今年で連載45周年、高橋陽一氏の看板作品『キャプテン翼』はなぜ今も色褪せることなく国内外で支持され、さまざまな取り組みが行われているのか。2016年に設立され、24年に集英社からライツ管理を受け継いだTSUBASAの岩本義弘代表取締役がアクティブに仕掛ける今と、壮大に広がる未来への想いを語る。(雑誌『経済界』2026年7月号より)

岩本義弘 TSUBASAのプロフィール

岩本義弘
TSUBASA代表取締役 岩本義弘
いわもと・よしひろ 1972年7月24日生まれ。東京都出身。TSUBASAの代表取締役として『キャプテン翼』のライツ業務全般を担当。南葛SCでは代表取締役専務兼GMとして事業と強化の責任者を務める。また、サッカー解説者やスポーツジャーナリストとしても活動しており、歴代のサッカー日本代表選手や、大谷翔平選手、ダルビッシュ有投手などへのインタビュー実績がある。

24年から『キャプテン翼』のライツを自社で管理

── まずはTSUBASAがどのような会社なのか教えてください。

岩本 2016年に『サッカーキング』というメディアを運営している会社の代表取締役を退任してTSUBASAを設立しました。この会社で、世界中で愛されている『キャプテン翼』のライツを管理しています。もともとは集英社さんが管理していたのですが、24年に当社が引き受けさせていただくことになりました。

 それとTSUBASAと並行して、20年にキャプテン翼財団を立ち上げました。この組織は25年1月1日付で内閣府から公益財団法人に認定されていまして、キャプテン翼の原作者である高橋陽一先生が長い漫画家人生で描かれてきた原画の保存と利活用を担っています。高橋先生に全原画を財団に寄付いただき、厳重に管理するとともにデジタル化も進めつつ、また、世界中で原画展を開催するなどの活動も今後、積極的に行っていく予定です。その他、子ども向けのサッカー教室や、大人向けの講演会なども実施しています。

── キャプテン翼という巨大IP(知的財産)ともなると、ライツ移行の交渉は大変だったと思います。

岩本 時間はかかりましたが大きな問題などはなかったですし、集英社さんとは今も良好なパートナー関係にあります。キャプテン翼のIPをどのように守り、さらに発展させていくべきかを高橋先生と深く話し合う中で、先生に事業のビジョンについて賛同していただき、そこを出発点に集英社さんと協議を重ねました。

 キャプテン翼は集英社さんにとっても特別な作品で、協議の中では双方、「サッカーファースト」の精神と、作品へのリスペクトを抱き、何が最善かを話し合って当社で管理することに理解を示していただきました。私自身、集英社さんとは25年近いお付き合いがあり、強固な信頼関係があったことも後押しにはなったと思います。

 これまでは高橋先生の個人事務所が権利を持ち、集英社さんが管理し、TSUBASAは主に海外展開の事業を再委託の形で任されていたのですが、今回のライツ移行によって商流が変わりTSUBASAがライツを管理し、案件によっては集英社さんにご協力いただくような形を取っています。ただ厳密にはすべての権利を管理しているわけではなく、例えば18年、23年に放送したアニメは製作委員会方式で、引き続き集英社さんがライツを管理しています。

── 今後のビジョンにおいて、売り上げを伸ばしていくことも視野に入れているのでしょうか。

岩本 入れていますし、それも高橋先生の決断につながった1つの要因です。高橋先生は南葛SCというサッカークラブのオーナーで、私はそこの代表兼GM(ゼネラルマネージャー)も務めています。そのクラブをJリーグに昇格させることを目指していて、そのためにはさらなる強化資金が必要になります。

 高橋先生は贅沢をされるタイプではなく普段の生活もストイックで、すでに多くのお金をクラブに投じています。ですが、さらに上を目指すには多額の資金が継続的にかかってきます。それを補っていくために、IPビジネスを拡大して売り上げを伸ばしていこうと考えています。

TSUBASA
日本各地で『キャプテン翼』の原画展を開催。2025年10月には埼玉県のららぽーと新三郷で行われ、26年6月には東京都の東武百貨店 池袋店で行われる
ⓒ南葛SC

ワールドカップの影響で100件近い話が進行

── TSUBASAでライツを管理することの強みはどのようなところにあるのでしょうか。

岩本 最大のメリットはスピード感です。集英社さんは大きな会社なので、何をするにも段階的なプロセスを踏む必要があります。それが世界的な団体や大手企業との大規模な取り組みになれば、より時間がかかります。でも今の体制では高橋先生とうちで迅速に意思決定できるようになり、もともとの漫画の世界的な人気もあって新しい取り組みも次々とスタートできるようになりました。

── 具体的にどのような取り組みを進めているのでしょうか。

岩本 サッカーのワールドカップが今年開催されることもあり、たくさんの相談が来ていて、今は100件近い話が同時に動いています。その中で特に大きいのはゲームで、近々、2作品を展開する予定です。一つは家庭用ゲーム機のソフトで、もう一つはスマホゲームです。ゲームについては「非独占」の方針で各メーカーからの提案を柔軟に受け入れています。

 企業や団体との取り組みでは、今年のJリーグ百年構想リーグで公式球にキャプテン翼のイラストを採用していただき、プロモーションでも『アオアシ』や『ブルーロック』という他社作品とのコラボで起用していただきました。このコラボも以前の権利体制ではスピード感的に実現のハードルが高かったと思います。

── 高橋さん、岩本さんの今後の目標をお聞かせください。

岩本 大きく3つあります。1つ目は、高橋先生がキャプテン翼という物語の中で、主人公である大空翼がワールドカップで優勝を果たすという悲願を描ききるのをサポートすることです。

 2つ目は、高橋先生も公言していますが、南葛SCをJリーグを代表するクラブにすることです。3月31日に高橋先生と葛飾区に、公式に「スタジアム整備計画等に関する要望書」を提出しました。まだ時間はかかりますが、葛飾区内にスタジアムを作り、そこでJリーグクラブとして戦うことを実現したいです。

 3つ目は、キャプテン翼という漫画、アニメ、グッズなどのすべてを正しい形で世界中に届けたいです。すでに世界中のサッカー選手が知っていますけど、まだ身近にはない地域もありますし、知られていても正しく伝わっていないこともあるので、それを10年、20年かけてでも正しい形で届けていきたいですね。

TSUBASA
高橋陽一氏がオーナーを務める南葛SCは、国内で実質5部リーグにあたる関東サッカーリーグ1部を戦う
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2026年3月31日、高橋陽一氏(右)は葛飾区の青木克德区長を訪問し、「スタジアム整備計画等に関する要望書」を提出した
ⓒ南葛SC