高齢者専門宅配弁当チェーン「宅配クック123(ワン・ツゥ・スリー)」を全国で展開しているシニアライフクリエイト。創業者の高橋洋代表取締役が会社の設立当初から構想を温めていた高齢者向けコミュニティーサロン事業がついに始動した。離島や限界集落を含めた全国各地への展開を進めながら、高齢者が心豊かに暮らせるプラットフォームを構築する。
引きこもりがちな高齢者に触れ合いの場を提供
シニアライフクリエイトは高齢者専門宅配弁当チェーン「宅配クック123(ワン・ツゥ・スリー)」を全国で展開している。おいしさと栄養バランスを重視した弁当をおかずのみが540円、ご飯付きが594円(いずれも税込)とリーズナブルな価格で提供。顧客にとっての隣人のような存在を意識しながら、単なる弁当の配達にとどまらない高齢者へのきめ細かな接遇を心掛けている。
その甲斐あって業績を右肩上がりで伸ばしており、前期売上高は101億900万円と初めて100億円を突破した。店舗網は直営8店、フランチャイズ(FC)339店の計347店にまで広がっている。介護施設向けに主菜や副菜、デザートといった食材の卸を手掛けるサービス「特助くん」も好調で、「食」の提供を通じて高齢者市場を着々と開拓してきた。
そんな高橋洋社長が創業間もない2000年ごろから温め続けていた構想が、高齢者向けコミュニティーサロン「昭和浪漫倶楽部」の開設だ。高橋代表は「昨今、自宅に引きこもりがちなお年寄りが少なくありません。そういった方々に食だけではなく触れ合いの場を提供することで、健康寿命を延ばすお手伝いをしたいと考えています」と語る。
約20年の年月を経て、思いを実現するときが訪れた。19年11月に兵庫県豊岡市と愛知県知立市にサロンを開設。豊岡市のサロンは「宅配クック123」の店舗との併設型で、知立市では「宅配クック123」の店をサロンに転業している。共に宅配クック123加盟店オーナーが協力を申し出ており、「高齢者の生きがいづくりに貢献するという当社の企業理念に共鳴していただいた証だと思います」と喜びを噛み締める。
サロンには同社の弁当を食べながら高齢者同士で懇親を深めることができるようにイートインスペースを設けた。将来的には5歳刻みで学校のクラスのようなグループ分けを行いつつ、習字や生け花などの講師だった高齢者の力を借りながら各種サークル活動を展開したい考えだ。
「クラスやサークルのような強固なつながりが生まれれば、サロンに訪れなくなったお年寄りがいてもお互いに安否確認を取り合えるようになります。地域ごとにつながりの輪を広げていきたいですね」
宅配弁当の品質向上をサロン展開の推進力に
サロン事業を加速するべく、同社は年内をメドに限界集落や島嶼(とうしょ)部において直営店の出店を計画している。多くの島嶼部は独居高齢者が少なくなく、本島で入院した高齢者がせっかく退院して離島に戻っても、食生活を含めて自身の健康管理が不十分なケースが増えているという。
「サロンを足場に介護施設向けの食材卸を行いながら、『宅配クック123』を推進する原資に充てる見込みです。本部が旗振り役となって、離島や限界集落でも十分ビジネスができると証明していきます」
初年度におけるサロンの出店目標数は直営、FCを合わせて計30カ所。サロンを訪問するケアマネジャーと民生委員からの見込み客の紹介や、利用者のサービス申し込みを通じて収益化を図る。
サロンの全国展開に当たって高橋代表の自信の根拠となるのは、本業である宅配弁当のクオリティーだ。高齢者が不足しがちなタンパク質を十分摂取できるように、昨年メニューを改良。「弁当の形をした食事の提供」を追求し、毎日でも食べ飽きない、家族の手料理感覚を味わえる商品づくりに注力した。結果、昨年10月度の販売実績は過去最高の約279万食を達成、以後も前年同月比10%増のペースで伸長している。
「社会貢献の要素が強い事業ですが、短期的な利益を度外視しても本当に求められるお弁当を提供し続けていれば収益は付いてくると信じています。青臭い考えかもしれませんが、覚悟を持って全国の地域に溶け込む努力を続けます。買い物弱者の高齢者に宅配サービスを行っている地場のお店を紹介し、町おこしに貢献するのもその一案です。そのプロセスを通じて、私たちの思いや事業に賛同してくださるFC店を開拓していきます」
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会社概要
設立 1999年12月
売上高 101億900万円(2019年2月期)
所在地 東京都港区
従業員数 96人(2019年2月末時点)
事業内容 高齢者専門宅配弁当サービス、高齢者施設向け食材卸、
高齢者向けコミュニティーサロンの運営
http://slc-123.co.jp/
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