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分譲団地の老朽化で建て替え促進も住民の合意形成は困難――国土交通省

分譲団地の老朽化が進むも建て替えには高いハードル

 国土交通省が分譲団地の建て替え促進に向けた施策の検討を進めている。

 分譲団地は全国に約5千カ所あるとされるが、建物や配管などの傷みが目立ってくる築45年超の団地については、2025年に現在の5倍以上に増加するとの試算を15年11月にまとめたほか、有識者会議で近隣商店への影響などについても示唆しており、年度内をめどに方向性をまとめる。

 国交省の試算では、築45年超となる団地は現在291カ所あるが、25年に1551カ所、35年に2769カ所、30年後の45年には4093カ所と、現在の約14倍に増える見通しだ。

 試算は建て替えが全く進まないと仮定した場合だが、13年末現在の住宅団地数4970カ所と比較し、建て替え工事が完了している物件が15年4月段階で114カ所にとどまる現状を踏まえると、あながち荒唐無稽とは言えない数字となっている。

 建て替えが進まない背景としては、住民合意について定めた区分所有法のハードルが指摘されている。

 同法では全棟建て替えに所有者の5分の4、さらに団地は棟ごとに3分の2の合意が必要と規定されるが、入居者の経済状況や家庭環境はさまざまで、合意形成は容易ではない。

分譲団地が老朽化する弊害とは?

 分譲団地が老朽化する弊害は少なくない。

 分譲マンション全体の空き家の割合は平均約6%だが、築年数が増えれば空き家率が高くなり、1970年以前に建てられた物件では約11%まで高まる。

 空き家が増えれば周辺地域の防災・防犯機能が低下し、衛生面の悪化も懸念される。

 また調査では、分譲団地周辺の近隣商店数は、おおむね団地が築20年を経過した頃から減少傾向にある。国交省は商店数の減少を「あくまで参考」として因果関係について明言を避けたが、入居者の減少は地域経済への悪影響にもつながるとみられる。

 国交省は今後、有識者会議で住民合意をしやすくする仕組み作りのほか、入居者に対する費用補助などを含めた制度設計について検討していく方針だ。

 
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