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日本商工会議所会頭が三村明夫氏に交代、実力会頭登板でどうなる財界勢力図

ニュースレポート

日本商工会議所の会頭が11月1日に6年ぶりに交代する。岡村正前会頭(東芝相談役)の後を引き継ぐ三村明夫新会頭(新日鉄住金相談役)は意欲満々だ。経団連をリードしたいという意気込みも垣間見え、新会頭の舵取り次第では財界勢力図が変わる可能性もある。

ラガーマンの面目躍如した岡村正日本商工会議所会頭

6年の任期を終え退任する岡村正・日商会頭

6年の任期を終え退任する岡村正・日商会頭

 10月17日午後、31日の任期切れを前に最後の定例会見に臨んだ岡村正会頭は晴々とした表情だった。2007年11月に第18代日商会頭に就任し2期6年の任期中に08年のリーマンショックや、11年の東日本大震災など大きな事象に直面し、自民党から民主党、さらに自民党へと政権も大きく揺れ動いたが、「それなりにやり遂げた」という自負心の表れだろう。

 従業員数人の零細企業から東芝のような大企業まで日商の会員企業の規模は多様だ。北海道から沖縄まで特性のある地方と、東京・大阪など大都市の商工会議所では地域特性も違う。それぞれの会員が置かれた立場で実現を求める政策の中身が180度異なるのだから、全国514の会議所の意見を日商として1本化するのは簡単ではなかった。

 就任当初の岡村氏を待ち受けていたのは、消費税率の引き上げ問題だった。中小零細事業者は税率が変更された分をスムーズに転嫁することが極めて難しいと増税に大反対し、岡村氏の前任だった故・山口信夫会頭は「消費税問題の1本化は時期尚早」として会員企業の意思統一を先延ばしにしていた。

 岡村氏は「徹底した議論をしなければお互いの理解を生み出すことはできない」と号令をかけ、全国でのべ100回以上、消費税に関する説明会を実施した。消費増税に大反対だった会議所が「消費増税は社会保障の財源として不可欠」と方針変換したのは、会頭の仕事を「調整役」と自任し、粘り強く議論を見守った岡村氏の現場主義の成果だ。

 同じ手法で地方の商工会議所を中心に反発が根強かったTPP参加問題もクリア。震災の被災地支援や、20年オリンピック・パラリンピックの東京招致にも力を尽くした。岡村氏は東大の学生時代にラグビー部でフォワード2列目の右ロックを務め、東芝入社後も10年間選手を続けた。腰の低い温厚な外見とは裏腹に、目前の課題クリアに向けた内なる闘志は往年のラガーマンそのものだった。

三村明夫氏の準備は万端、実質的な財界総理へ

トップ就任へ準備万端の三村明夫氏(写真:時事)

トップ就任へ準備万端の三村明夫氏(写真:時事)

 岡村氏の心残りは中小企業の国際展開支援だ。グローバル化時代を生き残るには国内だけでなく果敢に海外に出ていって事業展開をしなくてはならないと、任期中に中国、ベトナム、インドを訪問。現地の官民関係者とビジネス環境の整備で意見を交わした。海外支援のガイドブックは完成したものの、日本企業が文化や習慣の異なる海外でビジネスを成功させるには在外公館なとど連動したキメ細やかで息の長い支援が必要だ。

 現行の中小企業法の範疇に入らない資本金3億~10億円の中堅企業の活性化支援も今後の課題だ。これらの企業は各地方で中核を占める地位にあり、地方の雇用増の鍵を握っている。アベノミクスで企業の経営環境は改善されつつあるが、中小・零細企業への波及はなお時間がかかる。中堅企業を活性化すれば全体の底上げが図れる。岡村氏自身が「道半ば」と語るこれらの課題を引き継ぐのは三村明夫新会頭だ。

 今年2月に岡村会頭の指名を受けてからというもの、三村氏は水面下で着々とトップ就任の準備を進めてきた。新日鉄のスタッフに岡村氏の会見を傍聴させて、会見内容を報告させたり、会議所の担当者を呼んで、当面の政策課題についてのレクチャーを受けたりと、ブルペンでの肩慣らしは十分。安全性が確認された原発の再稼働やTPP参加など「経済3団体が共闘してできるテーマは一緒にやったらいい」と指示を出しているという。

 今年11月中旬に米ワシントンで行われる日米財界人会議にも出席する意向で、早々に日米経済協会から資料を取り寄せているともいう。日米財界人会議の日本側事務局は大手町の経団連会館の中にあり、事務局員の多くは経団連職員を兼ねている。つまり日商次期会頭は経団連のスタッフを自由自在に使っているわけだ。

 日商の前身は1878年に開設された「商法会議所」。東京・馬場先門の日商応接室にはずらりと歴代会頭の顔写真が並んでいるが、初代会頭は日本資本主義の父・渋沢栄一で、戦後に発足した経団連や経済同友会とは比べるべくもない伝統を誇る。

 三村氏はかつて経団連副会長を経験し、一時は経団連会長の有力候補に挙げられていた。奥田碩経団連会長時代に会長OBの今井敬氏が三村氏を後任に押したものの、奥田氏が当時の新日鉄の業績を理由に首を縦に振らなかったという未確認情報もある。

 大手町の敵を馬場先門でというわけでもないだろうが、経団連の地盤沈下が指摘される中、満を持して登板する三村日商会頭が実質的な財界総理の座を狙える逸材であることは確かだ。

(ジャーナリスト/梨元勇俊)

 
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