の下関港に集約した上で北九州市の新門司港まで運び、そこからフェリーを使って神奈川県の横須賀港まで海上輸送し、各社の物流拠点までトラックで届ける輸送の枠組みを確立。トラックドライバーの運行時間を7割以上短縮することに成功したという。今年8月にはビームスと豊島もメンバーに加わった。

 三井物産や三菱地所などが出資しているT2の自動運転トラックを活用した長距離輸送の取り組みも加速している。T2は25年7月、国内で初めて「レベル2」(部分的な運転自動化)の自動運転トラックによる商用運行を関東~関西間で開始した。T2は運送事業の免許を取得しており、大手物流企業や荷主企業から長距離定期輸送を受託している。

 自動運転をしているのは高速道路の一部区間で、それ以外の部分はドライバーが運転する通常のトラックを使っている。既に20社以上が商用運行に参加し、取り扱う製品は日本酒や石油化学品、紙おむつなど多岐にわたる。T2は27年度以降に「レベル4」(特定条件下での完全無人)自動運転トラックによる商用運行をスタートさせ、より長距離輸送の省人化を図ることを目指している。

 今年5月には花王と食品卸大手の三菱食品を中心に、異業種の荷主企業が物流拠点から店舗や納品先まで届ける「支線配送」の共同化を目指すコンソーシアム(任意団体)「CODE」の活動を本格的に始動させた。この2社と旭食品、あらた、トーハン、日本出版販売、PALTAC、三井物産流通グループ、メディセオの計9社が参加している。

 支線配送は長距離輸送に比べ、企業間で配送条件の違いが大きく調整が難しいため、これまで共同化が進んでいなかった。しかし、物流現場の人手不足が今後さらに進むことが予想されるため、異業種でタッグを組んで先手を打つことにした。

 クラウドのデータ管理システムを活用し、支線配送のルートや回数などの情報を収集・分析。ある企業が店舗や納品先に商品を届けた後、帰り便のトラック荷台の空きスペースを使って別の企業が荷物を積載、他の店舗に配送するなど、積載効率の向上につながる共同配送の最適な組み合わせを選択できるようにする。

 花王と三菱食品は「荷主企業自らが主体的、能動的に何かアクションを起こさないと現状は克服できない」と強調。26年度の下半期以降、具体的な共同化の事例を積み上げていくことを目指している。

将来は海外ドライバーを毎年100人採用も

 特定技能制度の外国人人材受け入れの準備も進んでいる。ヤマト運輸は25年11月、同制度を活用し、ベトナム企業の日本法人と連携してベトナム人の大型トラックドライバーの採用・育成を進める方針を公表した。将来は毎年100人を採用することを目指している。西濃運輸では今年に入り、同制度に基づいて昨秋入社したベトナム出身のドライバーが初めて長距離輸送の大型トラックの単独乗務を開始した。

 サカイ引越センターは今年3月、インドネシア企業などと連携し、同国に引越業分野のドライバー人材育成拠点を開講する計画を明らかにした。特定技能制度で同国のドライバーを受け入れる際、来日前から必要な知識や経験を身につけてもらい、即戦力として活躍できる土壌を作るのが狙いだ。

 トラックドライバーの場合、交通標識を理解して問題なく運転できるようにするなど、人材を受け入れる際に乗り越えるべきハードルは高い。それでも、トラック運送事業者からは「今行動しなければすぐに外国人材の争奪戦になる。迷っている暇はない」と悲痛な声が聞かれる。

 荷主企業の間では外国人ドライバーに対する交通安全面の不安は根強く、入念な準備や法令順守の徹底が強く求められる。

ヤマトホールディングス傘下のナカノ商会は今年2月、特定技能制度のドライバー候補者として20〜30代のベトナム人3名を採用したと発表した
ヤマトホールディングス傘下のナカノ商会は今年2月、特定技能制度のドライバー候補者として20〜30代のベトナム人3名を採用したと発表した(プレスリリースより引用)