大学在学中にラーメン店を立ち上げた西奈槻さん。現在は「やるかやらんか」の代表として、飲食店運営に加え、インターン紹介や新卒採用支援など、若者と企業をつなぐ事業にも力を入れています。26歳の西さんが「日本の若者に選択肢を示す」という思いの先に何を描いているのか、じっくり伺いました。構成=佐藤元樹 Photo=藤岡修平(雑誌『経済界』2026年12月号より)
西 奈槻 やるかやらんかのプロフィール
「何かやりたい」から始まったまずはやってみるという選択
佐藤 起業する前は、何を目指していたんですか。
西 高校時代はプロのドラマーを目指して、アメリカまでオーディションを受けに行っていました。でも、本気でドラムを愛する人たちを見て、自分との違いを感じたんです。僕はドラムそのものより、人の心を動かすことがしたかった。だったらドラムでなくてもいいと思い、高校3年生で音楽の道には区切りをつけました。
佐藤 そこからラーメン店というのは、かなり意外ですね。
西 近畿大学に進学してコロナ禍になり、授業やサークル活動もできなくなった。「何かやりたい」と思っていた時に、友人が作る麻婆豆腐がおいしくて、「ラーメンと組み合わせたら面白いんじゃないか」と。電話したら「じゃあやってみようか」くらいのノリで。店を開ければお客さんが来ると思っていたくらい、何も分からず始めました(笑)。実際はお客さんを1人、2人呼ぶところから、どうしようかと考える毎日でした。
佐藤 何も分からないところからのスタートだったんですね。経営面ではどうでした。
西 経営についても何も分かっていませんでした。ただ、最初の店は家賃を1年間無料にしてもらい、その後に出店した近畿大学の学食も家賃がかからなかった。固定費が少なかったから、うまくいかなくても続けられたんです。今の店では家賃が100万円ほどになり、最初は驚きましたけどね。起業では最初のリスクを小さくすることが大切だと思います。
佐藤 今はラーメンだけではなく、事業もかなり広がっていますよね。
西 学生の就職やキャリアに関わる事業です。インターンの紹介などをしながら、「日本の若者に選択肢を示す」ことを掲げています。
佐藤 一見すると、ラーメンとキャリア支援はかなり離れているようにも見えます。
西 僕自身、ラーメン屋をやりたかったわけではなく、「何かやりたい」と動いた結果がラーメンだった。近大の店も「何かやりたい」という学生に引き継がれ、今は5代目が運営しています。まず何かを形にしてやり切る。成功でも失敗でも、その経験から本当にやりたいことが見えてくると思うんです。
ラーメンから就活を変える その先に描く奈良の未来
佐藤 自分で動いた経験が、今の若者支援にもつながっているわけですね。学生と接していて、どんなことを感じますか。
西 就職先を考える時に、最初に出てくるのが職種や勤務地、初任給なんです。でも、この先どうなりたいのかという人生全体の話はあまり出てこない。自分がどう生きたいのかを考える機会は少ないと感じています。
佐藤 西さん自身も26歳ですが、同世代とは少し考え方が違うように感じます。
西 仕事って結局、人と人だと思っています。オンラインは便利ですが、それだけでは人間関係をつくりにくい。ご飯をごちそうになったらすぐお礼をするとか、報告や連絡をきちんとするとか、そういうことも大事です。よく「昔の人みたい」と言われるんですけど(笑)、そこは大切にしたいですね。
佐藤 では、学生と企業を実際にどうつないでいるんでしょう。
西 大学の学食を学生と企業の出会いの場にしています。企業にラーメンを買ってもらい、学生は無料で食べながら企業の人と話す。面接だと企業も学生もいいところしか見せない。お互い厚化粧しているようなものです。でも一緒にラーメンを食べれば、もっとフラットに話せます。
佐藤 ラーメン屋から始まったものが、今度は学生と企業をつなぐ仕組みになった。これは面白いですね。
西 全国には大学が約800校あります。まずはその2割、160大学ほどに広げたい。ラーメン店がなくても、学食と提携すれば展開できます。「まず学食に行けば企業と会える」という環境をつくり、学生との接点を一番持つ会社になるのが、これから10年くらいの目標です。
佐藤 10年後まで見えているんだ。その先ももう考えているんですか。
西 35歳で奈良県知事選に立候補すると決めています。ただ、知事になること自体が目的ではありません。
佐藤 奈良県知事ですか。
西 僕は奈良で生まれ育ったので、地方で生まれ、地方で活躍するロールモデルになりたいんです。
佐藤 でも、奈良に貢献する方法はほかにもありますよね。そこで知事を選ぶのには理由がある。
西 奈良には、何か新しいものをつくろうとすると、変えなければならないルールがあります。知事でなければ変えられないところは知事として変えたい。その先にやりたいこともあります。
佐藤 なるほど。知事になるのは、その先の目的があるからなんですね。
西 奈良にテーマパークをつくりたいんです。奈良にはポテンシャルがあるのに、観光客がお金を使える場所はまだ少ない。奈良に人が来て、お金が回る、地域経済の象徴になるような場所をつくりたいんです。
佐藤 テーマパークまで、もう時期も決めているんですか。
西 45歳くらいには実現したいですね。その後は隠居しようかなと(笑)。
佐藤 それは早すぎるんじゃない(笑)。
西 まだ分からないですけどね。でも、将来は奈良に還元したいという思いがあります。