連載 第5回(雑誌『経済界』2022年7月号より)
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藤田英明の福祉再編
世界中でSDGsが推進されていくなか、企業は利益の追求だけでなく、社会貢献性も求められています。「仕事で社会貢献がしたい」という若者も多く、採用面でも企業の「ソーシャルインパクト」が重視されてきています。
当社、アニスピホールディングスは、障がい者のグループホームを運営する福祉事業を展開しているので、事業自体が社会貢献と結び付いています。
しかし、一般企業においては、どうすれば社会貢献を行えるのか、という課題が今後は増えていくことでしょう。
昨年、従業員数が43・5人以上の企業を対象に、障がい者雇用の法定雇用率が2・2%から2・3%に引き上げられました。さらに毎年0・1%ずつ引き上げることが決まっています。
労働者が100人を超える企業で、障がい者雇用率が法定雇用率に満たない場合は、不足1人当たり月額5万円が企業から徴収され、企業名が公表されるというペナルティもあります。
つまり、法定雇用の面でも、ソーシャルインパクトの一環としても、障がい者の雇用を意識せざるを得ない時代がきているといえます。
当社にも「障がい者を雇用したいが、どうすればいいか」という相談がさまざまな企業から寄せられています。
そんな相談に対して私が提案するのは、障がい者のために新たに事業をつくるのではなく、業務全体から一部を切り出し、その分野を障がい者に任せる方法です。
たとえば、障がい者のなかには資料請求メールの仕分けなど、細かい作業を得意とする人も多いので、業務の一部として任せるのです。
また、障がい者と一緒に働く従業員たちの受け入れ態勢も準備しなければなりません。
障がいの特性によって、どういった業務が得意なのか、どういったトラブルが想定されるのか? 事前に研修を行い、受け入れる側の理解を深めればスムーズに進むことができます。
当社の場合は「東京都認証ソーシャルファーム」として、障がい者、引きこもり経験者、ひとり親で子育てをしている方、受刑者など、就労が困難な人を全従業員の20%以上雇用しています。そして、出張買取・販売業務を任せています。利益も出ているため、ソーシャルインパクトは大きいといえるでしょう。
これからの日本は、人口の減少、労働力の減少が進み、人材の確保が難しくなります。
人手不足を解消するには、人材を使い捨てにするのではなく、一人一人の能力に合った仕事をしてもらい、得意分野で活躍してもらうという考え方が重要になってきます。
AIが代わりに行うようになる仕事もありますが、ファイルの整理やデータ入力といった、人が行う細かな作業は今後もなくならないでしょう。
障がい者のグループホームを運営している当社なら、雇用ノウハウの提供や、人材を紹介することも可能です。多くの企業に、仕事を求めている障がい者を上手に雇用してもらい、ソーシャルインパクトの最大化につなげていただければと思っています。