北王GROUPは傘下の物流事業会社とともに、関東圏で外食チェーン店舗向けの食材配送などを展開。今年4月に東京証券取引所TOKYO PRO Marketへ上場を果たすなど成長を続けている。「物流2024年問題」でトラックドライバー不足の影響が深刻化する中、日々の配送を担うドライバーらの確保や定着にどのように知恵を絞っているのかを黒田英則社長に尋ねた。聞き手・Photo=『月刊ロジスティクス・ビジネス』編集長/藤原秀行(雑誌『経済界』2026年12月号より)

黒田英則 北王GROUPのプロフィール

黒田英則 北王GROUP
北王GROUP社長 黒田英則
くろだ・ひでのり 兵庫県出身。1991年さくら銀行(現三井住友銀行)入行、2002年北王流通入社、同年取締役。常務、専務を経て18年に社長就任。23年に北王流通などを傘下に収める持ち株会社の北王GROUPを立ち上げ、同社取締役を兼任。25年1月北王GROUP社長に就任。

ベアは毎年実施し 賞与も年4回支給

―― 北王GROUPの事業の特徴を教えてください。

黒田 外食チェーン店舗さん向けの低温食品物流を展開しています。外食チェーン店舗は総じてバックヤードが狭く食材をストックするスペースが限られているため、当社が都心部に小型配送拠点「都心デポ」を構え、それぞれの配送エリアに最も近い都心デポへ食材を運んだ上で、そこから各店舗に必要な分だけ毎日、小口配送しています。365日、異なる温度帯の食材を同時にお届けしていることは当社のコアコンピタンスです。

―― ドライバーが足りないと実感されてきたのはいつごろですか。

黒田 業界全体で「これは明らかに足りないだろう」と危機感が高まったのは、やはりドライバーの長時間労働規制が強化される「物流2024年問題」が注目され始めた21~22年ごろですね。それまでにも潤沢というわけではありませんでしたが、当時は日本の産業そのものが物流で帳尻を合わせることが普通でした。運賃は上がらないまま、物流企業がドライバーの拘束時間を長くして何とか輸配送の仕事をこなしていた。しかし、2024年問題で業界全体が本当にまずいと危惧しだしたと思います。

―― 御社のトラックドライバーの採用や定着の状況は?

黒田 採用力は同業の中でもかなりある方だと自負しています。今年度(26年10月期)も昨年の11月から今年の8月までの間、ドライバーや(倉庫内の業務を手掛ける)オペレーターを約60人中途採用できています。従業員全体で440人くらいなので相当な数だと思います。ただ、実は退職者も多く、純増ベースで見れば数人なんです。採用の力があってようやく人員を現状維持できているのが実情です。

―― 採用力を強めるために取り組んでいる具体的な施策はありますか。

黒田 採用に関しては、専用のホームページを開設したり、SNSで情報発信したりと地道に活動しています。特段奇をてらったものはありません。同時に待遇の改善などで採用や定着の強化を図っています。給与のベースアップ(ベア)は毎年実施し、賞与も年間4回支給しています。業績連動のものに加えて、期初に設定した業務の目標を達成した場合などにも支給しています。1つの仕事をより短い時間で終えることができた従業員をより高く評価する制度も導入しました。

 他にも社内でいわゆる小集団活動のような勉強会を定期的に開催し、少人数のグループで業務の改善などを活発に議論してコミュニケーションの質と量を高めたり、管理職希望の従業員を対象に、必要なスキルを役員が時間をかけて研修したりといった取り組みを続けています。こうした施策を重ねることで従業員のエンゲージメントを高めていきたい。

 業務の負荷を減らすことも重要です。当社は年商が現在の半分程度だった時代から社内に「情報システム室」を抱え、独自の輸配送管理システムなどを開発し、効率化を推進してきました。DXは業界でも先進的な方だと思います。

インドネシアから ドライバー受け入れ

―― 黒田さんは20年以上まえに金融機関から物流業界に転じました。全く異なる世界から物流業界を見て、どのように感じましたか。

黒田 コロナ禍の時にも痛感したのですが、ドライバーなど物流を担う人たちが社会を支える重要なエッセンシャルワーカーなのにもかかわらず、自分の仕事に誇りを持てていないように感じました。それはおかしいと思い、社内で「皆さんは社会に貢献する立派な仕事をしているのだからもっと誇りを持とう」と言い続け、待遇改善などに努めました。同時に、自分たちの会社を、そして物流業界の立場を高めることも必要だと思い、取り組んできました。上場によって会社の社会的信用度や認知度を上げ、従業員の皆さんが誇りを持てるようにすることもその一環です。私が入社した当時のトップの古瀬一英氏とぜひ上場させたいねと話し続けてきました。その思いを昨年ようやく実現させることができました。今後は東証の一般市場への上場を目指していきます。

―― 上場で採用や定着にプラスとなりましたか。

黒田 トラックドライバーではないのですが、本社の管理機能を強化するために幹部や担当者の採用活動を続けている中で、以前よりも明らかに応募が増えましたね。

―― 物流業界では外国人の就労を可能にする「特定技能制度」を生かして外国人をドライバーに採用することで人手不足を改善しようという動きが強まっています。

黒田 当社でも特定技能制度を活用し、インドネシアからドライバーを受け入れています。今年は初めてスタッフが1人、独り立ちして現場で業務に当たっています。今年中に30人まで内定者を増やす予定です。安全運転の意識などを徹底的に教え、サービスの品質を担保することでお客さまにも全然問題がないと思っていただけるようにするのが当社の責任です。インドネシアの皆さんは非常に真剣で勉強熱心ですし、非常に有望だと感じています。

―― 2024年問題で物流業界は非常に厳しい環境に置かれています。ドライバー不足もすぐには改善されません。ただ、この問題を契機に荷主との関係は改善され、長らく低い水準で抑えられてきた運賃や料金の値上げも広がってきました。今後の物流業界をどう展望しますか。

黒田 確かに対応は難しいですが、私もよい方向に進んでいると思います。物流は自分だけで完結できない以上、荷主さんと協力関係を築き、業務を一緒に変革し、ドライバー不足をカバーしていくことが絶対に不可欠です。荷主の皆さんも物流の重要性を認識してくださるようになってきました。システム化や省力化は荷主の皆さんにもご理解、ご協力いただき、もう一段進めていかないといけません。ここから先が実は一番難しい領域だと思います。外国人を受け入れるのも枠が設けられていますし、やはり地道に作業フローの効率化を続けていくことが重要です。