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同性愛者が勝利の最高裁判断 連邦の手当や税控除認め

新生オバマのアメリカは今 津山恵子

DOMA違憲判断は軍関係の同性愛者に大きな意味

同性愛者のパレードで、DOMAの無効を示すプラカードが見られた(写真:津山恵子)

同性愛者のパレードで、DOMAの無効を示すプラカードが見られた(写真:津山恵子)

 6月30日、恒例のニューヨークの同性愛者のパレードを取材した。取材を始めて7年目になるが、地元政治家の誰がパレードに参加するのか、企業はどこが派手な山車を出すのか、など毎年変化があり、興味は尽きない。

 パレードに先立つ27日、「結婚防衛法(DOMA)」を違憲とする連邦最高裁の判断が、言い渡された。DOMAは、婚姻を男女の間だけに定め、同性婚を禁じた法だが、最高裁の違憲判断は、同性愛者の結婚という権利を擁護する画期的な判断で驚いた。

 DOMAが違憲で、人権侵害だとする訴えを起こしていたのは、ニューヨークに住むエディス・ウィンザーさん(84歳)だ。2009年に伴侶だったテア・スパイヤーさんが亡くなった際、残された財産に対し、36万3千㌦の相続税の支払いを余儀なくされた。

 2人は1965年からカップルで、男女間の結婚なら支払わなくてもいい相続税を、ウィンザーさんが支払わなくてはならなかったのは、不当だという訴えだ。下級審で2年半争った後、今年最高裁の判断をあおぐことになった。

 最高裁判断を聞いた同性愛者や支持者が歓喜に浸る中、ウィンザーさんが会見し、こう語った。

 「私たちは、法廷に対し望んだものについて、すべて勝訴した。判断は、不名誉の終わりを告げるものであり、新たなスタートでもあります。(同性愛者は)異なるレベルの尊厳を与えられたのです」

 しかし、これで最高裁が、同性婚を合憲と判断したわけではない。全米で同性婚を州法で認めているのは、ニューヨーク州をはじめ12州と首都ワシントンだけ。32州で同性婚を違法とする法律が存在している。これらの州が、同性婚を許さない法律の「合憲」を争う訴えを起こす可能性もある。全米に住む同性愛者が、カナダや同性婚を認めている州に行かずに、結婚式を挙げられるようになるのは、まだ先の話だ。

 それでは、今回、同性愛者にとって「勝利」と言える点は何か。

 今回の判断は、1千項目にも上る連邦レベルの税金控除や社会保障手当などが、同性愛者のカップルに認められることになる。例えば、ウィンザーさんが支払った高額の相続税は還付される。米紙ニューヨーク・タイムズによると、同性結婚が違法となっている州に住んでいても、連邦レベルの手当を申請できるという。

 特に、国防総省(ペンタゴン)や軍関係の同性愛者には、大きな意味があるという。たとえ伴侶が負傷、あるいは死亡した場合でも、同性愛者の伴侶は遺族手当などを受けられなかったが、今後は受給が可能になる。

 こうした大幅な権利が認められた結果、ウィンザーさんは「ヒーロー」になった。

 彼女は30日、ニューヨークの同性愛者パレードに、山車に乗って参加した。彼女の顔写真を刷った団扇も沿道に配られ、彼女の山車が通ると、市民が大歓声を上げ、まさに「時の人」だ。

賛否両論あるものの常に「変化」に向かって進む米国

 一方で、同性愛者パレードも、最高裁判断に同調するかのような変化をみせている。

 パレードは、ニューヨークで69年、初めて同性愛者の権利を主張する運動が起きたのを記念して、6月最後の日曜日に毎年、全米各地で開かれる。

 ニューヨークのパレードでは、以前の参加者の服装は、つけまつげにミニスカートというドラッグクイーン、あるいは派手なカーニバル風の衣装や、かなり挑発的な下着姿が圧倒的に多かった。つまり、いかにも同性愛者が着ると世間に思われる格好をして、逆に権利を主張しているところがあった。

 しかし最近は、参加するグループや企業ごとにおそろいのTシャツを着るなど、かなりのドレスダウンだ。むしろ、沿道の若い男女のほうが、「連帯」を表すレインボーカラーの派手なアクセサリーや下着を着て、声援を送っている。

 こうした変化を見ていると、少なくともニューヨークでは、同性愛者のコミュニティーが、市民生活にも定着し始めていることがよく分かる。

 同性愛者が、家族や友人、同僚にいるのは当たり前だ。弁護士や金融マン、ブロードウエーの有名プロデューサーや俳優など、高所得でニューヨークのオピニオンリーダーたちにも多い。彼らが常に、ドラッグクイーンかクラブのダンサーかというような格好をしているわけがない。

 また、企業や各種団体のパレード参加も、年々増えている。清涼飲料水や金融機関、ホテル、航空会社などが、同性愛者コミュニティーを支援することで、新たなビジネスチャンスを探っているからだ。

 同性婚についての世論は相変わらず、賛否両論に分かれるだろう。しかし、米国は常に「変化」に向かって進んでいる。

 

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