2013年にサービスをスタートした「LINEマンガ」は漫画アプリにおいて国内トップとなる5500万ダウンロードを突破。躍進の背景にはどのような経営戦略があるのか。電子書籍サービス、紙書籍オンライン販売など複数事業を手がけるLINE Digital Frontierの髙橋将峰社長CEOが事業、作品、制作体制の強みを明かす。(雑誌『経済界』2026年7月号より)

髙橋将峰 LINE Digital Frontierのプロフィール

髙橋将峰・LINE Digital Frontier社長CEO
LINE Digital Frontier社長CEO 髙橋将峰
たかはし・まさみね 1974年11月28日生まれ。東京都出身。システムインテグレーター企業から、2006年にヤフーに転職。デジタルコンテンツ事業本部本部長などを経て、19年にイーブックイニシアティブジャパンの社長に就任。22年にLINE Digital Frontierの社長CEOに就任し、24年に両社を統合。

WEBTOONとの出会いが大きな転換期となる

── 「LINEマンガ」は現在、国内の漫画アプリでダウンロード数トップの5500万を突破しています。サービス開始からこれまでどのように成長させてきたのでしょうか。

髙橋 2013年にサービスを開始したのですが、もともとコミュニケーションアプリのLINEが急速に普及する中で、「コミュニケーションの上に成立するサービスは何か」という問いを出発点に、学校で漫画雑誌を回し読みしたり会話の中で話題になったり、といった多くの人の経験から、コミュニケーションと漫画の相性は良いだろうと。それで始めた事業でした。

 当時はガラケーからスマホへの移行期で、アプリ単体で販売まで完結するストア型サービスが少なかったため、先行してスマホに最適化したビジネスを展開できたことは大きかったですね。LINEのネットワークを生かしたスタートダッシュを切ることができました。

── 現在は多くの漫画アプリがありますが、どのようにして競合優位性を生みだしていったのでしょうか。

髙橋 他の電子書店でも同じ作品を扱うので、商品はコモディティ化します。そのため優位性を取るためにオリジナル作品を作ろうと。IP(知的財産)を創出していくことに踏みきりました。15年からオリジナル作品を作り始めたのですが、それから3年後の18年に大きな転換期があり、それがスマホに最適化した縦読みカラー漫画のWEBTOON(ウェブトゥーン)との出会いでした。

 韓国ではすでに人気があり、当社でも新しいフォーマットとしてトライアルを始めました。当初は「縦読みではアクションを表現しにくい」、「コマ割りがないと面白くない」といった否定的な意見もありましたが、18年にリリースした『女神降臨』が大ヒットし、日本の読者にも受け入れられることを確信しました。そこから一気にギアを入れ、多くの作品を輸入したり、制作したりして成長を加速させました。

女神降臨
2018年に連載が開始したWEBTOONの『女神降臨』は韓国で20年に実写ドラマ化され、日本でも25年に実写映画化された
©yaongyi/LDF

── オリジナル作品はどのぐらいまで拡大しているのでしょうか。

髙橋 日本発では、連載中のものが約30タイトル、過去の積み上げを含めるとおよそ300タイトルほど展開しています。また、それとは別に、親会社のWEBTOON Entertainment、グループ会社のNAVER WEBTOONがグローバルに展開している作品もあります。それらを含めて現在、連載中の作品は780タイトルにのぼり、最新話が1日あたり100本以上、公開されています。

── ヒット作の基準や、最近の成功事例についてお聞かせください。

髙橋 ヒット作は、無料の読者数、その継続率、そして最終的な課金の3つを成功の指標としています。そのデータをもとに今は常時、10本ぐらいのビッグヒットがあり、中でもLINEマンガのオリジナル作品である『入学傭兵』は23年に月間販売額1・8億円を記録しました。また、先行配信作品の『神血の救世主〜0・00000001%を引き当て最強へ〜』は24年に1・2億円を突破と、こちらは日本発のIPとして記録的な数字を残しました。

入学傭兵
2021年に連載を開始したLINEマンガオリジナルのWEBTOONアクション作品『入学傭兵』はアニメ化も予定されている
©YC・rak hyun/LDF
神血の救世主
『神血の救世主〜0.00000001%を引き当て最強へ〜』は日本国内での人気に加え、北米でも月間売り上げ2位を記録
©江藤俊司/疾狼/3rd Ie/ナンバーナイン

── ビジネスモデルについてですが、電子書籍のサービスで「雑誌読み放題」のような定額サービスもありますが、漫画アプリでは課金型が一般的なのでしょうか。

髙橋 そうですね。出版・漫画業界における価格設定があるため、電子書籍もストア側で勝手に価格を変更することができません。そのため、サブスクリプションでの定額販売は現状、難しいという背景があります。

 そもそもLINEマンガの連載作品は、基本的に23時間待つと無料で読むことができます。最新話を早く読みたい方が課金するモデルであり、最初に課金をしないと見られない動画配信サービスなどの定額モデルとは入口が異なるのです。

── なるほど。では現在、LINEマンガの連載作品と出版社の作品の売り上げ構成はどのようになっているのでしょうか。

髙橋 ここも明確な数字をお答えできないのですが、読者数で言えばオリジナル作品を含む連載作品の方が圧倒的に多いです。ただ単価では、単行本が1冊500円から1千円弱なので、無料で読み進められる連載作品と比べて課金額が大きくなります。そうした中、単行本と連載作品の行き来もあり、連載をきっかけにアプリを使い始め、毎日訪れる中で単行本を買ったり、逆のパターンもあったり、市場全体の成長という意味でもとても良い連携ができていると思います。

アニメ化は数十本の企画が同時に動いている

── WEBTOONは従来の漫画とはレイアウトが異なりますが、制作フローなども変わってくるのでしょうか。

髙橋 作家さんと編集者の二人三脚で制作するものもありますが、当社では3年ほど前から分業制スタジオでの制作も行っています。企画・脚本、ネーム、背景3D、線画、着彩、仕上げの各工程の専門スタッフが数百人ずつ、工程によっては千人を超える方がエントリーしていまして、そのメンバーでチームを組んで制作するスタイルです。例えば原作者と編集者が企画をまとめ、そこから漫画ができあがるまでをスタジオで受け持つような形ですね。

── 連載作品からアニメ化や映画化も進んでいますね。

髙橋 アニメ化はすでに公開されているもので20作品ほどあり、映画化や実写ドラマ化された作品もあります。加えて現在、アニメ化は数十本の企画が同時に動いています。

 最近、アニメ化されたものでは『クレバテス─魔獣の王と赤子と屍の勇者─』が、放送前後の1カ月で原作の売り上げが約11倍に跳ねあがりました。アニメを見て興味を持った読者がアプリに流入するというサイクルも確立されつつあります。

 また、グッズ展開も段階的に進めています。グッズは在庫管理などのハードルもあり、まずは受注販売からトライしています。2月に3タイトルのグッズを販売したところなのですが、ここまでは想定どおりの売り上げです。当社には「bookfan」という書籍のオンライン販売のサービスがあり、そのシステムを使えばグッズのEC販売もできますので、将来的にはもっと大きな展開ができればと考えています。

クレバテス
『クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-』は2020年に連載が始まり、25年7月に全12話のアニメ第1期が放送され、26年7月から第2期を放送する
©Yuji Iwahara/LDF/クレバテス製作委員会

── ユーザー獲得におけるマーケティングで特に注力している施策はありますか。

髙橋 SNSですね。SNSは読者が積極的に活用するツールで、漫画やWEBTOONととても相性が良いと感じています。それともちろんLINEもいろいろな形で活用しています。

── 短期、中長期、それぞれの目標を聞かせてください。

髙橋 短期的には、国内のアプリマーケットでのナンバーワンを維持することで、中長期的にはオリジナル作品のシェアをさらに拡大し、それぞれの作品でIPビジネスを展開して映像やグッズも含めて世界中で楽しんでもらうことです。

 日本発の作品を世界中でヒットさせ、海外にもファンを拡大していき、ここに載せたいと思ってくれる作家さんが増え、オリジナル作品がどんどん増えていく。このサイクルを大きくしていきたいですね。先行配信の神血の救世主が北米で月間売り上げ2位になるなど着実に日本の作品も人気が出始めているので、大きく伸びていく可能性は十分にあると思います。

── 作家さんを増やすという意味では、LINEマンガ webtoon大賞も作家さんの発掘、拡大につながっていそうです。

髙橋 そうですね。その他にも他社さんと一緒にいくつかのコンテストを実施していますし、「LINEマンガ インディーズ」という作品投稿のプラットフォームもあります。15年から運営しているのですが、ここからもアニメ化された『先輩はおとこのこ』などのビッグヒットが生まれていまして、これからも多くの作家さんが世に出ることを期待しています。

先輩はおとこのこ
作品投稿のプラットフォーム「LINEマンガ インディーズ」からのヒット作『先輩はおとこのこ』は2024年のアニメ化(画像)に続き、25年には映画が公開された
©pom・JOYNET/LINE Digital Frontier・「先輩はおとこのこ」製作委員会