経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

常に経済環境の一歩先を読む その目が持続的な成長を可能にする–パワーエッジ

2020注目企業38

 常にロジカルな戦略で事業を発展させてきたパワーエッジの塩原代表には次代を読む戦略眼が備わっている。今、見据えているのは、将来の景気変動後のビジネスモデルの転換だ。(『経済界』2020年4月号より転載) 

塩原正也氏

パワーエッジ代表取締役 塩原正也(しおはら・まさなり)

戦略的なM&Aによりグループ全体の体力を高める

パッケージソフトウエア開発とSES(システムエンジニアリングサービス)事業の2本柱で着実に成長を続けるパワーエッジの塩原正也代表は、「1年前と同じことをしていては持続的な成長は成し遂げられません」と自信あふれる笑顔でそう切り出した。同社のこの1年間のチャレンジ、それはM&Aの加速だという。特にⅠT業界では、会社を拡大するための方法論の一つ、「新卒社員を採用し教育し育てる」は、この先は通用しなくなると考えている。

「既にマーケットを持ち、優れた人材と商材も揃っている企業を買収しグループ化することが、唯一成長するための方法だと考えています」

塩原代表はこの1年間で5件のM&Aを成立させた。うち4社はパッケージの開発販売を手掛ける会社だ。電子医療カルテ、牛乳宅配、歯科技工士向けなどニッチな分野の専業ソフトで、シェアも高く優良な顧客を抱えている。塩原代表自身がパワーエッジ創業前からパッケージ開発に長らく携わってきたため、開発会社の根本的な課題を見抜いていたのだ。

「パッケージは1度完成すると、技術面では保守くらいしか必要なくなるため、技術者が減ります。するとバージョンアップや新規商品開発ができない会社になる傾向があり、事業の成長が止まってしまうのです」

パッケージが抱える課題とは別に、中小企業には事業承継の難しさもあり、創業社長の高齢を理由に事業承継先を探すところも多い。パワーエッジは自社で4つのパッケージブランドを抱えており、知見の蓄積があるだけでなく、SESを手掛けているために技術者が多く、最新技術もメンテナンスされている。これを買収した企業に注入することで、各社の既存顧客に対し、新たな商品を提案することが可能となる。

「今回買収した1社はウェブサイト制作部門も保有しています。これまでお客さまから、ウェブサイトのリニューアルのご相談を受けても対応できませんでしたが、それがグループ内で完結できるようになります。また、買収した各社はお客さまがかぶっていません。それぞれのニーズをくみ取り、グループ内で対応を補完し合えると考えています」

各社の社長はすべて塩原代表が兼務する。それぞれ企業文化も異なるのでパワーエッジ流に染め上げることは考えていないという。塩原代表がハブとなり、お客さまの課題を共有しソリューションを提供する。緩やかなコラボレーションが生み出す成果に大きな期待を寄せている。

景気変動に左右されない企業体質を実現させる

グループの拡大にはもう一つの狙いがある。

「右肩上がりの景気が永続することはありません。日本では技術者が不足していますが、リーマンショック直後には多くの技術者が職を追われた事実を忘れてはなりません。再び同じようなことが起きたとき、職を失った技術者の受け皿になることも考えています」

パッケージを数多く保有していれば、保守、バージョンアップ、新商品の開発にと、技術者の力を活用する場面を創出できる。

「右肩上がりがいつか終えんを迎えるときが来るように、景気の底も必ず終わりがあります。そのときに優秀な技術者を抱えていることは大きなアドバンテージになります」

景気の変動は業種や業態においても、その時々の浮き沈みがある。多くのシステムインテグレーターが、金融が活況のときは金融に、ゲーム業界の景気がよければゲームにとトレンドに一極集中しがちだが、同社は一線を画している。常に全方位を向き、技術者にしてもサポートにしても、たとえニーズの少ない業種でもクローズすることはない。そのため、業種によるトレンドの変化が訪れても柔軟に対応できるという。

塩原正也氏

塩原正也氏

「当社は、売り上げ上位のお客さまが毎年変動するという特異な体質なんです。特定のお客さまだけに集中せずに、常に幅広いお客さまとお取引させていただく。これも何があってもビジネスを持続するためのリスクヘッジの一つです」

企業買収を成功させると、次々と新しい案件が持ち込まれる。塩原代表は、優れたパッケージを持ち、財務体質が強固な企業があれば、さらなるM&Aも検討の余地はあると断った上で、次のように続けた。

「景気の変動が近いうちに訪れるのではないか、と考えています。当面は、グループ全体のお客さまに対し、グループのリソースを提供することで業績を向上させることに注力していきます。筋肉質な企業グループとなり、いざというときに備える。そして景気が回復基調になったら、どこよりも早くジャンプしてみせます」

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会社概要
設立 2000年10月
資本金 5,700万円
売上高 17億8,415万円
所在地 東京都豊島区
従業員数 181人
事業内容 パッケージソフト開発販売、システム開発、
ネットワークソリューション、ITサポート、スマートフォンアプリ開発
http://www.poweredge.co.jp/
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