マネジメント

急成長を企図するスタートアップ企業へのHR支援などを含めた包括的なサービスを行うフォースタートアップス。なぜ成長産業の企業を支援するのか、また成長産業向けの人材紹介は登録型サービスとどう違うのか。フォースタートアップスCEOの志水雄一郎氏に尋ねた。聞き手=唐島明子 写真=山内信也(『経済界』2019年10月号より転載) 

 

志水雄一郎・フォースタートアップスCEOプロフィール

志水雄一郎・フォースタートアップスCEO1

(しみず・ゆういちろう)インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。DODA立ち上げなどを経て、2016年にネットジンザイバンク(現フォースタートアップス)を創業した。19年一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会ベンチャーエコシステム委員会委員に就任。

フォースタートアップスの事業が目指すものとは

 

優秀であれば起業するべき

―― フォースタートアップスの事業内容を教えてください。

志水 成長産業には革新的な事業やサービスが次々と生まれています。私たちはその成長産業において、「成長産業支援事業」という国内唯一の単一セグメントを標榜し、「世界で勝負できる産業、企業、サービス、人を創出し、日本の成長を支えていく」ことにフォーカスして事業展開をしています。

 優秀な人材が国内有力スタートアップへ転職するときの支援を行うほか、スタートアップのHRパートナーとして組織におけるヒューマンキャピタル(人的資本)構築を継続的にサポートしたり、大学の研究者などCTOタイプの方をCEOタイプの方とお引き合わせをして、共同パートナーの形で事業化するような起業支援を行っています。

 最近新設したアクセラレーション本部では、スタートアップの組織づくり・ブランド構築・PR戦略などの支援を行い、急成長している組織に起こりうる課題解決をサポートすることで、早期成長を促進する事業も展開しています。

―― なぜ成長産業なのですか。

志水 スタートアップの起業家、とくに起業してイグジットまでできる起業家は、世界で一番のブライト(輝かしい)キャリアです。優秀であれば誰かに雇われるよりも、自分で起業すべきです。かつてのトヨタ、パナソニック、ホンダ、味の素などのように、国家の競争力につながる企業を次々と生み出していってほしいです。

スタートアップ支援で国家の競争力向上に寄与する

―― 国家の競争力とはスケールが大きいですね。

志水 いま米国でのスタートアップ投資は年間10兆円を超えてきており、中国も総額で10兆円に近づいています。それに対して日本は資金調達のマーケットで4000億円程度です。

 世界の時価総額ランキングを見ると、上位にはGAFA、アリババ、テンセントが並んでいます。ここ10~15年で投資されたスタートアップに人が集まり、企業として伸びています。スタートアップが成長してIPOし、それがさらに大きくなって国家の競争力につながっています。

 日本は30数年前と比べると、経済シェアは18%から6%に下がり、平均年収も昔は460万円ほどだったのが、400万円まで下がった時もありました。次世代を生きる人々のためにも、成長する産業に人材と資金を流していき、日本が世界で勝負して勝てるように国家の競争力を向上させていく必要があります。

志水雄一郎・フォースタートアップCEO2

「成長産業に人材と資金を流していく」と語る志水CEO

スタートアップ向け人材の集め方

―― スタートアップ向けの人材集めはどのように行っているのでしょうか。

志水 人材登録型のマス戦略は、成長産業の領域では上手くいきませんので、自分たちからアプローチしています。登録型ではマーケティングをかけて大量に広告を出稿して人材を集めることをします。しかし、マーケティングをしてマス戦略を行うと、人口動態の真ん中に属する人々が集まってきます。日本の人口動態の真ん中は、年収420~430万円で平均年齢44歳。この層は成長産業セクターには残念ながらフィットしません。

 成長産業セクターのマーケットは、年齢の平均は33~34歳ですので10歳も違いますし、平均年収は530万円くらいです。一概に年齢や金額で語ることはできませんが、より優秀なメンバーでなければなりません。

 また、営業はそれほど必要ではなく、エンジニアが求められています。そのような人たちは、やはりマス広告に共感してこのセクターに参画して来ることはないので、私たちが会いたい人にこちらから会いに行って見つける仕組みにしています。

―― 会いに行く人は、どう探しているのでしょうか。

志水 優秀な方は、実は社会にたくさんいます。

 現在では、外部のデータベースがありますので、そこに転職したいと登録していたり、SNSやメディアで情報発信されている方も多いので、大体の人の動きは分かりますよね。また私たちのメンバーは、ほとんどが成長産業セクター出身ですから、知り合いが多くいますし、カンファレンスやピッチコンテストにも参加者・登壇者・企画者としてよく参加していますので、様々な場所でネットワークを広げています。

 

フォースタートアップスの志と今後の展望

 

個人の経験・能力が活きる適切なポジションを提案

―― マッチングの方法は、登録型の場合とは違いますか。

志水 登録型の人材ビジネスでは、必ず相手の希望を聞きます。「どのような仕事をご所望ですか」と。コーチングでいうところの傾聴スキルですね。傾聴はビジネスではとても大事で、傾聴したうえで提案したものは納得度が高く、受注率が上がります。そのため、登録型では傾聴して、その希望にマッチする転職先を紹介します。

 しかし、それでは個人の過去の経験にもとづいたキャリア観に縛られてしまい、その人の価値を最大限に活かすことはできません。また安定を求める方も非常に多いのですが、そもそも終身雇用は難しい時代になってきました。日本、そして社会の構成員の一人として、その経験・能力はどこで一番拡大するかという観点が重要です。私たちはそのような視点から、適切なポジションに気づいてもらえるような提案をしています。

―― 国家の成長につながると考える働き方を教えてください。

志水 2つあります。1つめは、トヨタやソニー、パナソニックのような会社、あるいはそれよりも大きな会社を1代で作り上げることです。しかしそれは全ての人ができるわけではありませんので、2つめとして、自分が働いている会社の企業価値を10倍にするという働き方もあると思います。

志水雄一郎・フォースタートアップス3

「社会の構成員の一人として、経験と能力を拡大させる観点が重要」と説く志水CEO

小さな課題解決より世界で勝ち続けるまで併走する

―― フォースタートアップス自身も、今後新たなチャレンジをしていきますか。

志水 いま取り揃えている全てのサービスを拡張していきたいと考えています。例えば起業支援では、これまでに4社の起業に携わりました。具体的には、行政手続きを効率化するための各種ウェブサービスを提供するグラファー、サービスECプラットフォーム「あなたのマイスター」を運営するユアマイスター、ハイエンド物件を紹介するTERASS(テラス)、そして東北大発のスタートアップです。これを今後は100社レベルで起業していただけるようにしていきたいです。

 また、より大きな枠組みとしてVCに対する成長支援・アドバイザリー業務も始まっています。

 私たちの仕事は、世界で勝負する起業家・投資家を勝たせ、国を進化させることです。売上のために、目の前にある小さな課題を解決するような仕事をするのではなく、志を共にする起業家・投資家が世界で勝ち続けるまで伴走すると決めています。

 日本で最高の人的支援をして、また場合によっては出資を行い、「人生を共に歩もう」という気持ちで伴走し、共に進化し続けたいと考えています。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

社員17人で41億円を売り上げた社長が語る「中国で越境ECを成功させる秘訣」―栖原徹(ピルボックスジャパン社長)

今や米国と並び、世界最大級の消費市場となった中国。その中国で爆発的なヒットを飛ばしているのが健康食品・サプリメントなどの越境ECで展開するピルボックスジャパンだ。同社を率いる栖原徹社長に、中国市場で成功するための秘訣を聞いた。(取材・文=吉田浩) 栖原徹・ピルボックスジャパン社長プロフィール…

栖原徹・ピルボックスジャパン社長

意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

 企業経営者にとって「理念」や「志」が大事とはよく言われるものの、今一つピンと来ない向きも多いのではないだろうか。成功した経営者がいくら精神面の重要性を説いても、日々の現実と格闘している経営者にとっては、ただの綺麗ごとに聞こえてしまうかもしれない。 それでも、ビジネスを成功させるために最も大切なのは「志」だと…

立志財団

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

アスリートのセカンドキャリア問題に真正面から取り組む―中田仁之(一般社団法人S.E.A代表理事)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年3月号
[特集] 令和女史のリーダー哲学
  • ・元谷芙美子(アパホテル社長)
  • ・石黒不二代(ネットイヤーグループ社長)
  • ・小巻亜矢(サンリオエンターテイメント社長)
  • ・石渡美奈(ホッピービバレッジ社長)
  • ・戸田泰子(理化電子社長)
  • ・吉本新喜劇で初の女性座長は「イキらず、驕らず、高ぶらず」の支えるリーダー
  • ・敏腕ヘッドハンターが語る リーダーに求められる力は使命感に裏付けられた勇気
  • ・本と映画に学ぶ女史たちの生き様
[Special Interview]

 橋本聖子(女性活躍・東京五輪・男女共同参画担当大臣)

 女性が輝く新時代へ 政治家もOne Team

[NEWS REPORT]

◆CESでコンセプトカーを発表 ソニーが自動車メーカーになる日

◆アマゾンと提携したライフ 新規顧客獲得は成功するのか

◆ゴーン被告逃亡の影響は? 内田誠・日産新社長の前途

◆血液によるがん診断で日本の医療費は高騰する

[特集2]

 スタートアップ!関西

 日本の起業家たちが関西に注目する理由

ページ上部へ戻る