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好調なスタートを切った新生シャープの回復は本物か

ニュースレポート

構造改革と市況好転により、シャープの業績は着実に回復している。しかし、その回復は国内市場への依存度が高く、額面通りに受け取ることは危険だ。手放しで喜べない状況が、最大の懸案事項でもある資本増強にも影響を及ぼしている。 (本誌/村田晋一郎)

構造改革により予測を上回る業績回復

高橋興三・シャープ社長

高橋興三・シャープ社長

 シャープでは6月の株主総会を機に、前社長の奥田隆司氏と前会長の片山幹雄氏がそれぞれ代表権のない会長とフェローに退き、髙橋興三社長による新体制がスタートした。

 前任の奥田体制では、当時の町田勝彦相談役や片山会長の影響力の強さが問題視されていたが、新体制では、そうした経営OBの影響を排除。現役の経営陣だけで経営に当たり、社員間では部門横断的な議論が自発的に進んでおり、髙橋社長はこうした動きに変化の手応えを感じているという。

 新体制の滑り出しはまずます好調で、2013年度第1四半期は、当初予測では売上高5500億円、営業利益は100億円の赤字を見込んでいたが、その予測を上回る結果となった。売上高は前年同期比32・6%増の6079億円、営業利益は30億円。純損失も前年同期の1384億円から179億円に改善している。特に営業利益については、12年度第3四半期から3四半期連続で黒字を確保している。

 これらの好調な業績は、昨年から進めてきた構造改革の成果と市況の好転によるもの。増収については、デジタル情報家電、太陽電池、液晶が牽引した。

 まずデジタル情報家電について、液晶テレビは前年同期に対して販売台数は減少となったものの売上高は増加。販売台数の減少についても米国や欧州における販売が低迷した一方で、日本国内は微減にとどまり底打ち感が見られたという。また、売上高については大型化に伴う単価アップの進展が見られた。携帯電話については、「IGZO液晶」搭載モデルなどの市場投入により、売り上げ、販売台数ともに増加した。

 太陽電池は、国内市場における住宅向けやメガソーラーなどの産業向けが好調。前年同期比2倍の伸長で、今期の売り上げを大きく押し上げた。

 液晶についても、大型液晶の外販が好調に推移したほか、中小型液晶はスマートフォン、タブレット向け需要により販売が伸長した。また、戦略的アライアンス効果により、亀山第2工場の稼働率が計画通りに進捗しているという。

 その一方で、健康・環境部門については海外生産比率が高いため、円安の進展により国内販売の採算悪化があった。

 営業利益の改善は、人件費、減価償却費を中心とした固定費削減効果、たな卸資産や固定資産の圧縮などの構造改革効果によるもの。特に液晶事業の改善が全社の営業利益の改善に大きく寄与した。

国内市場への依存度が高く成長性に疑問

 髙橋社長は、「手を緩めることなく、構造改革の取り組みを加速させ、13年度当期純利益の黒字化に邁進していく」と意気込む。しかし、現在好調な業績を上げている製品分野は、国内市場への貢献度が強いことが気がかりだ。

 シャープに限らず日本の電機メーカー全般に言えることだが、国内市場の成熟化に伴い、これからはグローバル競争でいかに勝ち抜くかが問われている。その点でシャープの目下の回復は国内市場による部分が大きいため、今後の成長という意味では疑問が残る。

 典型的なのは太陽電池で、昨年スタートした固定価格買い取り制度の「官制特需」によるもの。当面は需要増が続く見込みで、太陽電池については通期の業績予想を上方修正している。しかし制度が終われば需要はなくなる。官制特需という意味では、地デジ化による液晶テレビの特需があったが、その需要の先食いがシャープの苦境の一因となっている。

 髙橋社長は「シャープは官制特需の怖さを地デジで一番痛感している会社」だと語る。太陽電池事業についてもパネル販売だけでなく、インバータやバッテリーを含めたエネルギーマネジメント全体で展開していく構えだ。エネルギーマネジメントは中期計画の新規事業に含まれており、髙橋社長は「中長期的にいける」と見込んでいる。しかし世界の太陽電池市場でシャープの存在感が低下している現状では、成長性に疑問が残る。官制特需の怖さを痛感しているならば、余計に仕掛けが必要なのではないだろうか。

 携帯電話については、今後全機種に「IGZO液晶」を搭載し、国内シェアの奪還を狙う方針。しかし厳しい事業環境を考慮し、通期の業績予想を下方修正している状況だ。

 現在の好調の背景にある製品の事業環境を楽観的にとらえることはできない。こうした見通しは、シャープ最大の懸案事項である資金増強にも影響を及ぼしている。シャープの自己資本比率は現在6%にまで落ちており、財政健全化に向けて資本増強が喫緊の課題となっている。当面の問題として、9月には約2千億円の転換社債の償還が期限を迎える。また、会計基準の変更によって、今年度末に企業年金の積み立て不足約1200億円を負債計上する予定。財務状況が悪化する懸念から、さらなる資本増強が求められている。

 このため、シャープでは9月をめどに約1千億円の資金調達を進めている。そのうち、300億円弱を第三者割当増資で、残りを公募増資で対応する見込み。第三者割当増資については、デンソーやマキタ、LIXILグループと交渉中で、これらの企業とは、マキタのロボット制御技術をはじめ、シャープが新規事業として開発を進めている分野で既に業務提携関係にあり、さらなる関係強化のために出資を打診している最中だ。

 一方で公募増資については、延期が懸念されている。

 「そもそも公募で集まるわけがない」という業界関係者の手厳しい声もある。公募となると、投資家を納得させるだけの成長戦略を描く必要がある。公募の遅れは、シャープの成長性が疑問視されている証とも言える。

 シャープの業績は確かに回復した。しかし国内市場に頼った回復では今後の成長は厳しいのではないだろうか。

 髙橋社長は海外事業部門の出身だけに、今後のグローバル競争で真価が問われる。

 
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