文化・ライフ

「仕事ではファッションが大事」と言えば、大事なのは中身だと反論されるかもしれない。だが、「仕事では印象(インプレッション)が大事」と言い換えれば、おそらく異論は少ないだろう。「ファッションとは、その人の内面、在り方を表すもの」と考えれば、そのプライオリティは高まるはずだ。ファッションスタイリストジャパン(FSJ)でスタイリストを務める吉川浩太郎氏が、ファッションとの向き合い方、具体的なテクニックなどを、ビジネスパーソンに向けて伝授する。

ビジネスシーンにおける印象操作 1.シングルとダブルの違い

 皆さんはシングルとダブルのスーツ、どちらがお好みですか?

 一般的には、シングルのほうがダブルよりフォーマル度が高いとされています。ダブルのスーツの起源は諸説ありますが、とある英国人が雨の日に結婚式に出席した際、泥はねでズボンが汚れるのを避けるためにパンツの裾をめくり、それを見た人たちが真似をして広まったという話がもっとも有名です。

 裾をめくるという行為は屋外で着ることを前提としているので、それもシングルのほうがフォーマル度が高いとされる理由の1つでしょう。そのため、礼服などにはダブルは向かないとも言われています。

 ダブルの場合、裾を二重三重に折り返すので、パンツの下側に少し重みが出ます。裾がひらひらせずに生地がピンと伸びるというのが良い点です。ピンとさせるために、折り返しの部分に重しを入れるといったこだわりの強い人もいるようです。

 ダブルのスーツやタック入りのパンツなどは、バブル期のファッションを想起させるため、世代によってはどうしてもオジサンっぽいイメージを抱く方もいらっしゃいます。

 ただ、最近は雑誌などを見ても、ダブルのスーツが増えてきている印象です。座り仕事をされていたり、脚が太くてパンツがきついといった方には、楽に履けるタック入りが好まれるケースもあります。

 着る人や着方によって印象は変わりますので、シングルとダブルのどちらが良い悪いというわけではありません。私の場合、2パンツスーツをつくるお客様には、それぞれ1本ずつ作って使い分けることをお勧めしています。

ビジネスシーンにおける印象操作 2.ジャケットの切れ目にも意味があった

 フォーマル度の話で言うと、ジャケットの背中や両サイドに入っている切れ目(ベント)も関係があります。

 昔、パーティ会場などのラウンジ(休憩室)には、くつろぐ際に椅子に座っても邪魔にならないよう、丈を短くしたラウンジスーツという服が用意されていました。それが、今われわれが来ているスーツの原型だと言われています。

 やがて馬に乗る人が増えると、またがった時に邪魔にならないよう、背中に切れ目を入れるようになりました。さらに軍人が腰にサーベルを差しやすいように、両サイドに切れ目が入るようになったということです。

 こうした変化を経てきたため、今でも切れ目なしのほうがフォーマル度が高いとされているのです。ただし、あまりそこを気に留める人もいませんから、ビジネススーツに関しては完全にお好みで選んで問題ないでしょう。

吉川浩太郎のワンポイントアドバイス

吉川さん写真ジャケットの切れ目がどこに入っていても、外から見える印象にも大きな違いはありません。横や後ろから見た時の形や、実際に着てみてどれが一番しっくりくるかといった感覚で決めれば良いと思います。

 

 

(よしかわ・こうたろう)1981年5月19日生まれ。東京都日野市出身。紳士服専門上場企業で人事採用や接客業務を経た後、イメージコンサルタントとしてのキャリアを基に依頼者独自の良さを引き出すコーディネート事業を展開。プライベートカジュアルからスーツスタイルまで幅広い知識・提案に定評がある。化粧品会社、大手建機会社、生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会(公益社団法人JAIFA)等で30~100名規模のファッション研修に携わっている。

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