直営・FC合わせて全国に220店舗ある日本そばチェーン「ゆで太郎」。運営するゆで太郎システムの池田智昭社長は、「一杯のそばを通じて、世の中も、お客さまも、働く人も、みんなを幸せにする」がモットーだ。外国人社員登用にも積極的で待遇で日本人と差はつけない。そのシステムとは。聞き手=外食ジャーナリスト/中村芳平 Photo=横溝 敦(雑誌『経済界』2026年12月号より)

池田智昭 ゆで太郎システムのプロフィール

池田智昭 ゆで太郎システム
ゆで太郎システム社長 池田智昭
いけだ・ともあき 1957年生まれ。明治大学文学部を卒業後、「ほっかほっか亭」のフランチャイズ(FC)加盟店オーナーとして独立。84年FCオーナーのまま、ほっかほっか亭の本部であるほっかほっか亭東京事業本部にスーパーバイザーとして入社。92年営業本部長に就任。その後、開発本部長やFC本部長などを歴任。2004年「ゆで太郎」創業者の水信春夫氏(故人)のマスターフランチャイジーとして、ゆで太郎システムを設立、社長に就任、現在に至る。

奨学金を貸し付け 社員寮も用意する

―― ゆで太郎システムは大卒初任給35万5千円、という飲食業界最高レベルの給与体系を導入しているそうですね。しかも外国人雇用でも日本人との不平等はないと聞いています。

池田 今は日本人正社員約200人、外国人正社員500人、アルバイト・パート約900人で運営しています。 外国人を正社員として積極的に採用するきっかけは2020年のコロナ禍です。

 知り合いがミャンマー人の新聞奨学生など3人を連れてきて、「ミャンマーでは軍事クーデターが勃発(21年2月)しそうで帰国できない。学校を卒業生しても就職先もない。ゆで太郎で面倒を見てもらえないか」と言われたのです。そこで引き受けて店舗に配属、しばらくして配属先の店長に聞いたら、「めちゃめちゃいいですよ! 真面目で熱心によく働きます」とベタ褒めします。これをきっかけに、外国人雇用に本格的に取り組むことにしました。

 日本人のほうが言葉の壁もないし使いやすいのですが、大卒は現場職を嫌がり、事務職を望む傾向があります。加えてコロナ禍では外食業は酒類販売や深夜営業の規制があり、外食業界ではアルバイト・パートなど50万人以上が余る状況になりました。ちなみに、当社は郊外のロードサイドが主力のため酒類の扱いも少なく、コロナ禍の影響は少なかった。だから出店を続けたのですが、年間平均15~20店舗出店すると、本部と店舗でおおよそ250~300人の人員が必要になります。日本人だけでまかなうのは無理で、外国人雇用は不可欠でした。

 そこでコロナ禍が落ち着いた段階でミャンマー、ネパールなどの日本語学校で日本語のできる生徒たちと面接、要求するレベルの日本語ができる生徒を正社員として採用することにしました。

―― 外国人雇用に際し、ゆで太郎ならではの何か特別な取り組みは考えたのですか。

池田 外国人材の獲得は大手のファミリーレストランや大手外食チェーンの独壇場ともいえる分野でした。後発の当社が採用するには思い切った施策が必要だと考えました。正社員候補に100万円の奨学金を貸し付け、1年間日本語学校で留学生として学ばせ、日本語2級(N2)と特定技能1号の資格を取得させるというプログラムを作りました。学校に通っている間は、ゆで太郎の店でアルバイトとして働きます。そして、卒業と同時にゆで太郎システムの正社員として入社、3年をメドに特定技能2号の資格を取得し、店長以上を目指して働いてもらうという仕組みです。

 一定数は幹部候補として 店長、マネジャー、課長、部長として育てていきたいなと思っていますし、すでに店長になっている外国人社員もいるし、副店長も相当数、さらに全部の仕事ができるチーフが100人以上います。

 この100万円奨学金貸付には300~400人応募があり、その中から日本語の能力を基準に、採用者を30人、20人、10人と絞り込んでいきます。狭き門であり、それだけ優秀な人材が集まります。こういう中から将来日本の永住者としての申請も出す人も出てくるでしょう。彼らは日本人と同じで所得税や社会保険、年金などを納め、日本を支えるメンバーとして生きていくのです。私たちの仲間、同志であると思います。

やり方次第で日本はまだまだ魅力的

―― ところで、技人国(技術・人文知識・国際業務)とは日本の会社などと契約し、専門的な知識や技術を使って働くための在留資格ですが、これとは別に「特定活動46号」がありますね。日本の大学などを卒業した外国人を対象とする在留資格で、一定の条件の下で調理、接客だけでなく、従業員の管理・指導、衛生管理、在庫管理などの店舗管理、さらに店舗の経営分析や経営管理まで幅広い業務に従事することが認められています。

池田 ネパール人で特定活動46号を取得しているマネジャーが名古屋にいます。外国人雇用を始める前から勤務していました。私は今年1月、来日したネパール人については彼をリーダーとする研修店で2カ月間、日本語や調理、接客などさまざまなことを研修するというシステムを作りました。会社の規則、店舗運営のマニュアルなどネパール語に翻訳してもらって、日本語とネパール語で指導してもらっています。この方式をベトナム、ミャンマー、中国に展開することもできるのではないかと考えています。

―― 外国人雇用の先進的なビジネスモデルを作ってきた功績は非常に大きいと思います。

池田 日本人であれ、外国人であれ、戦力として本気で働いてもらいたい。そのために日本人、外国人の差別なしに、業界最高水準の給与体系を作ってきました。

 日本語についても一般的にはN4レベルでもよいのかもしれませんが、当社の場合はN3、N2が基本です。そのためにe-ラーニングなどお金をかけて日本語を学べる環境を整えてきました。例えばミャンマーだと月収1万~2万円の若者たちが、当社では月25万~30万円稼げるので 毎月10万円をミャンマーに送ることが可能です。2カ月でミャンマー人の年収が送金でき、1年で5、6年分を送れます。これだけのお金があれば商売をやる、土地を買い家を建てるなど、家族の生活の面倒を見て、お釣りがくるはずです。それを考えれば、アジアの国々にとって日本はまだまだ魅力のある国ではないでしょうか。

池田智昭