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社会問題の解決に役立つ事業を目指す ユニファイド・サービス 宇陀栄次

ユニファイド・サービス社長 宇陀栄次

電力小売事業へのクラウドサービス、資源エネルギー庁への再生可能エネルギー支援システム、SNS上で正確な情報を届ける検索エンジン(Yext)の3つの事業を中心に展開するユニファイド・サービス。官民連携で社会的課題の解決に挑戦している。文=垣内栄 写真=西畑孝則(雑誌『経済界』2022年12月号より)

ユニファイド・サービス社長 宇陀栄次

ユニファイド・サービス社長 宇陀栄次 うだ・えいじ

国のシステム変更にクラウドで柔軟に対応

 「米セールスフォース・ドットコム、東京電力、トランスコスモス、ゆうちょ銀行子会社のJPインベストメントからの出資も受け、会社の信用も高くなりました」と語る宇陀栄次社長。

 IBM社長補佐や製品事業部長、ソフトバンク・コマース社長という経歴を持ち、2004年に米セールスフォースの上席副社長と日本法人の代表取締役に就任した。

 現在のユニファイド・サービスは、創業者として03年に同時に設立していた。16年にセールスフォースを退任してからユニファイド・サービス会長として帰任し、本格的に事業に取り組み、電力小売事業者向けのクラウドサービス事業(電力CIS)や資源エネルギー庁からのFIT(再生可能エネルギー固定買取制度システム)の委託を受けている。

 電力CISは、申し込み受付から料金計算、請求、収納代行連携まで、顧客情報の一元的な管理を実現し、大手企業から中小企業まで30社以上で利用されている。

 電力小売の自由化によって、消費者は電力会社が選べるようになったが、最近の電気料金の高騰で市場は様変わりした。これに対応するために市場価格連動型の料金設定やデマンド・レスポンスなどのサービスも素早く提供した。

 EV化やカーボンニュートラルの政策なども加わり、電力市場が激変する中で、大手電力会社にもサービスを提供するようになってきた。市場の変化に迅速に対応するシステムをクラウドで柔軟に実現し、コスト削減も可能になると提案している。

 資源エネルギー庁から「FITの管理システム開発・運用等業務」の委託を受けた。国内350万の再エネ発電事業所の情報管理を行い、再生可能エネルギーの拡大支援事業にも力を入れている。さらに、今年4月から始まったFIP(市場価格にプレミアムとして補助金が上乗せされる)制度にも対応している。

 「国のシステムは、市場の変化に応じてどんどん制度変更が入るものなので、柔軟にスピーディに対応することが求められます。一般競争入札で大手企業との競争に勝ってご採用いただいた」と宇陀氏は語る。

EV充電を郵便局で行えるインフラ構築を支援

 「最先端のクラウドやIT技術を活用して、社会問題を解決すること」を理念とする同社は、EV(電気自動車)普及のためのインフラ整備も企画・調整している。

 EVの販売が始まったものの、「充電できる場所が少なく、長い走行が不安」という人も多い。

 そこで同社は、日本郵政と東京電力との提携を進め、全国隅々にある郵便局でEV充電ができる仕組みの提案を行った。既に郵便集配用EVで実証実験も行っており、CO排出量の大きな削減が見込める。

 「EVの普及といっても、電気をつくるために化石燃料を使っていたら意味がないという議論もあります。再生可能エネルギーで充電できれば、ゼロカーボンになる。当面は全てを再エネで賄うことは不可能であり、消費者が適正な価格で電気を利用するには、原子力や火力も含めたバランスが大切。今後は太陽光、水力、風力、バイオマスなども含む再生可能エネルギーの比率の向上が計画されている。微力ながら日本がカーボンニュートラル最先端の国になることを目指していけばいいと思います」

 企業経営の上でも再エネが重要なテーマとなる時代だ。

 「気候変動対策(RE100)を実現した企業への莫大な投資が加速し、マイクロソフトやアップルなど世界的企業も時価総額が劇的に上昇した。今後は日本の企業も環境対策に積極的なアクションが求められています。弊社もカーボンニュートラルに向けた社会インフラの構築を目指し、社会の発展に貢献したいと考えています」

 「再エネ100宣言 RE Action」協議会へ参画し、使用する電力の100%再生可能エネルギー化を達成している。

フェイクニュースを減らし正しい情報を得るサービスも

 同社では、デジタルマーケティング事業にも力を入れている。

 宇陀社長はアメリカのIT企業・Yext社の日本法人会長でもあり、同社のサービスを活用して企業のマーケティングを支援している。

 「例えばSNSで広がるフェイクニュースや誹謗中傷は重大な問題となっており、自殺といった事態を引き起こすこともあり、企業イメージに深刻なダメージを与えることもある。正しい情報を伝えるためには、消費者が求める情報を企業や省庁のホームページで得られる仕組みが必要です。Yext社の『Search』というサイト内AI検索エンジンを使ったシステムを大手企業に採用いただいています」

 同社は復興庁からの委託で、福島の放射線量の検索で正しい情報が米国のGoogleや中国の百度などにも配信されるサービスを構築し、風評被害の解決をサポートした実績がある。

 「インダストリークラウドのリーディングカンパニーとして、今後も社会に貢献できるサービスを考えていきます。またクラウド、再生可能エネルギー、デジタルマーケティング事業がそれぞれ結び付くことで、スピーディに新たなサービスが提供できるようになるでしょう」 

会社概要
設  立 2004年4月
資 本 金 5億円
売 上 高 20億円
本  社 東京都港区
従業員数 90人
事業内容 インダストリーごとに特化したクラウド事業:大手電力会社ならびに電力小売事業者向けCRM/料金計算関連、資源エネルギー庁から委託事業関連、EV向け充電設備関連、デジタルマーケティング関連、上記に付随するコンサルティングおよび運用サービス
https://unisrv.jp/