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DX本格化の時代に北海道から存在感を放つ スリーエス 諏訪原大作

スリーエス 諏訪原大作

官公庁向けシステムやSI事業で多くの実績を持ち、DX、AI、5G対応などでも高い技術力を示すスリーエス。アイ・エス・ビーグループ内の連携を生かしながら、独自に直接契約の顧客も開拓し、売上高は20億円を突破。50億円達成というさらなる目標に向けて歩み続けている。(雑誌『経済界』「新時代を切り拓く北海道特集」2023年2月号より)

スリーエス 諏訪原大作
スリーエス 諏訪原大作(すわはらだいさく)

デジタル化の波に乗りコロナ禍でも着実に成長

 新型コロナウイルス感染拡大の中でも着実に成長を遂げているスリーエス。社長の諏訪原大作氏は「社長になってから6年間、増収増益を続けることができ、2021年度には売上高20億円超えを達成しました。来期は、当社が属するアイ・エス・ビーグループの中期3カ年経営計画の最終年となります。この2年間は丸々コロナ禍の中にありましたが、業界的にはDXの加速や非接触サービスの需要増といったチャンスの方が大きかった印象です」と振り返る。

 デジタル庁の号令により、今年度から始まった自治体情報システムの標準化。官公庁向けシステムを主力分野とする同社では、メーカー各社の傘下の業務だけではなく、各自治体からの直接契約も着実に獲得している。

 近年は、AIを使った先端分野の開発も実績が増えてきたという。各メーカーとの共同開発だけでなく、スマート農業、漁業資源に関する調査など、一次産業と結びついた産学連携での企画開発のニーズがあり、そこに新技術が生まれる可能性が眠っているのも北海道の特徴だ。

 「北海道大学・大学院や、学内外のベンチャー企業などとの産学連携での研究開発には、北海道を盛り上げたいという気持ちで積極的に取り組んでいます」と諏訪原氏も前向きな姿勢を見せる。

 こうした新たな挑戦を進める一方で、既存顧客へのSI事業も「将来に向けて、なくならずに残っていくもの」として重視する。技術力を高め、近年は金融系の実績を伸ばすなど幅広いニーズに対応している。

 諏訪原氏が今後、戦略的に取り組んでいきたいと挙げる事業がITコンサルティングだ。

 「多くのお客さまにとっては、DXといっても何をすればいいのかまだまだわからない状態ではないかと思います。システムを作っても、実際に使うお客さまが理解できなければ宝の持ち腐れです。お客さまが抱える課題を根本的なところから調査し、システム導入後も保守コンサルティングをしていく必要があります。特に道内の中小企業にはニーズがあると見込んでいます」

 同社では現在、コンサルティング会社とチームを組んで業務を進めているが、いずれは内部にコンサルティング事業部門の立ち上げを目指すという。

IT人材獲得競争に勝ち抜いていくために

スリーエス 売上
スリーエス 売上

 デジタル庁の施策による〝IT特需〟の中、業界では人材の不足が顕在化している。成長を続ける同社にとっても、人材確保は大きな課題だ。

 「IT業界はなんといっても人が一番で、技術者がいないと仕事ができないので、次の3年間の重点施策はいかに社員を増やすかになります。現在はリモートワークが普及し、全国どこに住んでいても違う地域の仕事ができる世の中になりました。それは採用において、首都圏の企業と比較される時代を迎えたということでもあります」と諏訪原社長は危機感を強めている。報酬体系の見直しなど必要な対策は進めつつも、「資金力で大企業に対抗するのは厳しい。しかし当社には、官公庁システムからAIなど先端の業務まで幅広い分野において企画、システム開発から保守・運用まで、さまざまな業務を経験できるという強みがあります」と、同社ならでは、北海道ならではの仕事の魅力をアピールし、若手人材獲得を進める。

 さらに、今年度からはグループ会社に研修を委託することで、これまでよりも費用や人的コストを抑えつつ、充実した教育体制を実現した。新人教育だけでなく、中途採用者への研修システムも作り上げ、獲得した人材を着実に戦力として育て上げている。

 諏訪原氏は再雇用人材の活用にも目を向けている。「定年を迎えUターンを希望する人材もいると思います。そういった方々が北海道で働き続けられるような仕事も確保していきたいと思っています」。

 売上高50億円達成、そして「北海道ナンバーワンのIT企業」へ。その大きな目標に向けて、同社は総合力を高め、前進を続ける。 

会社概要
設立   1979年4月
資本金  2,000万円
売上高  20億400万円(2021年)
本社   北海道札幌市東区
従業員数 131人
事業内容 ITシステム、ソフトウエア開発
https://www.sss-i.co.jp/