EVよりも技術的な差が顕著に
最近になって「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池車(FCV)の開発競争が話題に上ることが増えた。トヨタ自動車は独BMWと、日産・ルノー連合は独ダイムラーや米フォードとFCVの共同開発を進行中。これまで独自路線を貫いてきた本田技研工業もこの7月に米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を発表するなど、各社の〝本気モード〟が伝わってくる。
FCVがにわかに注目されるようになった背景には、同じく次世代エコカーとして期待されていた電気自動車(EV)の不振がある。
大衆向けEVとして先陣を切って市場投入された日産のEV「リーフ」は当初の販売目標から遠く及ばず、昨年末までの累計販売台数は5万台以下。やはり当初から懸念されていたように、EVの1回充電当たりの航続距離の短さ、充電インフラの不足、そしてこれら条件を考慮した時に価格面で今ひとつ値頃感を出せなかった点などがネックとなっているようだ。
EVの販売が本国で軌道に乗り出した米テスラモーターズのような例もあるが、こちらはどちらかといえば一部のマニアックな富裕層向け。業界関係者の間では、EV限界説もささやかれるようになった。
では、FCVの状況はどうかと言うと、普及に向けた車両のコストダウンや燃料補給用の水素ステーションをはじめとするインフラ整備など、EV以上にやるべきことが山積している。それにもかかわらず注目されているのは、冒頭述べたようにEVと違い世界の主要メーカーが開発促進に向けた体制をしっかり整えていること、また、2015年から20年にかけて、各社とも量産化に向けた取り組みを加速させることから、予想以上に市場拡大が早いのではないかとの期待もあるからだ。
そんな中、勝ち残るのはどこか。しばしば聞かれるのは、部品さえ揃えば、極端な話誰でも完成車が作れるEVと異なり、FCVの場合は技術的な差別化がしやすいということ。日本メーカーが得意とするすり合わせの技術なども生きるという。そうした意味で、FCVも広い意味でのハイブリッドシステムの一種ととらえるトヨタは「これまでハイブリッド車をどこよりも多く売ってきた経験と蓄積が生かせる」(同社関係者)と自信を見せる。
同社は航続距離に不安のあるEVからは一定の距離を置き、今のところは、この読みが当たっている格好だ。FCVがいきなりエコカーの主役に躍り出ることはないだろうが、開発リソースの的確な配分という点でも技術動向の的確な予想は今後も重要になる。 (本誌/吉田浩)
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