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「団地」は生まれ変われるか 再生に挑む2つのアプローチ

ニュースレポート

高度成長期に急増する都市部の住宅需要を支え、日本人のライフスタイルを変化させた団地。今、その多くが施設の老朽化、住民の高齢化など多くの問題に直面している。「団地再生」は可能なのか? その行方を追った。 (本誌/古賀寛明)

昭和の遺産である「団地」が蘇る

 「部屋が狭い」、「施設が古い」、「地震に弱い」――今の時代「団地」という言葉からイメージされるものは、かくも市場のニーズから取り残されている。

 高度成長期に建てられた団地の多くが築30年以上となり、老朽化への不安はもちろん居住者の高齢化もあり、住民はもとより、行政も今後の対応を迫られている。

 かつて団地は、都市に流入した人口の受け皿となるだけでなく、ちゃぶ台の上で食事をし、同じ部屋で布団を敷いて寝るという1つの部屋を多機能に使う生活を、現代のような「寝食分離」のライフスタイルに変えた。

 「DK(ダイニング・キッチン)」なる言葉も生むなど、庶民の憧れであった。しかし、時は過ぎ団地に対する風当たりは厳しい。ところが、今その団地が変わろうとしている。

 不動産大手の野村不動産は、現在までに首都圏で5件のマンション建て替え工事を行っている。うち2件が団地の建て替えだ。1つが三井不動産レジデンシャルとの共同プロジェクトで、昭和40年完成の「桜上水団地」。17棟404戸を、9棟878戸の「桜上水ガーデンズ」として新たに誕生させる。

 東京23区内でも最大級の大規模団地の再生は、新たな大規模マンションの誕生ではなく、過去の桜上水団地が持っていた「北側、南側の両面に窓があり採光、通風に優れる」特徴を残し、1フロア2世帯構成のゆったりとしたつくり。「最寄りの京王線桜上水駅から徒歩3分という好立地で、4・7㌶もの広い敷地を確保されていた昭和の団地の余裕を感じます。今ならこのような場所を確保するのは難しいでしょうね」(野村不動産広報)とのこと。

 建て替えに合わせて免震構造が採用され、太陽光発電や雨水などを利用した生活用水を生成する機器も整備するなど、災害対策にも余念がない。竣工は平成27年の8月になる予定だ。

 もう1つが、「(仮称)阿佐ヶ谷住宅建て替え計画」だ。東京・杉並区の閑静な住宅街に位置し、昭和33年に完成した。

 2階建てのテラスハウスや3~4階建ての中層団地などで構成された総戸数350戸の大規模団地は、ル・コルビュジエに師事した前川國男氏の設計で、建築好きの中でも評価が高かった。こちらも老朽化が進み、平成7年に再開発委員会が発足、建て替えの検討が進められ、その後権利者全員の合意による等価交換方式が採用された。建て替え後は580戸になり、うち380戸が新たに分譲される予定だという。

 両プロジェクトに共通するのは、駅から近く、近年では考えられないような緑豊かな広大な敷地を誇ることだ。阿佐ヶ谷住宅も敷地面積5㌶を誇り、東京メトロ丸ノ内線の南阿佐ヶ谷駅から徒歩5分に位置する。

 しかし、老朽化したほかの団地が、今後もすんなり建て替えられるというわけではない。

 桜上水ガーデンズは、建て替えが検討されてからなんと25年もかかっているのだ。阿佐ヶ谷住宅でも前述のとおり、再開発委員会が発足してから18年の歳月が流れている。

 平成14年「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」が施行されたが、影響はあくまで限定的で、結局は「住民の皆さまの熱意」(同)が建て替えの原動力であったという。しかも、今回の両地区は都心に近く、最寄りに駅もあるので、再開発で戸数を倍に増やしたとしても需要がある。

 しかし、郊外で、駅から遠く、スーパーなどの商業施設も近くにない団地などでは、とてもではないが採算が合わない。では、諦めるしかないのであろうか。

 だが、建て替え以外にも解決策がないわけではない。

「団地」再生のカギ 自由とIT化が救世主

 一般的に賃貸物件であれば、部屋のリノベーション(リフォームよりも大規模な改修工事)が許可されることは少ない。仮に許可されても原状回復義務が生じるため実際的ではなかった。UR賃貸で知られる独立行政法人都市再生機構は、リビング・ダイニングの壁の原状回復義務を免除し、自由にカスタマイズできる「カスタマイズUR」プロジェクトを始めている。

 欧米では、既存の建築物を自分なりにデザインし居住するスタイルが浸透しており、流通シェアの7割以上を占めるという。一方、新築物件の人気が高い日本だが、ここにきてようやく個性に合わせた住宅を求めるようになってきたようだ。

 都心で自分の思いどおりの住宅を手に入れようと思えば、相当な費用が掛かるが、郊外の団地でリノベーションできるとなれば、夢の実現度は高くなる。

 IT化が進む世の中ならば、在宅勤務など選択肢も広がり、必ずしも交通至便という条件は最優先というわけではない。新たな住民の流入でコミュニティーが復活すれば団地もまた復活できる。

 UR都市機構が、このプロジェクトで連携するのは、「ベランダが広く使える」とか、「倉庫みたいな」、「秘密基地のような」遊び心のある物件を世に知らしめた東京R不動産というから楽しみだ。現在、カスタマイズが可能な対象団地は3つの予定だが今後の広がりが期待される。「カスタマイズURを通じて、多くの方に自分好みの空間づくりを楽しんでもらい、賃貸住宅マーケットの活性化につなげたい」(広報)と期待する。

 団地の建て替えを行う「スクラップ&ビルド」か、多様化するライフスタイルに合わせた「ストック・リノベーション」か、異なる選択肢で団地の再生に挑む。

 コミュニティーの再生にもつながる団地の今後は、日本の課題を浮き彫りにしているだけに、今後も目が離せない。

 
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