組み込みソフトウェア(OS)の開発・販売が主力業務のイーソル。次世代車向け先進技術を医療機器や産業機器など幅広い分野へ応用。プリンター、デジタルカメラ、ゲーム機、自動運転システム、ロボット、人工衛星、医療機器など顧客は幅広い。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載)

 

長谷川勝敏・イーソル社長プロフィール

イーソル・長谷川社長

はせがわ・かつとし 1962年埼玉県生まれ。82年エルグ(現イーソル)入社。ソフトウェア事業部長、取締役、常務取締役ソリューションエンジニアリング事業部長、専務取締役などを経て、2013年3月現職に就任。

 

イーソルの最大の強みは技術力

 

 イーソルは40年以上組み込みソフトウェア開発に携わり、プリンター、デジタルカメラ、ゲーム機などのコンシューマー機器、自動運転システム、ロボット、人工衛星、医療機器など非常に高度で安全性が強く求められる分野の機器で使用され、国内外のさまざまな機器の革新を支えてきた。

 2018年10月には東証マザーズに上場。同年の売上高は前年比16%増の87億5200万円で、5年連続右肩上がりとなっている。また、同年3月には海外拠点として設立したeSOL Europe S.A.S.(イーソルヨーロッパ)を中核に欧州、北米でのビジネス拡大に加え、今後は中国を含め広くアジア市場を見据えている。

 「会社設立は1975年で、当初は電話交換機や原子力設備の制御機械など、ハードウェアを制御するソフトウェアを中心にファームウェアを開発していました。その後、自動車や産業機器からデジカメや個人向けのプリンターなど、あらゆるところにソフトウェアが組み込まれるようになり、組み込みソフトウェアという呼び方に変わりました。当社は独自のOSを84年から作り、メーカーに販売しています」(長谷川氏)

 イーソルはB to Bなので知名度は低いが、実は身近な製品を含め幅広い分野で製品が使用されている。

 「当社の最大の強みは技術力。国際的な認証機関から日本企業では唯一、機能安全規格のプロダクト認証とプロセス認証の両方で最高レベルの認証を取得しています。このため人命に関わる自動車や医療機器など高い信頼性や堅牢性が求められる分野の組み込みソフトを提供することが可能となっています」

イーソル製品

自動運転、カーナビなど自動車関連から、プリンター、デジカメ、家電などのコンシューマー関連まで、身近にあるイーソルの技術の数々

 

プラットフォーマーとして高い競争力を維持

 

 組み込みソフトの業界の構造として、大多数のソフトウェア会社が提供するサービスの領域はアプリケーションが主で、ここは付加価値が低いので競合企業も多い。

 しかし、イーソルは独自のOSを持ち、プラットフォームを作成できる世界でもごくわずかしかない領域に位置する。このため参入障壁が高く、競合企業は少ないため、事業としての付加価値が高い。

 収益性の高い組み込みソフト製品と、安定性の高いエンジニアリングサービスで、バランスの取れた収益構造を構築している。

 現在、売り上げの90%は組み込みソフト事業、残りはセンシングソリューション事業となっている。センシングソリューション事業は、ルートセールスマンが納品伝票を出力する車載プリンターやハンディーターミナルPOSシステムなどから始まった。

 まだ売り上げの10%程度だが、耐低温・耐振動・防塵・防水などの強みを生かし、これに各種のセンサーを組み合わせることで、農場や防災、水田の監視抑制など、ICT化が遅れている業界に対し、効率化、省力化を実現するシステムを提供し、事業化に挑戦している。

 

オートザーで得た知見が大きなアドバンテージに

 

 売り上げの大半を占める組み込みソフト事業の中で、特に最近伸びているのが、自動車分野。自動運転を始めとした「インテリジェント・システム」のプラットフォームを提供しており、その中核をなす製品が、同社の独自技術で開発されたリアルタイムOS「eMCOS(エムコス)」だ。

 eMCOSは、自動車向け機能安全規格ISO26262の最高レベルの安全度水準ASIL D準拠のプロダクト認証およびその開発のプロセス認証を取得している。

 さらにシングルコアからマルチ・メニーコアなど幅広いCPUに適応できることが特徴。自動運転車のように高いリアルタイム性と安全性、高性能で低消費電力が求められるような、高度でインテリジェントな組み込み機器の利用に最適なリアルタイムOSになっている。同様の高い信頼性が求められる医療機器、ロボット、航空宇宙分野などにおいてもeMCOSの優位性は非常に高いという。

 「ここ数年10%成長で、今後数年は持続すると見ています。しかし、人材の確保ができるかどうかが足かせになるかもしれません。この面では、16年に、AUTOSAR(オートザー)の開発・販売を目的に、デンソーと日本電気通信システムとの合弁でオーバスという会社を作ったのが知名度アップに繋がり、採用の面で好影響となって表れています」

 オートザーとは、複雑化・高度化する自動車用ソフトウェア開発を効率化することを目的とする自動車業界のグローバル開発パートナーシップ。03年に欧州の大手自動車メーカーなどが中心となって発足した。

 欧州・日本・北米・中国の自動車メーカーが、このプラットフォームを採用する方向という。イーソルは16年からプレミアムパートナーとして、専門技術や知見を活かしてオートザーの仕様策定に貢献している。プレミアムパートナーはイーソル以外の日本企業は大手自動車メーカーなど数社のみで、ここで得られた知見は大きなアドバンテージになっている。

イーソルの自動車分野向け

近年伸びている自動車分野

先進技術を幅広い分野に応用

 

 フランスで設立したイーソルヨーロッパでは、同社製品を欧州や北米など海外の幅広い地域へ販売していると共に、欧州の優秀なエンジニアを採用することにも寄与している。

 「当社では社員の満足度向上を経営の最重要課題と位置付け、12年から働き方改革を行ってきました。その結果、働きがいや働きやすさ、長期就業志向などが向上し、一般財団法人日本次世代企業普及機構が次世代に残すべき企業を表彰するホワイト企業のアワードを16年から3年連続で受賞しています。また、社員の退職率も4%台の前半で、これは他のソフトウェア会社と比べても非常に少ない。今年の新卒の採用は23人でしたが、全体の従業員数が400人ほどなので、そこそこの人数を確保できたかなと思っています」

 組み込みソフト業界は30年には1兆9900億円規模に拡大が見込まれている。次世代車向け先進技術を医療機器や産業機器など幅広い分野に応用することで、さらなる飛躍を目指している。

 

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