今年4月、短期大学の名称変更をしたフェリシアこども短期大学(旧名・鶴川女子短期大学)は建学の精神「愛の教育」に基づく「学生ファースト」を合言葉に、コロナ禍の中でも将来の日本の乳幼児教育を担う人材を育て続けている。
「愛の教育」を最大化する念願の新校舎が完成
「サイコー!」。
2019年9月17日に隈研吾氏が設計した新校舎に響き渡った声は、旧名・鶴川女子短期大学の学生たちのもの。新校舎オリエンテーションの場で、百瀬義貴常務理事からの「みんな、この校舎どう思う?」に対する答えだった。百瀬氏はその声を聞いてこみ上げる涙をこらえていた。「学生たちが喜び、幸せに満ち溢れていたからです」。
木材が多用された新校舎からは乳幼児教育を学ぶ場にふさわしく随所に遊び心と温かさを感じ取れる。大階段ホールの脇には滑り台が備えられ、学生たちが楽しそうに滑っていた。「令和2年3月の卒業生が新校舎で学んだ期間は半年だけでしたが、卒業のご挨拶に来校くださった保護者にうれしそうに校舎の自慢をしている姿をあちこちで見かけました」。
新校舎は教職員たちにとっても自慢となった。以前に比べると、皆の表情が一様に明るく楽しそうになった。「教える先生や世話をする職員が笑顔でなければ学生は笑顔になりません。笑顔で幸せに学んでこそ、乳幼児教育の現場で子どもたちを幸せにすることができる、そう信じています」。
新校舎には建学の精神「愛の教育」を最大化するために、大きな役割の一端を担うことが期待されている。
学生ファーストの教育体制「愛の教育」を吹き込む
しかし、新校舎完成後半年もたたないうちに災厄に見舞われた。新型コロナウイルスの感染拡大だ。学生たちは新校舎への立ち入りを制限されるようになる。現在も分散登校が続いており、基本はオンライン授業を受ける。同校はコロナ禍以前から、グループウエアを活用した指導方法の導入を検討していたため、オンライン授業の導入も3月からと他大学に先行していた。「全教職員が第一に考えたのは、学生のためにできることは何でもやってみる、です」。
同短期大学では新校舎建築に合わせて、全教職員の情報共有のためにGoogleアカウントを取得していた。これを全学生にも展開することで、学生とのコミュニケーションと、学生の情報を全教職員が共有するための土台にした。教員の中にはITに明るくない者もいる。そこで授業の実施方法や動画の作成方法などを、非常勤を含めた全教員に対し研修を実施して準備を整えた。
「非常勤の先生にまでサポートを行うのは珍しいかもしれません。先生方には負荷をおかけしましたが、皆さん学生のためにと頑張ってくださいました」
全学挙げての努力の甲斐もあり、前期カリキュラムを無事に修了させる見通しもつき、夏休みを確保できるそうだ。
オンラインで授業は受けられても、新校舎で学びたいのが学生の心情だろう。学生には設定された登校日のほかに、学びの進度に応じた指定登校日とサポート日が設けられ、教員から直接指導を受けることができる。登校してきた学生たちは皆楽しそうに学び、笑顔の輪が生まれているという。早く全員が再び集える日が来るのを、学生だけでなく全教職員と新校舎が心待ちにしている。
オンライン授業は、4月18日から始まったオンラインオープンキャンパスという新しい価値も生み出した。入構を制限しなければならない中で高校生に対しては何ができるのかという想い、そこには在校生に注ぐのと同じ愛が込められている。このオープンキャンパスは、事前予約して指定時間に専用サイトを訪れることで、説明会、体験授業、キャンパスツアーなどに参加できる。
オンラインで行う成果の一つは、これまで大学を訪れることができなかった遠隔地の高校生が訪れるようになったこと。同短期大学には、近い将来日本で増えることが予想される外国人労働者の子どもたちを教育することを目的に開設された「国際こども教育専攻」がある。
「国際」×「保育」の分野を学べる大学はまれなため、潜在的な志望者数も多いことが予想される。オープンキャンパスで「愛の教育」と木材のぬくもり溢れる校舎の魅力を体感した多数の高校生が、全国から訪れるようになる日も近いだろう。
4月の短期大学名称変更時には、名称に「こども」を付することで、何の学びを得ることができるのかを明確にするとともに、従来使用していた「女子」を外すことで、ジェンダーにこだわらない指導者を育成していく、という思いを込めた。
「新校舎という素敵な学びの場は整いました。これからは、この新校舎に『愛の教育』という魂を吹き込み、これからの日本の乳幼児教育を支える人材を育成していくことで、日本の社会に貢献していきます」
法人概要 設立 1960年7月 所在地 東京都町田市 事業内容 フェリシアこども短期大学、鶴川高等学校、フェリシア幼稚園、鶴川フェリシア保育園、成瀬フェリシア保育園などを運営 https://www.meisen.ac.jp/ |
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