文化・ライフ

今回は小池百合子東京都知事をゲストにお迎えしました。小池さんは第42回経済界大賞特別賞の受賞者です。昨年8月の都知事選から1年。全力疾走を続ける小池さんは、「女性ならではの困難を感じたことがない」ときっぱり。凛として決してブレない力強さを持つ都知事の魅力が全開の対談となりました。

 

女性が活躍しない社会はもったいない

 

佐藤 先日の経済界大賞授賞式(特別賞を受賞)には、ご多忙の中、お越しいただきありがとうございました。小池都知事の日々のご活躍は同じ女性として非常に心強く感じています。都政でも女性活躍の推進を提唱されていますが、知事ご自身がその最前線に立っていらっしゃいます。

201707KOIKE_P01

こいけ・ゆりこ 1952年兵庫県芦屋市生まれ。カイロ大学卒業後、通訳、ジャーナリスト、キャスターとして活躍。92年日本新党公認で参議院初当選。93年衆議院に鞍替えし当選。新進党、保守党を経て自民党入党。環境大臣、防衛大臣、自民党総務会長等を歴任。2016年8月東京都知事に就任。

小池 都知事に就任して以来、東京大改革をかかげ、やるべきことをひとつずつ実行しています。その中のひとつにダイバーシティの実現があります。これは女性にかぎりません。男性でも女性でも、誰もがいきいきと生活でき、活躍できる都市・東京を目指そうというものです。女性活躍の推進はその一部です。人口の半分は女性です。女性が活躍しない社会は、体の半分を使いこなせていないのと一緒です。もったいないじゃないですか。

 今、日本社会には行き詰まっているところがあります。だからこそ、女性の力が加わることで打開できる。私はそう確信しています。そのための意識改革を図っていきたいと考えています。

佐藤 かつて、朝7時からの朝食会に議員時代の知事が出席されていたのを覚えています。経団連企業の偉いおじさまだらけなのに、知事は朝早くから颯爽と入ってこられた。その姿を見て、私は共感し、尊敬していました。

 今でこそ女性の社会進出は当たり前になりましたけれど、以前はそうではありませんでした。知事も女性ならではの困難に直面することも多かったのではないですか。

小池 私は、女性であることの困難さを感じたことがないんです。むしろ男性の持っていないものを持っている強みがあると思っています。ただし私自身は独り身で自由ですが、子育て中の女性は大変でしょう。家庭の仕事の多くが女性にのしかかっていて、これをこなしながら社会で活躍するには乗り越えなければならない困難が山積しています。でも私自身には全くありません。

 男だから、女だからというのは本来全く関係ないことです。会社経営なら、バランスシートを読め、社員の士気を高め、新商品を開発し利益を上げ、納税し、社会的責任を果たす。ここに男女の違いはありません。

 

東京都による起業支援と女性起業家への期待

 

佐藤 東京都は創業支援にも力を入れています。創業・起業支援の拠点である「TOKYO創業ステーション」(東京・丸の内、明治安田生命ビル内)を開設しましたが、その狙いをあらためて教えてください。

小池 リーマンショックやバブル経済の崩壊、さらにさかのぼればオイルショックなど、日本経済は過去に何度も大きな波を乗り越えてきました。そして今直面しているのが、少子高齢化と産業の大転換です。世界では新しい産業が次々と生まれています。

 ところが日本では、若い世代が少ない一方で団塊世代が70代に突入しつつあるため、創業した企業数より廃業する企業数が多くなっています。これでは社会、経済が持続可能ではありません。

 そこで、創業に関心がある人ならだれでも利用できる創業支援の拠点としてTOKYO創業ステーションを開設しました。この施設から、次代の東京を盛り上げる創業者の輩出を目指します。

佐藤 「経済界」では「金の卵発掘プロジェクト」を毎年行っています。優れたビジネスモデルを発掘し、次代を担うベンチャーに育成しようというものですが、TOKYO創業ステーションと思いは共通しているように思います。若い人が少ない中、社会が発展していくためにも、多くの人が経営者の思考で、新しいことにチャレンジしてほしいですね。

小池 今や世界最大の小売業はアマゾン、広告代理店はフェイスブックだといわれています。映画配信はYouTube、タクシー会社ならUberで、世界最大のホテルチェーンはAirbnb(エアビーアンドビー)だとも。これらの会社に共通するのは、いずれも知恵だけで世界一にまで成長したということです。モノをつくっているわけでもなく、在庫もない。そういう時代です。ですから日本人、とりわけ女性には、こういう次元の異なるビジネスの創業に挑戦していただきたいですね。日本発の世界最大の企業をつくるぐらいの意気込みを持ってほしい。

201707KOIKE_P02 女性によくあるのが、身近な問題を解決するために創業するというケースです。お菓子のお店を開いたり、お掃除支援などですね。これはこれでとても大切なことです。でもその一方で、「そんな無茶なことを」と人々がびっくりするようなことを考えてほしいですね。私はそういう人たちを応援したいです。

 私はキャスター時代、毎週、経営者にインタビューをしていました。6年半続けましたから350人にのぼります。中でも創業の醍醐味をお聞きするのは本当に楽しかった。ぜひ女性の視点を踏まえた新しいビジネスにチャレンジする人たちがたくさん出てきてほしいですね。

佐藤 最後に、女性起業家に向けてメッセージをお願いします。

小池 まずは女性だからできない理由を考えるのではなく、女性だからこそできる理由を考えていただきたい。女性だから制約があるわけではないので、できない理由にはなりませんし、女性だからといって甘えるのは最低です。これからは知恵と根性比べの時代です。男女は関係ありません。知恵を絞って新しい世界最大の企業を目指してください。くれぐれも、自分を小さく評価してはいけませんよ。

似顔絵=佐藤有美 photo=佐藤元樹

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る