連載 介護・福祉業界の異端児 藤田英明の福祉再編(第4回)
私が運営するアニスピホールディングスでは、保護犬や保護猫と一緒に暮らせるペット共生型の障がい者グループホームを全国に展開しています。オフィスでは、保護犬、保護猫を飼っており、社員がペットを連れて出社してもOKにしています。
小さい頃の私は、捨て犬、捨て猫を拾ってきては、ごはんをあげていました。しかし、個人で世話をするには限界があります。
捨てられた犬猫は、飼う人がいないと殺処分となります。日本での殺処分の頭数は減少してきていますが、猫の殺処分はまだ多いのが現状です。
もう飼いたくなくなったら捨ててしまう。そんな人がいることで殺処分される動物たち。実験に使われ、痛くて苦しい思いをする動物たち。そんな状況を変えるためにも、永続的な動物保護システムをつくる必要があります。
動物保護というと、NPO団体がまっさきに思い浮かびますが、倒産のリスクがないわけではありません。寄付で成り立っているため、景気が悪くなると、寄付も集まりづらくなり、設備の維持や保護できる動物の数に限界が出てしまいます。
また、保護猫を集めた猫カフェのような飲食店では、コロナ禍で閉店を余儀なくされている状況です。
そこで、多数の犬猫を保護できて、かつ破綻のリスクが少ない分野として、注目されているのが福祉ビジネスです。理由は、福祉業界の倒産リスクは、0.005%と低いのが特徴だからです。
当社のペット共生型の障がい者グループホーム「わおん」「にゃおん」は、全国で861拠点を突破(2022年3月1日現在)しました。施設では犬と猫の両方を飼っているところもあります。施設の増加とともに、受け入れられる保護犬、保護猫の数も増えていくでしょう。
高齢者の介護施設も同様で、ペットと暮らすことは可能です。最近はその点をアピールする施設も増えてきました。
障がい者施設と介護施設は全国に44万件あります。もし、これらの施設が保護犬、保護猫を受け入れられるようになれば、殺処分される動物を大幅に減らすことができます。
また、動物を飼い、一緒に暮らすことは、人間にさまざまな効果をもたらします。
まずは精神的に安定するアニマルセラピー効果。そして、これまでどうしても受け身な態度で毎日の生活を続けていかなければならなかった障がい者の人たちにとって、自分より弱い存在の動物を育てることで、責任感を持つようになり、積極的な態度をとるようになります。閉じこもりがちだった人も、犬の散歩に出かけることで、犬を飼っている人との交流が増えたり、運動不足が解消できたりと、よいことづくめなのです。
実際、「犬と暮らしたい」「猫と暮らしたい」と希望される障がい者の方は多く、弊社の「わおん」「にゃおん」への問い合わせは後を絶ちません。
福祉業界という法人で保護犬、保護猫を受け入れることは、動物愛護の問題を解決する方法となり、それがビジネスチャンスにもつながっていくでしょう。
ふじた・ひであき──1975年生まれ、東京都出身。明治学院大学社会学部社会福祉学科卒業。社会福祉施設で多数の現場を経験し起業。小規模デイサービス「茶話本舗」をフランチャイズ化するなど、「論語と算盤で業界にイノベーション」を掲げた経営を実践し、業界の異端児として注目を集める。現在、ペット共生型障がい者グループホームを全国861拠点運営するアニスピホールディングス代表取締役CEO。全国障害福祉事業者連盟理事長。