媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「五輪開催」で沸き立つ日本。気になる未来のそろばん勘定

ニュースレポート

2020年の東京開催が決まった夏季オリンピックとパラリンピック。3兆円以上の経済効果が見込まれるとあって、さっそく株式市場が高騰した。久しぶりのうれしいニュースに沸き立つ日本だが、浮かれてばかりもいられない。 (本誌/古賀寛明)

選手村や競技施設が建設されるベイエリア(東京・晴海)

選手村や競技施設が建設されるベイエリア(東京・晴海)/写真:PANA=朝日航洋

速くも特需狙いの動き

 2020年の夏季五輪が東京に決まった。IOCのジャック・ロゲ会長(当時)のちょっと違和感のある「トウキョウ」という声と、その後の歓声は高揚感とともに多くの日本人の記憶に残っているはずだ。

 その日以来、感動秘話や招致の舞台裏など、久方ぶりの明るいニュースはワイドショーを中心に繰り返し続けられている。

 日本経済にとっても好影響を与えるこのニュースは、既にアベノミクス第4の矢ともいわれ、「アベノリンピクス」という言葉まで生んでいる。まだ開催が決定したばかりということで、過熱しているのは株価ばかりかと思われているが、特需を狙って、既に水面下で激しい戦いが始まっているようだ。

 4500億円もの金額が動くといわれているのが、多くの競技場や選手村など直接関係する施設工事だ。既に招致の段階から場所を含めて決まっており開催決定で具体的なアクションプランに移っている。

 今回の東京五輪、コンパクトさも売りになっており選手村から半径8㌔㍍内に33の競技種目中の28会場が入っている。会場は大きく東京ベイゾーンとヘリテッジゾーンに分かれる。

 東京ベイゾーンは、文字通り湾岸地域に建設され、カヌー競技が開催される葛西臨海公園から、大井ホッケー競技場まで東京湾を抱くように広がっており、お台場や有明などに新たな競技施設が建設される。

 武道館や東京体育館、代々木競技場など、1964年の東京オリンピックの遺産を引き継ぐヘリテッジゾーンでは、既存の施設がフルに利用される。中でも日本スポーツの「聖地」国立競技場を全面改修する新国立競技場は、開閉式の屋根を備えた収容人数8万人(現在は5万4千人)を誇るメーン会場であり、招致委員会の竹田恆和理事長いわく、「過去と未来をつなぐ五輪のシンボル」とのこと。

 東京五輪の前年、2019年にラグビーのワールドカップが日本で開催されることもあり、そのメインスタジアムであるこの競技場は、一足早く来年7月からの工事スケジュールが決まっている。

 SFの世界を思わせる流線型の斬新なデザインは、イラク出身の女流建築家、ザハ・ハディド氏の作品で、現在全面改築に1300億円強の予算が立てられている。しかし、このデザイン、そもそも建設自体が難しいという声もあり、仮に設計どおりに建設しても、2千億円以上掛かるといわれ、大幅なデザインの変更が迫られそうだ。

 異彩を放つ建造物がぽつんとあるはずもなく、競技場一帯の再開発も決まっている。神宮球場や秩父宮ラグビー場も含めたスポーツを中心にした新たな街づくりが行われる予定だ。

 もうひとつの巨大なプロジェクトが954億円の工事費が見込まれる選手村の建設だ。

 中央区晴海の三方を海に囲まれた広大な土地に建設される予定で、大会終了後は改装されてマンションとして販売される。当然、交通網も整備される予定なので、銀座からも近い立地に不動産業界は湧いている。実際、開催決定後すぐに、晴海地区のモデルルームの見学者は多かったようだ。

 大手不動産広報も「インフラの更新など大いに期待している」と言うとおり、不動産、ゼネコン各社が、受注を狙っているのは間違いないだろう。

1964年とは違う背景

 ただ、一歩退いて考えてみると、確かに特需はあるだろうが、限定的な経済効果で終わる可能性は否定できない。

 まず、心配なのはやはり「お金」の問題だ。

 招致に成功した理由のひとつに財政的な安心感があったのはご承知のとおり。国のバックアップに加え、東京都も4千億円の資金を用意しているという。しかし、前述のとおり、既に新国立競技場の建設費は1300億円では足りないといわれている上に、今のスタジアムの解体費などはこの金額に含まれていない。

 さらに、あるスポーツ関係者は今後も新たなお金が出ていく可能性があると指摘する。

 「例えば、五輪のような大きな大会では、VIPが休む部屋をある程度確保しなければなりません。通常、ホテルを利用しますが、メーンスタジアム近くにホテルはない。つまり、新たなホテルが必要になる可能性があるのです」

 このような話は枚挙にいとまがない。

 選手村跡地のマンション利用に関しても、あって欲しくはないが、もし、また大きな地震など自然災害があれば液状化の問題も出るはず。選手村で使用した後のマンション群の売れ行きは不安視される。

 04年のアテネ五輪などは、国家財政の5%に相当する財政負担が、国の破綻につながった。

 もちろん、東京五輪に水を差すつもりはない。失われた20年を経て、ようやくつかんだ日本経済浮上のきっかけだ。ただ、五輪の名のもとに十分な精査も行われず浪費するのは許されない。現実を見てみれば、わが国は国家の借金が1千兆円もあり、人口が減少し高齢化の進んでいる国である。64年の前回大会当時のような敗戦を乗り越え、人口の増大とともに飛躍する若い国家ではない。

 だからこそ、五輪後のあるべき国家の姿を見据えてインフラなどの整備、準備をするべきではないか。かつてのような景気回復、GDPの拡大というのでは未来に希望は持てない。

 幸い五輪に合わせ新たな技術も導入されるという。環境技術はもちろん、自動運転の車が会場をつなぐなど、まるで技術のショーウインドーだ。また、東京五輪、その前年のラグビーワールドカップと世界陸上までもが東京で開催されるという話まである。多くの観光客が見込めるこのチャンスを生かして「お・も・て・な・し」を旗印に観光立国を目指すべきであろう。東京五輪は、日本の再生のための第一歩になるのだ。

「祭りの後」に寂しさを残してはならない。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る