自民、公明両党が消費税率引き上げ延期に伴う関連法の改正方針を了承した。法案は9月招集の臨時国会に提出され、成立する見込みだ。早々と「敗戦処理」を済ませた形の財務省だが、既に視線の先には、今年の税制改正の“本丸”である所得税改革が見えている。
6月に安倍晋三首相が消費税率引き上げの2年半延期を表明し、政府・与党は引き上げを想定して整備していた関連法の改正の検討を進めていた。
住宅販売の急減を想定し、政府は2019年6月まで住宅ローン減税を継続する予定だったが、増税延期が決まったため、改正方針で2年半延長。さらに、生活必需品の税率を据え置く軽減税率と併せて導入予定だったインボイス(税額票)の採用も当初の21年4月から2年半延長する。「自動車取得税の廃止・新税の導入」や、「住宅購入資金の贈与税の非課税措置」なども軒並み延期することにした。
改正方針に自民党や公明党から異論が出ることはほとんどなく、財務省が「絵を描いたとおり」の方向ですべて決着した。
昨年末の軽減税率導入騒動では、財務省は自民党税調も巻き込んで自らの低所得者対策に持っていこうとしたが、最終的に公明党と官邸の返り討ちに遭い、軽減税率の導入をごり押しされた。その反省もあって、財務省は、裏方に徹して政治主導での決定を演出しようとしているかにみえる。
念頭には、佐藤慎一次官の悲願でもある所得税改革もある。共働き世帯の増加や格差の拡大など、現在の社会情勢を踏まえた体系に変更する方針だが、軽減税率のように公明党や官邸はこだわりがないだけに、財務省のシナリオ通りに進めやすい。
不安要素は首相が解散・総選挙に踏み切ることだろう。配偶者控除の廃止などが選挙の争点になれば先送りされかねない。いかに実現に持っていくか、次官以下、策を練っている。
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