経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

最上級のこだわりは、やがてブランドに国産キャビアを推進する夢現力と試行力――板坂直樹(CAVIC代表取締役社長)

ワシントン条約で取引が規制されて以来、日本でもキャビアの生産事業者が増えてきた。その中でクチコミで業績を伸ばし、さらに東京・銀座にキャビア専門のバーをオープンさせるなど、業界が注視する「CAVIC」の事業背景とこだわりを探ってみた。

こだわりの生キャビアを銀座の街の上質の空間で

株式会社CAVIC(キャビック) 代表取締役社長 板坂直樹 (いたさか・なおき)

株式会社CAVIC(キャビック)
代表取締役社長
板坂 直樹 (いたさか・なおき)

店内の中心に据えられたオルゴール。銀座で国産キャビアを提供するキャビアバー「ディ・セットゥ・ドゥグレ」の象徴でもあり、店舗のコンセプトにもつながるオルゴールである。そのアンティークオルゴールをはじめ、店内の調度品の一つ一つがオーナーの板坂社長の熱い思いで、こだわり、選び抜かれ、集められたものばかり。

「ご来店されたお客さまが映画の中のワンシーンにいるような感覚に浸っていただきながら、私たちの最上級の生キャビアを、美味しいお酒とともに召し上がっていただきたい。そんな思いと私自身のこだわりがこの店にはつまっています」

板坂社長が自ら生キャビアの生産・販売に取り組んだのは、2013年。その年の5月に香川県東かがわ市にある廃校となった中学校のプールで、チョウザメの養殖をスタートした。

「香川県で内装仕上工事業を営む会社として四十数年。大協建工の二代目として会社を引き継ぎ、社長となって9年目の時でした。建築業だけではなく、新たな事業の柱を考えていきたいと思っていた時に、廃校となった自分が通っていた地元の中学校の施設や土地を生かした事業ができないかという話が持ち上がりました。その時に思い付いたのがプールや体育館などの学校の施設の活用と良質な地下水による淡水魚の養殖でした。養殖する魚は、カジュアルレストランを経営していた経験からキャビアのチョウザメというのがひらめきました」

板坂社長の地元でもある香川県の旧引田町は、ハマチの養殖発祥の地。幼い頃からの知り合いで漁師仲間も大勢いる。魚の扱いには不安はなかった。

「ワシントン条約でカスピ海のチョウザメの取引が規制され、国内外でキャビアの価格が一気に上昇。そんな時に手を挙げた。商機は一気に拡大しました」

キャビアは輸入物が中心で、それゆえに塩による保存加工がなされ輸送される。生のキャビアはデリケートなものだけに、生産地近郊以外では食べることが難しい食材でもある。

「一般的な輸入キャビアは長時間の輸送のために塩分濃度を高めており、塩辛さが強く、本来の味を知ることができない。そこでキャビアを加熱処理せず生キャビアとして、スプーンですくって召し上がっていただけるような本来の美味しさを味わえる製法に挑み、同時にきちんとお客さまの元に届くように物流システムも構築。この仕組みで提供するキャビアがお客さまにも大好評。ディ・セットゥ・ドゥグレを作ったのもお客さまに直接、生キャビアの魅力をお伝えするのが大きな目的でした」

社員全員とともに見る事業の夢と将来に続く道

キャビア本来の風味と味にこだわった低温殺菌によるCAVICの生キャビア

キャビア本来の風味と味にこだわった低温殺菌によるCAVICの生キャビア

本業の内装工事業の会社の社員たちも、CAVICの事業展開に興味津々。チョウザメの養殖のほかにも多角的に事業を展開する板坂社長だが、それらは大協建工グループの事業の一端であり、本業を支えてくれた従業員全員の成果だと強調する。

「キャビアの販売も店も、本業が頑張ってくれているから、慌てず成果を待ってやれる。本業を支えてくれる社員や職人たちにも、『みんなが頑張ってくれた分の資金で進めている事業だから、みんなの持ちもんやで』と言っています。だからみんな気になってしかたがない。それがまた、私にとっても良い刺激になり、推進力になっています」

今後は輸出も視野に入れつつ、キャビアの製造販売の事業を推し進めていく予定だ。

「夢現力と試行力。夢を持ち、現実にするためにどんなことにも挑戦していく。それが私の基本スタイル。その姿勢を貫いて生キャビアの魅力を広げていきたいと思っています」

株式会社CAVIC

  • 設立/2013年5月
  • 資本金/800万円
  • 事業内容/国産生キャビアの生産・加工・販売、海外キャビアの輸入販売およびチョウザメの養殖管理、キャビアバー「ディ・セットゥ・ドゥグレ」の運営
  • 会社ホームページ/http://www.cavic.jp

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