経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ビジネスの成否は印象が左右する

「仕事ではファッションが大事」と言えば、大事なのは中身だと反論されるかもしれない。だが、「仕事では印象(インプレッション)が大事」と言い換えれば、おそらく異論は少ないだろう。「ファッションとは、その人の内面、在り方を表すもの」と考えれば、そのプライオリティは高まるはずだ。本シリーズでは、20年間で2万人以上のファッションをコーディネートしてきた、ファッションスタイリストジャパン(FSJ)の西岡慎也氏が、ファッションとの向き合い方、具体的なテクニックなどを、ビジネスパーソンに向けて伝授する。

内面は重要、されど….

私はこれまで企業経営者やエグゼクティブ層を対象に、ビジネスシーンなどで印象を高めるファッションコーディネートを、マンツーマンのコンサルティング形式で手掛けてきました。その経験から得たさまざまな気付きやノウハウを、本連載ではお伝えしていこうと思います。

ビジネスにおいて、「印象」が大事なのは言うまでもありません。印象は英語で“impression”です。言葉を分解すると、「内側(im)」と、「押し出す(press)」、つまり人の内側が外側に押し出されたものと私は解釈しています。

あなたの内面が無意識に外側に押し出され、押し出された内面が服という外見に表れるのです。印象を大きく左右するのが、服だということをまずはご理解いただければと思います。

外見が重要なのは服に限りません。たとえば、あなたが運転する車の前を、窓にフルスモークを貼った黒塗りのベンツがノロノロ運転で走っていたら、どうするでしょうか。おそらく多くの人が追い越せないし、クラクションを鳴らすこともできないのではないでしょうか。

一方、前を走っているのが軽自動車だったら、あまり抵抗なく追い越せるはずです。このように、無意識のうちに私たちは外見で多くの物事を判断しています。

メラビアンの法則というのをご存知でしょうか。人物の第一印象は最初に会った時の3~5秒で決まり、「見た目・表情・しぐさ」などの視覚から得られる情報が55%を占めるというものです。ちなみに、「声の大きさや声質」などの聴覚情報は38%、「話す内容や言葉の意味」などの言語情報は7%に過ぎないということです。

私自身、人は外見で判断されるということを身に染みて感じてきました。故郷の茨城県土浦市から東京に出てきて間もないころ、お金がなくてシェアハウスに住んでいました。それでも経営者の会合などがあるときは、きちんとしたスーツ、ネクタイ、チーフ、時計、靴で出向きました。すると「身だしなみがしっかりされてますね」と言われ、次のアポイントがすぐに取れたこともあります。

逆に外見に自信が持てなかったせいで、失敗したこともあります。ある時、お葬式に出席したのですが、その時来ていたシャツのボタンに、たまたま少し配色があったのです。それで気後れしてしまい、式の後残ってほしいと言われたにもかかわらず、お断りしてしまいました。

人は内面が重要であるという考えに異論はありません。しかし、内面はその人に何度もお会いすれば知ることができますが、初対面では外見しか判断材料がないのも事実です。外見がしっかりしていれば、確実に最初の印象をより良くすることができます。人と出会うとき、服が信頼、信用につながるのです。

第一歩は「知る」こと

私はお客様と最初にお会いしたとき、まずはその方の「人となり」を知るために、2時間以上掛けてじっくりとコンサルティングを行います。その人の内面が押し出されたものが服だというお話をしましたが、ファッションはその人の「在り方」や「考え方」を知ることから設計する必要があるからです。

皆さんの多くは、仕事に対する準備を入念に行われることでしょう。仕事の場合、設計、構築、見直しといったプロセスがとても重要だと知っているからです。

しかし、ことファッションに関しては、多くの方々が否定感を持っています。それはなぜでしょうか。恐らく「知らない」ことに対する不安感があるからだと思われます。

例えば、スーツのジャケットの袖よりシャツの袖が長く作られている理由をご存知でしょうか。もともと欧米ではワイシャツは下着の位置づけで、ジャケットに皮脂がつくのを防ぐためなのです。

そういうことを知れば知るほど、ファッションに対する恐怖心や否定はなくなっていきます。否定をなくせば、知ることが楽しくなり、振る舞いにも自信が生まれてくるのです。

では、自信が生まれることでどういう効能があるのか。次回は、ファッションとセルフイメージの関係についてお話させていただきます。

西岡慎也のワンポイントアドバイス

西岡慎也 コーディネートは、その人の内面からの「引き算」で考えるのが基本です。たとえば、リーダーシップが強く情熱的な方には落ち着いた雰囲気の色を中心に、逆におとなしいタイプなら、積極性が前面に出るようにコーディネートすれば、全体のバランスを整えることができるでしょう。

(にしおか・しんや)1979年生まれ。茨城県土浦市出身。21歳で米輸入会社ワイルドウエストジャパンに就職し、約4千人のファンを獲得。2001年、セレクトショップ「WITH PREASURE」を独立開業。従来のアパレルの販売方法ではなく、コンサルティングを中心としたコーディネートの手法を確立する。10年にファッションスタイリストジャパンを設立し、多くの著名人、エグゼクティブの顧客を獲得し、現在に至る。

ファッションスタイリストジャパンHP

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