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選挙と政策

この原稿が日の目を見る頃には、参議院選挙は終わっているはずだが、今は選挙直前である。しかし、安倍自民党が圧勝することは明白で、全く盛り上がりに欠けた選挙戦となっている。

普通の選挙戦においては、与党と野党の戦いだから、できる限り、与党と対立軸を鮮明にして、違いを強調する戦略をとる。しかし、今回は勝手が違う。いくつかの野党は、そのオーソドックスな戦略に立っているが、これだけ現政権の支持率が高いと、対立すればするほど、有権者はますます与党の支持に回り、闇雲に反対している野党からはますます離れてしまう。政権与党に反対する有権者がそこまで減ってしまうと、与党に反対する人々は、とにかく分かりやすく反対したいから、極端な与党批判を歴史的に続けてきた政党に票を入れるようになる。そして、まともな政策上の対立軸を取って、与党に対抗しようとした政党は影が薄くなる。

さて、こうなると、戦略的に合理的なのは、与党に反対せず、与党は概ね方向としてはいいが、これでは不十分だ、という主張をすることである。与党の方向性が評価されているのだから、その方向をさらに強く押し進めるような政策を主張すればよい。それなら有権者の望む方向性に合うし、しかも、政府のやり方では生ぬるい、と主張すれば、与党との差別化が図れる。野党ならば実現性を無視できるから、実現すると思われる与党の政権公約よりも自由に政策を設計、主張でき、有権者にウケる政策という観点だけで勝負できるから、与党よりも断然有利である。

しかし、現実はどうもそうではないようだ。

まともに対立軸を設定している与党も、与党の側に立ってさらに改革を進めるような主張をして合理的な政策ポジションをとっている野党も、その政策ポジション設定では、全く成果が見られない。有権者は、野党のいかなる政策ポジションにも反応しないかのようだ。

これは一体どういうことなのだろうか。選挙においては、政策が最も重要な争点ではないのか。どうもそうではないようだ。

かつてのマニフェスト選挙は、マニフェストを出さないほうが有利であることが分かり、なくなった。郵政解散は、結局イメージ戦略だった。有権者は、ただ、その時々の政権や野党や、それらのリーダーのイメージと雰囲気で、直感的に投票しているという仮説を覆すような、政策が争点となった選挙が近年では存在しない。現時点では、日本の選挙において政策は関係ないと言わざるを得ない。

 
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