文化・ライフ

ゲストはASTRAX社長の山崎大地さん。世界中の人々の「宇宙へ行きたい」という願いを叶えるリアリティあふれるお話は、宇宙旅行は遠い未来の夢物語と考えていた佐藤にとって、それまでの価値観を覆すものとなりました。

世界で注目の宇宙事業で新サービスを実現

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やまざき・たいち 鎌倉市出身。東海大学工学部航空宇宙学科卒業後、1997年三菱スペースソフトウエア入社。国際宇宙ステーション「きぼう」開発・運用準備に従事。2005年独立。16年ASTRAX設立。民間宇宙ビジネスの創出に力を注ぐ。

佐藤 山崎さんは民間の宇宙飛行士として、宇宙旅行や無重力飛行体験などのサービスを提供されているそうですね。この「民間」とは何ですか? また私も興味があるのですが、宇宙や海外まで行かなくても、日本国内で無重力体験できる場所があるのでしょうか?

山崎 「民間」とは国家予算ではなく、お客さまからサービスの対価を頂き、それを元に事業活動をしているということです。航空自衛隊と民間旅客機のパイロットの違いと同じですね。無重力体験は1人60万円からの参加費で、名古屋空港からチャーター機を使ってできます。高度7500~1万メートルの自衛隊の訓練空域で、パボリックフライトという特殊な飛び方をすると、機内が20~30秒間無重力状態になる。1時間半のフライトで約10回体験でき、都度インターバルがあるので、好きなコスプレに着替えたり、プロポーズをしたり、ダンスを踊ったり、商品宣伝やプロモーションの撮影ができます。

佐藤 実際の映像を見ても、みなさん笑顔で楽しそうですね。こうしたサービスは世界的にも類がなく、海外でも注目されていると聞きました。

山崎 無重力体験サービスを行う会社はありますが、どこも搭乗者全員に同じツナギを着せて、飛んで下りてを繰り返すだけ。お客さま一人一人の要望に応えられるのはASTRAXだけなんですよ。例えば「魔法使いになって箒で空を飛びたい」という万国共通の子どものころの夢が叶えば、無重力の楽しさが何倍にもなります。

佐藤 夢がありますね。これから訪れる宇宙旅行時代のシミュレーションといえるサービスですね。

山崎 仰るとおりで、ASTRAXでは宇宙を切り口にしたさまざまなサービスを生み出しています。今は宇宙旅行の申し込みが増えているので、お客さまの訓練用シミュレーターもつくっていますよ。例えば「宇宙婚」(宇宙での結婚式)をやるなら、どんな衣装を着て、牧師やカメラマンを誰にして、参列者はどこに座るかというリハーサルが必要なので、これをパッケージにして提供します。

佐藤 日本にはそういうサービスがまだないのですね。

山崎 日本どころか世界を見渡しても存在しません。宇宙船を開発している最先端の民間企業でもやっていない。あるのは、国所属の宇宙飛行士用の国際宇宙ステーションの訓練施設くらいですね。このほか、生きている間に家族と天国の下見に行く「生前葬」のサービスなどもあり、「有人宇宙葬」も提供しています。これは私が「宇宙おくりびと」となって亡くなった人の灰を宇宙船で宇宙に持っていき、大気圏突入させて流れ星にするというもの。今後は月への散骨サービスも提供していく予定で、これなら月を拝むだけでお墓参りが済むのでとても手軽になります。

宇宙旅行は身近なものに

201801SANSAN_P02佐藤 今はまだ宇宙旅行も数千万円と高額だと思いますが、私たちが宇宙に気軽に行けるようになるのはいつごろですか?

山崎 すぐですよ(笑)。1~2年後には宇宙船ができて宇宙旅行が本格化します。今年10月にニュースになりましたが、数年後には、飛行機で10時間以上かかる上海~ニューヨーク間が39分で移動できるようになります。宇宙船は空気抵抗のない宇宙空間を飛ぶので、燃料を節約でき、飛行機の何倍も速い。料金もエコノミークラス程度、とスペースXが発表しました。発着場もアメリカには既に10カ所以上あり、今後ハワイに2カ所、イギリス、シンガポール、ドバイ、スウェーデンほかに建設予定です。

佐藤 「リニアモーターカーで東京~名古屋間が40分」とニュースになる日本とは大違いですね。この完成を待つ間にも世界がガラッと変わってしまいます。海外に行くのに、宇宙を経由するエコロジカルな移動手段が常識になるんですね!?

山崎 数十分で各国に行けるようになると、国境の概念も変わります。入国審査の手間を省くために、スマホを使った電子パスポートが主流になり、顔認証や指紋認証だけで済むようになる。宇宙でも買い物できるように、地球全体の共通通貨も必要になるので、ビットコインなどの仮想通貨がもっと世に出てくるでしょうね。

佐藤 宇宙旅行は富裕層だけのものではなく、私たちのこんなに身近にあったのですね。民間宇宙産業のこれからが楽しみです。

山崎 スマホに例えると、宇宙船やロケットや人工衛星などはあくまでもスマホのボディでしかなく、中のアプリケーションやサービスがあって、初めて産業として発展していきます。そこに寄与するのは宇宙船を造る技術者たちではなく、例えばブライダルや葬儀業界、映像やエンターテインメント業界などでサービスをする人たちです。そのために、日本は国家事業である宇宙産業をいかに早く民営化するか。これが産業活性化の糸口になると思います。

似顔絵=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=佐藤元樹

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