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「乙武問題」にみる政治とメディアの在り方

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大組織の責任に触れず個人攻撃に終始

 『週刊新潮』が3月24日発売の3月31日号で報じた、作家・乙武洋匡クンの不倫スキャンダルに端を発した“乙武バッシング”が喧しい。

 紙幅の関係もあり、もはや周知の事実なので、改めて乙武クンのこれまでの経歴やスキャンダルの内容の詳細は書かない。要は、生まれつき障害を持った人間が、テレビでも持て囃されるようになり、参院選への出馬が真実味を帯びてきたところで思い切りハシゴを外され、袋叩きに遭っている格好だ。

 まず、誤解されないために書くと、スクープを報じた『週刊新潮』に罪はない。むしろ、今年、数々のスクープで注目を集めてきた『週刊文春』とともに、その文春に一矢を報いた格好の新潮は、称賛に値する。出版不況、“週刊誌冬の時代”と呼ばれる昨今で、奮闘している姿は眩いばかりだ。

 確かに、不倫スキャンダルは、乙武クンの身から出たサビそのものだ。しかし、だからといって、これまでの積み上げてきた彼の実績までもが、崩されるべきものではないし、人格否定までされるものでは到底ない。

 筆者は、自責の念を禁じ得ない。というのも、昨秋に彼の次期参院選出馬の話は聞いていた。各党の接触も伝聞で知っていた。加えて、これまでのヤンチャぶりを懸念する声も聞いていた。

 その時、筆者は何もしてこなかった。報道に携わる者として、報道しないのは汚いとの声もあろうかと思う。しかし、有名人ではあるが、あくまでも私人。報じないこともアリだと思っていた。それより、直接本人に会って、諫める努力をしなかったことが、今でも悔やまれる。年末、旅行に行ったことまでは知らず、もし、話していれば、このような事態は避けられたのではないかと思うと、悔しさもひとしおなのだ。

 それとともに、乙武クンの女性好きは、友人など身近な関係者の間で有名だったという。だとしたらなぜ、教師になった時、都の教育委員に就任した時、苦言を呈する者がいなかったのだろう。将来、政治家の道を歩みたいと夢を語っていたら、「この辺でヤンチャはやめろ」と、誰も言わなかったのだろうか。とても寂しく、悲しく思う。

 新潮の報道以降、他社の後追い報道は目を覆いたくなるばかりだ。週刊誌にワイドショー、スポーツ紙……。池に落ちた人間を棒で突いて笑っているかのような印象さえ受ける。一度大衆に受けたネタは、とことんしゃぶり尽くす。犯罪を行ったわけでもない私人であるにもかかわらず、過剰なメディアスクラムが展開されているのだ。それを受けたネットの書き込みは、さらに酷い。増幅した不協和音は、憎悪の塊となって読む者の心を蝕むようにさえ感じる。

 メディアについて言えば、劣化しているとしかいいようがない。本来、公認しようとした自民党の調査能力の欠如や、知っていたとしたらケアもしなかったお粗末さこそ報じるべきだろう。余談だが、ショーンK問題についても同様のことを感じている。彼個人のお粗末さもあろうが、起用したフジテレビ、テレビ朝日の“任命責任”を追及するのが筋のはずだ。ところが、どの問題も弱まった個人の攻撃に終始し、大きな組織の責任には目を瞑っている。

厳しくも寛容であるのが成熟社会の在り方

 ここ数年、筆者は日本社会の妬み社会化、僻み社会化が著しいと感じている。頑張った個人がつまずくと、皆でこてんぱんに叩いて鬱憤を晴らすようなイメージだ。だからといって、会社や政治といった大きな壁、権力には逆らわない。じっと息を潜めて自分に類が及ばないことに腐心している。国民に夢を与えられない政治の責任は大きいだろう。

イラスト/のり

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 それとともに実は、メディアにも大きな責任があると感じている。ブラック企業とレッテルを貼れば、みんなで叩く。しかし、大きなスポンサーであれば、ちょっとしたタレコミがあっても、証拠不十分で取材もろくにせず記事にしない。政権与党には、顔色を窺いながら書く始末だ。そんなメディアから情報を受け取っている国民となれば、強い者にまかれ、弱い者を叩く感覚に陥っていったとしても不思議ではない。今のメディアでは、国民にとって不幸でしかないといっても過言ではない。

 話を乙武クンに戻して言えば、彼があらためて政治を志すと宣言した場合、厳しくも温かい目で見守ってほしいと願う。先進国の中で、多様性に関して遅れが著しいこの国で、彼の視点は欠かせないからだ。一度つまずいたからといってセカンドチャンスを与えない国には、希望は見出せない。厳しくも、寛容であれ。これこそが、成熟した社会の在り方だと思っている。

 
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