全国で進む自治体システム標準化を追い風に、北海道発のIT企業・スリーエスが存在感を高めている。官公庁向けシステムで培った業務ノウハウと組織力を武器に、全国案件を札幌から担う体制を構築。地域から日本の社会インフラを支える企業になろうとしている。(雑誌『経済界』2026年4月号より)
諏訪原大作 スリーエスのプロフィール
すわはら・だいさく
札幌から全国の案件をリモートで対応
官公庁向けシステム開発を主軸に成長を続けてきたスリーエスは、北海道を代表するIT企業として確固たる地位を築いてきた。自治体、福祉分野を中心に、全国で進む自治体システム標準化の波を的確に捉え、受注エリアを着実に広げている。
近年の成長を支える最大の要因は、官公庁向けシステムの安定的な需要だ。これまで首都圏自治体を中心に実績を積み上げてきたが、標準化対応が全国規模で本格化する中、関西、中国・四国、九州など遠隔地の案件も札幌からリモートで担う体制を確立。地域を問わず対応できる開発力とマネジメント力が、競争力を高めている。
諏訪原社長は「自治体DXは一過性の制度対応では終わりません。標準化の先にある制度改正対応や運用保守まで責任を持てる企業だけが生き残る。その覚悟で取り組んでいます」と語る。
福祉分野をはじめ、メーカーが手掛けにくい中規模案件に注力し、自治体と直接向き合う姿勢が評価を高めてきた。
2025年には売上高30億円を突破。8年連続の増収・増益を実現。3カ年の中期経営計画で掲げた目標を前倒しで達成した。自治体標準化対応では、福祉系システムを軸に全国から引き合いが相次いでいる。
「北海道で仕事をすることが首都圏と比較して不利になる時代は終わりました。距離や制約を前提に工夫してきた経験こそが、全国案件を支える競争力になっています」と諏訪原社長は強調する。札幌を拠点に全国の自治体を支えるモデルは、地方IT企業の新たな姿を示している。
一方で事業領域の拡張にも余念がない。金融DX分野では外為送金システムの新フォーマット対応を受注し、想定を上回る成果を上げた。さらに防衛・宇宙開発分野にも参入し、25年からは宇宙関連メーカーとの取引を本格化。組込制御事業では、家電開発、車載システム開発を中心に拡大した。さらに生成AIやノーコード・ローコード開発への対応も進め、現場の開発スピードのギアを数段階上げながら、技術基盤の更新を続けている。
人材と組織への投資が成長を支える
成長の根幹を支えるのが人材戦略だ。IT人材不足が深刻化する中、同社は4年連続で5%の給与引き上げを実施。賞与の上乗せや制度改善を進め、首都圏や大手企業に匹敵する水準を目指している。
25年には開発オフィスをJR札幌駅徒歩1分の新拠点「きたらぼ」へ移転。面積は従来の約3倍となり、フリーアドレスなど交流を促す設計を採り入れた。「人材への投資はコストではなく、将来への責任。組織力なくして持続的成長はありません」と諏訪原社長は語る。
採用面では新卒・高専卒を含め26年4月入社人材として15人を迎え入れ、教育投資も強化。グループ研修や外部研修を活用し、入社時期を問わず成長できる環境を整えている。「最も力を注いでいるのは、人材教育への投資と職場環境の改善です」(諏訪原社長)と話す通り、オフィス移転により出社率が高まり、対面コミュニケーションの再構築にも力を入れ、社内イベントの再開など定着率向上策を進めている。
自治体DXを巡る環境は、今後さらに変化のスピードを増していく。制度改正への迅速な対応、クラウド移行の進展、サイバーセキュリティの高度化──自治体に求められる要件は年々複雑さを増している。
そうした中でスリーエスが重視してきたのは、単なる受託開発にとどまらず、運用の現場に寄り添い続ける姿勢だ。導入後の改善や制度対応まで視野に入れた関係構築が、継続的な信頼につながってきた。
諏訪原社長は「目先の売り上げよりも、10年先も頼られる存在であることが重要だ」と語る。短期的な成果を追うのではなく、長期視点で自治体と向き合う。その積み重ねこそが、地方企業でありながら全国案件を任される理由となっている。
組織運営においても、同社は一貫して現場力を重視してきた。グループ連携を生かしつつも、判断のスピードと柔軟性を損なわない体制を徹底。標準化という共通基盤が整う時代だからこそ、最終的な価値を生むのは「人」と「組織」だと考えている。生成AIや新技術の導入も、流行としてではなく、現場負荷を下げ、品質を高めるための手段として選別する。北海道という地域性を背負いながら、全国水準、さらには全国以上の品質を目指す姿勢が、次の成長曲線を描く原動力となっている。
その延長線上にあるのが、26年4月の社名変更だ。「北海道アイエスビー株式会社」への改称は、ブランドの明確化と同時に、営業本部の新設や管理・開発体制の強化を進める節目となる。30年には売上高45億円、営業利益4億円という高い目標を掲げ、「北海道ナンバーワンIT企業」を本気で狙う。
「事業環境が激しく変わる時代だからこそ、組織力が企業価値を決める。北海道で磨いた力を、全国で通用する競争力に変えていきたい」。諏訪原社長の言葉には、地方発IT企業の新たな成長モデルを切り開こうとする覚悟がにじむ。
地方から日本全体のデジタル基盤を支える。その挑戦はまだ途上にあるが、積み重ねてきた実績は確かだ。スリーエスは今、北海道のトップIT企業という枠を越え、全国に必要とされる社会インフラ企業として次の段階に踏み出そうとしている。
この静かな自信こそが、同社最大の競争力と言えるだろう。自治体DXという社会インフラの最前線で、スリーエスは次のIT地図を描こうとしている。
会社概要
| 設立 | 1979年4月 |
|---|---|
| 資本金 | 2,000万円 |
| 売上高 | 30億6,000万円(2025年) |
| 本社 | 北海道札幌市東区 |
| 従業員数 | 130人 |
| 事業内容 | ITシステム・ソフトウェア開発 https://www.sss-i.co.jp |