経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

多忙な経営者は健康習慣をどうつくれば良いのか

栗原冬子氏

 「一流経営者は健康習慣に注意を払っている」

 10年前にこのような話題を振ろうものなら「そんな時間があるなら仕事をする」とスタートアップ経営者はつぶやき、「俺の若いころはもっと働いていた」と老舗企業の経営者は言ったのではないだろうか。
 しかし、近年では海外を中心に「健康経営」を意識した経営者が目立っている。

 例えばGoogleではKPIとして「社員の血糖値」を掲げている。Amazon CEOであるジョフ・ベゾスは一日の睡眠を8時間と決めているようだ。
 とはいえ、多忙な経営者にとって、健康づくりの時間を確保するのは難しい。

 時間の限られている経営者はどのような健康習慣を身につけるべきか、(株)Bon22の栗原冬子代表取締役社長に話しを聞いた。(取材・文=野下 龍)

取材協力者―栗原冬子氏プロフィール

栗原冬子氏

(くりはら ふゆこ)、1971 年生まれ、青山学院大学卒業後、全日空国際線客室乗務員として入社。チーフパーサー資格取得後、主にファーストクラスを担当。2002 年に退社し、在職中から興味のあったアロマテラピーの道に進み、2012年(株)Bon22社設立後、公益社団法人日本アロマ環境協会理事に就任。企業、税務署、保健センター、公立小学校などで食育、健康、呼吸法などの講演も行い、ヨガ、ピラティスインストラクターとしてもイベントで香りの空間プロデューサーとしてホテル、クリニック、企業、イベントなどのオリジナルアロマを展開している。著書:アロマテラピーレシピ事典永久保存版 マイナビ出版 他。

睡眠不足解消のカギは朝の習慣にあり

—— 栗原さん、経営者は24時間仕事のことを考え、常に働いている状態と言っても過言ではありません。アロマ(香り)などを用いて、睡眠の質を改善できるのでしょうか?

栗原 アロマは睡眠の質の改善に効果的だと思います。とはいえ、まず始めに見直すべきところは生活習慣です。

—— そうですね。まずは夜、早めに寝るべきでしょうか?

栗原 夜早く寝ることも大切なことですが、最も見直すべきは朝の生活習慣です。寝起き時に太陽の陽ざしを浴びる、スムージーやおかゆなどの胃にやさしい朝食を食べる、リズムを刻む、この3点を実行することで、セロトニンが分泌されます。[1]

セロトニンとメラトニンは表裏一体の関係です。分泌されたセロトニンは、夜になるとメラトニンの分泌を促します。セロトニンが多くなるとメラトニンも多くなるため、睡眠の質が改善される仕組みとなっています。

—— リズムを刻むとは?

栗原 朝の歯磨きする際に一定の速度を意識することや、自分の歩くリズムを保つとセロトニンが分泌されやすいという結果が出ています。[2]

理想は朝の散歩です。太陽の陽ざしを浴びることと、リズムを刻むことが同時に行われるので、時間がある方は是非とも実行してほしいです。

—— 生活習慣がいかに大切か分かりました。環境を整える前にやるべき事をするということですね。

栗原 そうですね。生活習慣を正し、その後に環境を整えるべきです。

睡眠環境は主に寝具、温度、明るさ、音、香り5つから構成されていると考えております。アロマはあくまでもその中の一つとして、認識してください。全て揃えてこそ、睡眠の質が向上します。

—— では具体的にどのようなアロマ(香り)を選ぶべきでしょうか?

栗原冬子氏
アロマを並べてご説明頂きました。

栗原 眠りにはラベンダーや檜をベースとした香りがオススメです。ラベンダーや檜は眠りを促す香りとして、効果があり、男女問わず好まれやすいですね。大塚家具様からの依頼で売り場にアロマを炊き、アロマを一緒に販売したのですが、すぐに完売しました(笑)。

—— 寝具売り場に来られる方は、睡眠に課題を感じているかたなので需要はありそうですね。

多忙さを利用した健康習慣づくりで体型維持は可能

—— 今までは「睡眠」についてお話頂きましたが、続いては「食事」についてお聞かせください。経営者の方は外出する機会も多いと思うので、「体型」を気にされる方に対して、有効な方法をお話頂けますか。

栗原 太っている方は自己管理が出来ていないルーズな印象を与えがちなので、ビジネス上で不利になると考える方も多いですよね。

私は経営者の忙しさを利用する形での、ファスティングを推奨しております。ファスティングは痩身効果があり、身体のクレンジングとして、フランスではメスを入れない手術ともいわれており、体質改善になります[3]。日中に食事をしないおかげで眠くなりにくく、夜ぐっすりと眠れるようになります。

ファスティングをする経営者は今非常に増えてますね。痩せていてもやっている方が多く、健康法として定期的に行っている方も多くいらっしゃいます。

—— ファスティングは1日の中で口にするものは水のみの「断食」という認識ですが、合っていますか?

栗原 実はファスティングには色々なパターンがあります。期間が1日のみのパターンもありますが、私が推奨しているのは集中3日間(準備、復食期間を含めると7日間)です。効果が出やすく、プログラムにご参加して頂いた方は平均で3日間コースだと、2〜4kg減、1日ファスティングも毎週3ヶ月続ければ5~10kg落ちた方もいらっしゃいます。

あと、ファスティング期間中に口にするものは水のみだと非常に危険です。栄養を含んだ酵素ドリンクなどを活用し、必ず専門知識を持った方と相談しながら進めてください。私のサロンでも無料でカウンセリングをしています。

—— 3か月で5~10kgはすごい効果ですね。

栗原 3日間集中は合宿などに参加して行う方もいますが、食べる時間もないほど忙しく詰め込めば働きながらでもできます。構えて行うと長続きしないですからね。

私自身が行う際、ファスティング期間の3日間は予定を詰めていますね。食べる時間を無くし、空腹を紛らわせてます(笑)。

—— 仕事のついでに行うということですね。

栗原 ファスティング期間、運動やヨガなども実施しております。

本来、人間は飢餓にある程度耐えられる構造になっていると思います。お腹が空いてないにも関わらず、時間になったら会食などで食事をしてしまっているケースが多いのです。

経営者の方は、ファスティングをする期間は会食を入れず「必ずやり切る」という意思を持ってほしいです。年間のファスティングスケジュールを組むといいと思います。

—— 話は変わるのですが、酵素ドリンクを入手出来ない場合、代用品は何かあるでしょうか?

栗原 スムージーなどでも、代用可能です。リンゴやバナナをミキサーにかけ、具のないお味噌汁を飲んだりと腸内環境にいい発酵食品を飲むと有効なので是非とも試してみてください。

まとめ―経営者の健康改善は生産性向上にもつながる

 多忙な経営者ほど、高いストレスの中で適切な判断が求められている。寝不足や体調不良といった健康面で仕事に支障が出ないよう、常に健康に心がける必要があるのではないだろうか。

 経営者が健康を意識することで生産性が上がり、組織全体に良い影響を与えるに違いない。

(参考文献)
[1]生活環境と睡眠
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/general-education-jp/biological-rhythm-and-health-sciences/pdf/biological-rhythms-and-health-science12.pdf
[2] 踏み台昇降運動によるセロトニン神経系の賦活
https://www.hokuriku-u.ac.jp/about/campus/libraryDATA/kiyo26/gai1.pdf
[3] 酵素ドリンクを使ったファスティングによる痩身効果
https://www.shinryo-to-shinyaku.com/db/pdf/sin_0054_10_1004.pdf