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「試合に出る選手よりも、出場できない選手に気を配る」立川理道(ラグビー日本代表主将)

前回のワールドカップで優勝候補の南アフリカを破るなど躍進を遂げたラグビー日本代表。2019年大会は日本で開催されることもあり、さらなる活躍が期待されるが、その代表チームを共同主将のひとりとして束ねるのが立川理道選手。その高いリーダーシップで所属チームのクボタ、スーパーラグビーのサンウルブズでも主将を務める。異なる3つのチームを率いるリーダーは、どうやって誕生したのか、本人に聞いた。聞き手=古賀寛明 Photo=山内信也

立川理道氏プロフィール

立川理道

たてかわ・はるみち 1989年、奈良県生まれ。天理大学卒業後、クボタスピアーズに所属。2012年4月のカザフスタン戦で日本代表初キャップを獲得し、15年のワールドカップにも出場。現在、日本代表で堀江翔太選手、スーパーラグビー・サンウルブズでもエドワード・カーク選手と共に共同主将を務め、クボタスピアーズでも主将。ポジションは主にセンター。180センチメートル、94キログラム。

立川理道氏のリーダーシップとは

―― 3つのチームでキャプテンをされていますが、昔からリーダーを任されていたのでしょうか。

立川 いや、全くそんなことはなくて、一つ上の兄(同じクボタスピアーズに所属する立川直道選手)のほうがみんなを引っ張っていくタイプでしたので、僕はその後をついていくだけでした。ただ、高校、大学と兄がキャプテンをした翌年にキャプテンを務めるといった具合になっていました。とはいえ、兄の真似をするだけでしたね。

―― リーダーシップを評価する声が高いですが、自身をどのようなリーダーだと思われていますか。

立川 リーダーとしての行動を強く意識するようになったのは日本代表を経験してからです。もともと、そんなに積極的に発言をするタイプではないので、プレーで引っ張っていきたいとは思っています。褒めていただくのはうれしいのですが、自分のどこにリーダーシップがあるのか、よく分からないんです(笑)。

ただ、周囲からは、人とのつながりをフラットに考えているので、新人でもベテランでも対応が変わらない、とは言われます。日本のスポーツにありがちな上下関係に縛られることがなかったことが影響していると思います。いつも同じチームに兄がいましたから好きなことを言えましたし、好きなことを言える分、後輩からも思ったことを遠慮なく言ってもらう環境づくりは考えていました。

―― 実際にチームづくりではどのようなことに注意していますか。

立川 私は決めきれないところがあって、監督や他のリーダーとよく話し合って方向性を決めています。ラグビーはコミュニケーションが大事ですので、普段から積極的に取らないと意思疎通がうまくいきませんからそこは気をつけています。

また、試合には15人しか出られませんが、スピアーズには選手が50人ほどいます。出場できない選手の辛さは分かりますから、出られない選手の存在意義を見いだしてあげれば、その選手もチームのために頑張れると思うので、いつも出場する選手よりも、そうした縁の下の力持ち的な存在の人に気を配っています。その方がチームとしても機能すると思いますね。

―― サンウルブズや代表は共同キャプテンですが違いはありますか。

立川 両チームとも、寄せ集めのチームですから短期間でひとつのチームにするのが難しいということも共同キャプテンの理由のひとつでしょう。サンウルブズは特に外国人選手も多いので、もうひとりのキャプテンであるカーク(エドワード・カーク選手)と緊密に連絡をとっています。僕がケガして出られない場合でも、週1回くらいは連絡しています。

また代表では、堀江(翔太選手)さんがずっと日本代表に入っていますしベテランでもあるので、しっかり先頭に立ってもらって僕は支える役目です。サンウルブズにしても代表にしても、プレースキルも意識も高い選手ばかりですので、チームづくりという点ではあまり難しさは感じません。

―― ラグビーのキャプテンには、ゲーム中、レフェリーとのコミュニケーション能力も求められますね。

立川 そうですね。ジェイミージャパンになってからは、レフェリーと前日にしっかりと話せる場を設けてもらえるようになりましたので、自分たちのチームの傾向を伝え、レフェリーからも、日本のこのプレーは誤解を招きやすいから注意したほうがいいといった意見をもらえるようになりました。

いろんな国、いろいろなタイプの方が笛を吹くのですが、英語が母国ではないフランスやアルゼンチンなどのレフェリーとは、意外と分かり合える気がします(笑)。

自分のパフォーマンスが悪い時こそ声を出す

―― 自分のパフォーマンスが悪い時、キャプテンシーに影響しますか。

立川 そういう時こそ、逆に声を出すようにしています。それは、自分にプレッシャーをかける意味もあるのですが、リーダーが沈むとチームも決して良い方向にはいきません。ですから、そういう時こそ、いまチームがやろうとしていること、例えばタックルが良くなければ、「タックルに集中しよう」など短い言葉で伝えるようにします。もし、そこで上下関係があれば「何言ってんだよ」ということになるので、そこは普段からなくすようにしていますね。

―― これまで、参考にしたいと思ったリーダーはいましたか。

立川 兄もそうなんですが、代表に入った時にキャプテンを務められた東芝の廣瀬(俊朗選手・現在は引退)さんですね。ひと言でもいいからチーム全員と言葉を交わすことを自分に課していたり、普段の生活でも、裏方さんやスタッフへのさりげない気遣いができる人です。

―― 最後に、立川選手が考えるリーダーにとって大事なことは。

立川 きちんと自分の意見が言えて、ブレない人です。上がブレるとチームも安定しないし、率直な意見を言えないようでは、この人についていこうとは思わないですからね。

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