経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ミシュラン店も使用する業務用スープで業界を変革 本間義広 クックピット

本間義広社長(写真右)と外園史明副社長(左)

鮮度にこだわった業務用ラーメンスープを約2千店舗に提供。デジタルマーケティングを活用しコロナ禍の苦境も乗り切ったクックピット。味の開発を担当する本間義広社長(写真右)とマーケティングを担当する外園史明副社長(左)が二人三脚で、ラーメン業界を変革する。(雑誌『経済界』2025年5月号「注目企業」特集より)

本間義広社長(写真右)と外園史明副社長(左)

業務用スープを使えば顧客も従業員も幸せに

本間社長は10年間の板前修業を経て、外資系レストラン「レッドロブスター」に転職。スーパーバイザーとして活躍していたが、東京・西麻布の博多ラーメン店「赤のれん」の味に感動し、会社を辞めて修業することに。その後、「赤のれん」の多店舗展開へ尽力し、「福のれん」として18店舗まで拡大させることに成功した。おいしいラーメンを提供するために培った製造技術を生かし、2006年にクックピットを創業。業務用スープの製造・販売に特化した事業で業績を伸ばしてきた。

「ラーメンにとってスープは命ですが、スープを仕込むために経費がかかり、長時間労働を強いられ、お店の経営を続けることが難しくなるケースも多々あります。弊社のスープを使っていただくことで、味が安定してお客さまに満足していただけるのはもちろん、人件費、光熱費、廃棄物処理などの費用をカットでき、経営者と従業員も幸せになれ、人間らしく生きていけるのです」

同社のスープの魅力は新鮮さにある。食肉処理場の敷地内にある工場で、下処理したばかりの鶏や豚を特注の常圧窯で炊き出し、瞬間凍結してお店へ届けている。

「骨から炊き上げた無添加のボーンブロスのスープは、腸内フローラを整え、健康にも貢献します。最高級の材料と鮮度を用いて、最高の天然スープを安定供給しています」

クックピットのスープを採用し、月商1千万円を超えた店やミシュランに選出された店もあるという。

デジタルマーケティングで新規顧客と成約率が急増

一方、コロナ禍で多くのラーメン店が休業し、同社も発注が減り大打撃を受けた。その時に再会し、救世主となったのが外園副社長だった。

外園副社長は、もともとウェブ制作やコンサルティング事業を手掛け、クックピットのホームページ制作も行っていた。ところが、ある原因で本間社長と仲違いし、その後コンサルティング業から離れ、漫画のプロデュースを行うことに。徹底したマーケティングによって漫画は大ヒット。時間に余裕ができた頃、本間社長と再会したという。

「豪快だった社長がコロナ禍のダメージで元気をなくしていたのがショックでした。わだかまりを忘れ、事業の立て直しに協力することにしたのです」と外園副社長は話す。

外園副社長はユーザーがどう検索してどう購入していくのかデータを分析し、欲しい味にたどり着きやすくなるホームページを1年かけて制作。その結果、新規の顧客からの問い合わせが爆増し、今ではキーワード検索でも上位を獲得。同社のホームページではクックピットの創業ストーリーをマンガで読むことができる。

「求めているスープの味はこれですよねとピンポイントで結果を出せる仕組みをつくりました。その結果、サンプルを取り寄せた方の成約率は45%という高さを誇ります」

スープの活用法は無限大 エンドユーザー戦略も計画

クックピット 社長 ほんま よしひろ 本間義広
クックピット 社長 ほんま よしひろ 本間義広

昨年からはスープだけでなく、ラーメンづくりに欠かせない全ての食材の販売も始めた。

「弊社のスープのことを一番分かっているのは弊社なので、どの麺やチャーシューが合うかと相談されることが多かったのです。それならば最適なものをこちらで用意しましょうと販売を始めました。お客さまからの問い合わせによって今のラーメンのトレンドが分かり、データが蓄積するというメリットもあります」

スープを使っているのはラーメン店だけではない。あらゆるジャンルのレストランに広がっている。

「イタリアン、フレンチから寿司店まで使っていただいています。弊社のスープを入れることでコクが出て料理がおいしくなります。もしかしたら、皆さんも既に弊社のスープを知らないうちに口にしていますよ(笑)」と本間社長は太鼓判を押す。

事業の拡大によって従業員も増えたが、ラーメン業界から転職をしてくる人は少ない。

外園副社長は「私が入社してからはマーケティングとデジタルに力を入れ、ベンチャー企業の状態なので、3年目の会社というイメージです。大企業出身でスキルを持つメンバーが弊社に可能性を感じて加わってくれています」と話す。新たな事業展開もどんどん進めているところだ。

「今年はオリジナルラーメンをご家庭に届ける予定です。そこからファンになってくださったお客さまに、うちのスープを使っているお店の情報を発信できるようになれば、お店に対して『お客さまセット』の販売手法が成立します。それが今後、強みになると考えています」

親子ほど年の離れた社長と副社長の奇跡の出会いによって、フードテック企業へと成長を遂げた同社。

「新技術を取り込みつつ、よりお客さまのお役に立てるようデータベース構築に取り組んでいきます」 

会社概要
設立 2006年8月
資本金 1,400万円
売上高 6億円
本社 東京都足立区
従業員数 21人
事業内容 スープ・ラーメン食材の開発・販売、マーケティング
http://cookpit.jp/