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計算方法の見直しでGDPを押し上げも海外経済下ぶれ懸念――内閣府

 アベノミクス「新三本の矢」の1つとして、2020年ごろの「名目国内総生産(GDP)600兆円」達成を目指している安倍晋三政権。現在の約500兆円から約2割増やす野心的な目標だが、それを後押しする“イベント”が今年ある。内閣府がGDPの計算方法を今年7〜9月期から見直し、GDPが最低15兆〜20兆円押し上げられる見通しとなっているのだ。

 この見直しは、国際連合が09年に計算基準「国民経済計算(SNA)」を改定したことに伴うもの。GDPは国内で生み出されるモノやサービスの付加価値の合計で、国の経済規模を示す。改定では、これまで「費用」として付加価値から除かれていた企業の研究開発費が、新たに「資産」に追加される。

 日本は国内での研究開発が盛んなため、設備投資参入による押し上げ効果だけでも3%強、金額ベースで15兆〜20兆円程度に上るとみられるという。

 このほかにも、規模は小さいものの、防衛装備費や不動産の仲介手数料、特許使用料などが付加価値に加えられる。海外の主要国では、既に新しい計算方法の導入が進んでおり、内閣府によると、米国で3.0〜3.6%、フランスで2.4%、英国で1.6〜2.5%の押し上げ効果があった。

 この押し上げ効果によって、安倍政権が目指すGDP600兆円の達成は1年ほど前倒しされる方向だ。ただ、それでも20年度に600兆円を達成するには、年間で名目3%の成長率が必要となる。15年7〜9月期の名目成長率が年率1.6%にとどまったことを考えれば、「3%」がいかに大きな数字か分かる。

 折しも、年明け以降は上海株の暴落が中国経済への不安を高め、イランとサウジアラビアの対立といった中東情勢の悪化など、海外経済の下ぶれリスクが増している。日本企業の設備投資や賃上げに悪影響を与え、経済成長の足を引っ張るのではとも懸念されており、政府も、GDPの「かさ上げ」を手放しで喜べないのが実情だ。

 
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