政治・経済

 3年間にわたる安倍自民党内閣の君臨も、経済の不調(世界不況が始まりかけているのだから、当然ながら日本も不調に陥らざるを得ない)でようやく終わりが見えて来た。そうなると気になるのが、野党第一党である民主党の動向だ。支持率、期待感でなかなか浮上できない民主党の代表が、「ロボコップ」の異名を取る岡田克也さんである。ニックネームどおり、融通の利かない堅物なのか。それを探るためにお話を伺った。(※この対談は2月後半「民主・維新合流」発表前に行われました)

米国で感じた国民と政治の距離の近さ

德川 三重生まれ、三重育ちだということですが。

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(おかだ・かつや)1953年三重県四日市市生まれ。東京大学法学部卒業後、76年通産省(現経済産業省)入省。90年自民党公認で衆議院初当選。現在9期目。93年自民党離党、新生党結党に参加。その後新進党を経て、98年民主党結党に参加。政調会長、幹事長を経て2004年民主党代表に就任。09年の民主党政権樹立にともない鳩山内閣で外務大臣に就任。菅内閣での幹事長、野田内閣での副総理・行革担当相を経て民主党下野後、14年民主党代表代行、15年9年ぶりに2度目の民主党代表に就任。16年2月民主党と維新の党の合流を発表。

岡田 中学生までですね、四日市で。子どもの頃、私の家の周りは田んぼしかありませんでした。男3人兄弟の真ん中でしたから、上と下からやられる、いじめられるという環境でした(笑)。あまり「勉強しろ」という家庭ではなかったので好き勝手にしていました。趣味は地味ですけど、植物採集でした。

德川 高校から大阪へ。

岡田 はい。父の仕事の都合で。四日市高校を目指していたんですが、父についてほかの家族より一足先に大阪へ行って、そこで高校受験となりました。

德川 大都会の大阪への移動にカルチャーショックはありましたか。

岡田 高校で学園紛争があったことが印象深いですね。高校に上がった頃に東大の安田講堂事件があって、その後大学紛争は終息していきますが、僕らの高校には大学生が入って来てオルグしていました。結局2カ月くらい高校が学園封鎖されまして、機動隊も入っていました。田舎とは全然違って、荒波に揉まれたという感じはありますね。

德川 そこから東大を目指したのは。

岡田 特に理由はないんですが、あまり成績も良くなかったので、行けると思っていたのは本人だけかも知れません(笑)。高校は京大や阪大に行く人が多くて、東大を目指す人は少なかったですね。

德川 東大から公務員試験を受けられましたが、通産省は第1志望でしたか。

岡田 そうです。ただ、他の役所の面接も受けましたね。厚生省からも内定をいただいていました。厚生省に入ってそのままいれば、長妻大臣あたりにどやされていたのではないかと(笑)。通産省を志望したのは、役所回りをした時の自由な雰囲気が好きだったからです。魅力的な先輩も多かったし、「やっぱり日本は経済だ」と思っていたので。

德川 入省の時点で政治家を志していましたか。

岡田 全くないですね。僕はアメリカへ留学をさせてもらうんですが、30歳くらいで他の人より遅かったんです。結構、忙しい仕事が多かったので、それに報いるような形で出してもらったのかな、とは思います。

 それでアメリカへ行って、視野が広がりました。もともと、通産省で仕事をやっていて面白かったのですが、ほかのことができない。例えば、社会保障に興味が出たとしても厚生省に出向でもしなければ、非常に限られたことしかできない。それから、河本敏夫さんのように、歴代大臣には立派な方もいましたが、やはり役人の掌の上に乗っかっている大臣というイメージが強くて、もう少し政治家がリーダーシップを発揮しないといけないな、と思っていました。そうした中でアメリカへ行って、当時はレーガンの時代でしたけれど、国民と政治家の距離が非常に近いと感じて、これを自分はやるべきなのかなと思って帰って来ました。

今は政治主導の悪い面が出てきている

20160322_KOU_P02

德川家広氏(政治評論家)

德川 通産省に入って、「これを学んだ」ということは。

岡田 一番印象に残っているのは、第2次石油ショックの時に石油行政を担当していた時のことですね。第1次石油ショックは大変な混乱があって皆さんの記憶に鮮明だと思いますが、今では忘れ去られた形の第2次石油ショックのほうが実は影響が大きかった。その裏には、ガソリンや灯油の供給が途切れた時のための配給切符制度を省内で議論して、法律も案としては作って、切符も刷っていたんですね。何かがあった場合、国会で法律案を通してもらってから切符を刷っていては間に合わないので、そこまで進めたんです。半年くらいは徹夜の連続でしたが、国の危機的状況の中で、政治なり行政なりがきちんと役割を果たさなくてはならないということを学びました。

德川 今の霞が関は、そこまで考えているんでしょうか。

岡田 人によると思います。それから、政治主導は私は基本的に良いと思いますが、良い面と悪い面があって、ものが言えなくなっている、最終的には政治の責任だ、ということで、霞が関が直言できなくなっているという点はあるのかもしれません。

 例えば財政でも、2020年にプライマリーバランスの黒字化は誰が見ても無理で、6・5兆円の赤字が発生している計算です。でも安倍さんが「目標は守ります」と言ったら、「無理だから歳出を削るか歳入を増やすかしなくてはならない」と財務省の人間は言わない。本当に国の将来を考えるのなら、官僚もきちんと政治に言わなくてはならないのですが、人事権も政治に握られている。まあ、われわれがそういう仕組みを作ってしまったのですが、悪い面が非常に出て来ているように感じますね。

政治改革への反対勢力が恩恵を受けている皮肉

德川 留学先はハーバード大学でした。

20160322_KOU_P03岡田 最初、夏期に1カ月強、ハーバードのケネディ行政大学院のサマースクールにいました。非常に良かったですね。全世界から行政官や政治家の卵が集まって、みんなで英語を勉強したり、遊んだり。若干広めの自宅を確保して、毎週末にはいろんな人を呼んでいました。ハーバードの1年間は非常に良い思い出で、妻からも「あの1年、良い思いをさせてもらったから、20年くらいは我慢する」と言われています(笑)。その20年がそろそろ切れかかっていて……(笑)。

德川 ハーバードから帰国されて、政治の世界へ進もうと考えられたのは。

岡田 帰国して1年くらいでそういう道を志向しだしたんですが、たまたま私の地元の四日市出身の自民党議員がいなかった。四日市は三重一区という中選挙区の中にあって、自民党の先輩は3人いました。山本幸男先生、川崎二郎さん、北川正恭さん。あとの2人は当時若手ですが、山本先生は当時80歳で、そんなに先々何回も選挙に出る方ではない。そこに私が入って行ったというわけです。それから、地元四日市の経済人の皆さんから「ぜひやってくれ」というお誘いもいただきました。そういう意味では恵まれていました。

德川 岡田さんが新人代議士になった時の自民党は大変なことになっていました。

岡田 政治改革の議論で真っ二つでした。ここが自民党の素晴らしいところですが、選挙制度を変えるかどうかという問題で、毎日議論していました。同じグループの中では、小沢一郎先生、羽田孜先生が改革推進派でした。ただ小沢先生は自民党幹事長で、距離を置いておられました。私が一番影響を受けたのは後藤田正晴先生と伊東正義先生。伊東先生が政治改革本部長で、後藤田先生が本部長代理、そこに夜な夜な若い人間が集まって、薫陶を受けたわけです。

德川 その時の岡田さんは改革推進派でしたが、今でも小選挙区制を導入して良かったとお考えですか。

岡田 良かったと思います。中選挙区のままなら政党ではなくて、自民党という派閥集合体の政治でしかなかった。それが自民党と民主党が競合するという、政党政治らしい政治になった。当時一番政治改革に反対していたのが安倍派の人たちで、小泉純一郎さんが反対の急先鋒で、伊東さんに食ってかかっていた。小泉さんが小選挙区制度の恩恵を最も受けて総理になり、今の安倍さんにいたるまで、旧森派が一番力を持ったというのは、歴史の皮肉でしょうね。

(後編に続く)

文=德川家広 写真=幸田 森

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