媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

第三者調査委員会の報告にも「不十分」の声

ニュースレポート

みずほ銀行の反社会的勢力への問題融資について調査した第三者委員会の報告書が提出され、同銀行は業務改善計画を公表した。報告書の内容には曖昧な点や推測が含まれているが、事実は本当に明らかにされたのか。

はっきりと解明されなかった問題の核心

業務改善計画などについて説明する佐藤頭取(写真:時事)

業務改善計画などについて説明する佐藤頭取(写真:時事)

 グループ信販会社であるオリエントコーポレーション(オリコ)を通じて反社会的勢力に行った融資をめぐる問題で、みずほ銀行は10月28日、業務改善計画を金融庁に提出、公表した。第三者調査委員会の調査報告書が同日に公開されたものの、内容はみずほ銀行が既に公表したものを追認する形で、曖昧な部分も多く、調査が十分なものだったか疑問が残る格好となった。

 金融庁がみずほ銀行に業務改善命令を出す理由となった、提携ローンによる問題融資。「報告は担当役員どまりだった」と一度は説明したものの、西堀利元頭取が問題融資を把握していたことが直後に明らかになるなど状況は混乱していた。

 第三者調査委員会はこうした事態を受けて事実確認や原因究明を委嘱される形で設置された。同委員会による聴き取りを元に報告書が作成されたが、内容には曖昧だったり、推測の域を出なかったりする点もあり、幕引きはまだ遠そうだ。

 これほどの混乱がどうして生じたのか、まずは経緯を簡単に振り返ってみよう。

 そもそも、みずほ銀行からの反社会的勢力への融資問題が浮上したのは、昨年12月から始まった金融庁による検査がきっかけ。後に問題となる「報告は担当役員どまりだった」という認識はこの検査時の回答として金融当局にもたらされた。今年3月初旬に検査は終了したが、金融庁の報告徴求命令が続いて出された。そして、7月には、みずほ銀行が報告書を金融庁に提出し、9月27日の業務改善命令につながった。

 ところが、岡部俊胤・みずほ銀行副頭取(兼みずほフィナンシャルグループ〈FG〉副社長)による釈明会見の直後、佐藤康博・みずほ銀行頭取(兼みずほFG社長)は10月8日、この説明を翻した。この時、西堀元頭取も問題融資について議論した記憶があるとの証言が得られたことが明らかにされ、実態解明が第三者委員会に委嘱された。

 こうして設置された第三者委員会が、現役の役職者や元役職者、その他の関係者に対して事情聴取を実施。委員会は20日間にわたって24回開催され、合計85人がヒアリングを受けた。その結果に基づき、報告書が作成されたが、中途半端な内容に終わったとの印象がどうしても拭い去れない。

 そうなった理由の1つは、事実確認がしっかりと行われたのか、疑問が残るからだ。

 第三者調査委員会の中込秀樹委員長自身も、「3年くらい前のことなので記憶が曖昧な人もおり、異なった供述から、何が事実かを認定するのはかなり難しかった」と、その難しさを認めた。原因究明の土台にもなる事実確認が十分だったのか、調査結果がきちんと実態を反映しているとは到底言えない。

 また、どの経営レベルにまで問題融資の報告が上がっていたかについても、問題の核心が解明されたとは言い難い。

 担当者からの報告が滞った理由を明らかにできたか追及されると、委員を務めた石綿学弁護士がかろうじて「当時者には記憶はないが、無意識にはできないだろうと判断した」と回答。委員会で使われた資料を比べて半ば定例化していた事後チェックの結果をこれ以上報告する必要はないという「判断をした可能性があるだろう」(石綿委員)との説明がなされた。

 ほかにも、刑事告発に発展しかねない「検査忌避」にあたる可能性のある組織的隠蔽の有無も焦点の1つだった。だが、報告書は「組織的な対応態勢の欠如が過誤報告を招いたといえ、ことさら隠匿したことをうかがわせる事情はみられない」と述べるにとどめた。こちらも、はっきりとした因果関係が打ち出されたわけでは決してなかった。

 こうした曖昧な調査報告であったにもかかわらず、中込委員長は、検査忌避の可能性について「全くないと言い切れる」とした。会見で出された質問に対しても「報告書に書いてある」と何度も繰り返すなどいらだちをあらわにした。

事態の収拾を図るみずほ銀行

 加えて、第三者委員会は問題視された融資で用いられた提携ローンの複雑さをことさら強調。そもそも提携ローンは、家電などの購入代金のために信販会社を通じて顧客に融資する仕組みで、融資金は信販会社などを通じて顧客にわたる。ただ、銀行が融資金そのものを出し、債権も保有する。今回の自動車代金を理由とした融資も、みずほ銀行のほかにオリコ、加盟店、顧客と4者がかかわる比較的込み入った構図だったという。

石綿委員は、「今回の商品というのは4者間の提携だった。(融資の)審査を通過すると、オリコからいったん、立て替え払いをし、数千件、数十億円単位で融資の実行をみずほ銀行に依頼する。融資が実行された段階で銀行と顧客の契約が成立する」などと説明し、融資関係の複雑さを強調。その上で「自行の債権だという意識が希薄だった」ということが、問題融資放置の理由として挙げられた。

 しかし、みずほFGとしては、これで問題を収めようとしている様子がうかがえる。

 佐藤頭取は、追加調査を行うか問い質されて、「今後も調査を続けるのかどうかについては、第三者委員会の調査は期間としては終わりだ。われわれの調査委員会も本件についてこれ以上ヒアリングを続けることは今のところは考えていない」ときっぱりとした口調で答え、実施しない考えを表明。事態を収拾させる方向性が打ち出された。

 現実には、焦点となる課題はまだ残る。その1つは、金融庁が追加の業務改善命令を発出するかどうか。もしあらためて命令が出されるのであれば、事態が再び混迷しかねない。

 混乱を避け、安心できる市場環境をつくり出すためにも、顧客や取引先、広くは国民が十分に納得する調査の実施と、確かな事実認識に基づく業務改善が求められる。

(本誌/宮崎二郎)

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る